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第17話 新ボス誕生

百を超える魔法の爆発を受けたボスは講堂の壁を突き破り、そのまま外まで吹き飛ばされていた。



「お疲れさま、レイブン」


「おう、セシルもな」


「あ、あの……!


ありがとうございました……!」


「礼には及ばないぜ。


たまたま……通りがかっただけからな」


「ふふ、そうだね」


「……なんだよ、笑うなよ」


「それで……このあとなんですけど……どうするつもりなんですか……?」


「俺はダメ押しで少し後片付けをしていく。


ところでお前、メロウの妹なんだよな?」


「あ……はい。


リリーと言います」



優しげな目元と触れれば折れてしまいそうな儚げな雰囲気がメロウにそっくりだ。


まあ、メロウは儚いというより行き過ぎて死霊みたいになってたけど。



「すぐ戻りたいところ悪いけど、ちょっとだけ付き合ってくれ。


そんなに時間はとらせないから」


「はい……でも、何をするつもりなんですか?」


「それは見てのお楽しみだ」



一年と一緒に床に転がっていたゲイリーを叩き起こし、他のニ、三年を呼んでくるよう命じた。


もちろんゲイリーが言っただけで簡単に集まるとは思わなかったので、こう付け足すのを忘れなかった。



「ボスの命令だと言え」



こういう時に絶対服従の文化があると話が早くて助かる。


30分と立たずに多くの上級生が集合した。


集合するまでの間に一年も全員が目を覚まし、さっきまで起こっていたことが夢だったのかを周りと確認し合っていた。



「集まったみたいだな」



後から入ってくる者がほぼいなくなったのを見届けて、俺は講堂の前に立った。


隣にはセシルとリリーに立ってもらっている。


「何だあいつ?」「ボスの呼び出しじゃなかったのか?」「ところであの壁の穴何?」四寮生たちは訝しんでいる。



「俺は第五学生寮一年のレイブン。


今日はお前たちに言っておくことがあって集まってもらった」



「五寮?なんでそんなやつが」「しかも一年かよ」「お前って、舐めてんの?」まあ、想定通りのリアクションだ。


その反応を見て、袖に隠していたものを引きずり出す。


気絶したこいつらのボスだ。


「あれは、ボス!?」「気絶してるのか!?」「何だ、どういうことだ!?」



「お前たちのボスは俺が倒した。


だからお前たち四寮生は、これからは俺に従ってもらう。


お前たちの大好きな絶対服従ってやつだな。


気に食わないやつは出てこい。


俺を倒せば、そいつが新しいボスだ」


「はいそうですかと行くわきゃねぇだろうが!


ぶっ飛ばす!」



四寮生の一人、そこそこ大柄なチンピラが飛び出し、俺に飛びかかってきた。



「てめえごとき雑魚一人、軽くひねぶぎゅっ!?」



が、届く前に魔力で縛り、床に叩きつけた。


わかりやすく、床にめり込む程度の強さで。


チンピラは気絶し、そのまま動かなくなった。



「他にはいるか?


何人がかりでもいい、ここにいる全員でもいい。


文句がある奴はかかってこい。


そうなりたいならな」



床にめり込んだチンピラを見て、もはや異論は出なかった。



「よし、じゃあボスが負けたことだし、俺が新しい代表学生を決めさせてもらう。


リリー、明日からお前が代表だ」


「は、え……ええぇぇ!?」



リリーから一番の大きな声が出た。



「寮の内情もよく知ってるだろうし、五寮の代表はメロウだから連携もしやすいだろ。


リリー、何か言ってくれ」


「え、あ、あの、その……せ、精一杯頑張ります……!


よろしく……お願いします……!」



まばらな拍手が講堂に響いた。



「絶対服従、忘れるなよ?


じゃあ解散」



ノロノロと集団は解散した。


上級生、特に三年はしばらく言うことを聞かないだろうが特に心配はしていない。


リリーならうまくやっていけるだろう。



「じゃあ、帰ろうぜ。


メロウが心配してるからな」


「あ……はい!」



第五学生寮に戻ると、案の定メロウが心配そうに寮の前を行ったり来たりしていた。



「メロウ、戻ったぜ」


「もう、レイブン!


メロウ先輩、ただいま戻りました」


「ああ……よく戻ったね、二人……と、も……」


「お兄様……ご無沙汰しておりました……。


ただいま……戻りました」



メロウは目を見開き、信じられない物を見た表情をしている。


そのままふらふらとリリーに歩み寄った。



「あ、ああ……!


リリー……リリーなんだね……!」


「はい、お兄様……リリーです」



その返事を聞いたメロウの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


そのままリリーに近づき、無事を確かめるように、強く抱きしめた。


「ああ、良かった……本当に……!


この半年間ずっと、ずっと……!


ああ……良かった……良かった……!」


「お、お兄様……苦しいです……」


「大丈夫かい……?


怪我は……病気はしていないかい?


その、酷いことは……されなかったかい?」


「はい……お二人が、守ってくださいました」



完全に二人だけの世界だからお邪魔かなーと思っていたところだったのだが。



「二人共……本当にありがとう。


君たちには本当に……感謝してもしきれないね……」


「大丈夫です、たまたま通りがかっただけですから!


ね、レイブン」


「ああ、そうだな」


「そろそろ夕食の時間だ……。


せっかくリリーも帰ってきたんだ……みんなで一緒に食べようじゃないか……。


第五学生寮の食事は美味しいと評判なんだ……楽しみにしてくれ」



リリーが帰ってきたお祝いとして出された料理は、質素だがとても温かみのあるものだった。


そして驚くほど美味かった。


方向性は全く違うのだが、魔王だった時に食べたどんな食事よりも美味く感じた。



「そう言えば二人共……四寮に乗り込んで良く無事で帰ってこれたね……」



と聞いてきたので第四学生寮での顛末を話したら、メロウは卒倒してしまった。


いろいろ勝手したしな、済まないとは思っている。



「では……私はそろそろ戻ります」


「そうか……頑張るんだよ、リリー」


「はい……お兄様」


「リリーさん、僕たちもまた遊びに行くからね」


「ええ……お待ちしています、セシルさん。



……あの、レイブンさん。


私……頑張ります。


代表に選んで良かったって……あなたに思ってもらえるように、頑張りますから」


「ああ、お前ならきっと大丈夫だ。


頑張れよ」


「だから、その……また一緒に、お食事しましょうね。


今度は、その……二人で」


「?ああ、そうだな。


また一緒に、美味いものでも食おうな」


「約束、ですからね」



「メロウ先輩、どう思います?」


「まずはお友達から……かな」



こうして、昨日に続き激動の一日は幕を閉じた。


二日も続いて激動の日だったので三日目は落ち着くかと思ったのだが、天霧の訪問により結局三日目の激動が決定した。

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