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シュガーレット領④

「結界を張り直します。絶対に教会から出ないように!」

 私はレイピアを取り、魔力を込めると天に振りかざした。


 青い光が教会を包み込み天井に虹色の膜を張る。


 ここにいる限りは皆大丈夫だ。私の魔力が続く限りは。


「兵よ!わたくしが付いています。恐れることはありません。魔法や飛び道具を使える者はいますか?」


 数人から手が挙がった。


「結界内から攻撃することが可能です。援護してください。神父様、怪我人を頼みます」

 私はレイピアを持ち外へ向かう。がその手を後ろから掴まれた。

「どこへ行く」

 引き止めたのは伯爵だ。

「誰かが倒さねばなりません。応援が来るまで魔力が持つかわかりません」


 先程一体私が〈聖女〉(セイント)の魔力を使って倒したが、結界を維持しつつもう2体を魔力だけで倒すのは厳しい。倒すのなら魔法ではなく剣で戦わなければいけない。これ以上の回復は体が許容量をオーバーしてしまい倒れてしまう。


「お前が怪我をしたらどうする?治せるのか」

 伯爵の父親らしい表情は初めて見た。この人に親子の情があったのか。それとも私が居なくなって商会から金銭の援助が受けられなくなるのが怖いのだろうか。


「怪我をしたら神父様に治してもらいますわ」

 私は神父を見てにっこり笑う。神父は引きつった顔をしていたがそのくらいは役に立って貰わなければ困る。

「2体同時は私でも厳しいのです。結界内から攻撃する者は右の一体を抑えて下さい。わたくしがもう一体をやります」



「待て待て!お前がやられたら結界が消えて無くなるのではないか」

 モヒート会長は私に縋り付きはじめた。

「そうなりますね。離れてください」

「い、行ってはならない!一人で勝てる訳がない!結界が消えたらどうする!」

「行かなければ魔力が尽きていずれ結界は消えます」


 現に今もなお攻撃を受けている。魔力は結界維持に目減りするばかりだ。


「だめだ!だめだ!私が死んだらどうする!こんなところで死んでたまるか。お前たちこいつを取り押さえろ」

 会長は従者達に命令するが彼らは戸惑いをみせた。


「早くしろ!」


 その言葉に従者たちはバッと動きだし私を取り囲み、抑えられた。


「誰かが行かなければ結界は持ちません。神父様の結界は一撃で破られたでしょう。わたくしの結界とて同じです。長くは持ちません」


 私が精一杯言っても会長は恐怖からかパニックに陥っており、伯爵は私惜しさだろうか、黙り込んでいる。


 強行突破しようとしたその時、意を決した伯爵が声を上げた。

「その男を捕らえろ」


 その言葉に事態を見守っていた兵達は動き会長と、私を囲んでいた従者をあっという間に捕らえ拘束した。


「ふざけるな!援助をとめられてもいいのか!」

「こんな所で何もせず命を捨てる訳には行かない」


 伯爵は私をやっと視界に映した。彼の目は私の瞳の奥をじっと見つめる。

「やれるんだな?」

「やるしかありません」

 私が言いきると、伯爵はフッと笑い背中を押した。

「私はまだまだ子供だとお前を侮っていた。行って来なさい、但し危なくなったらすぐ戻ってくること」


 はい、と私は小さく返事をし兵達に付加魔法をかける。

「彼の者に力の祝福を、我に彼の者を守る力を。我は時の女神の巡り合わせを願い、疾風を呼び起こさん〈付加魔法〉(アデッショナル)


 付加魔法に包まれた兵士達からは急増したステータスに驚きの声があがった。私はレイピア振り上げ士気をあげる。


「いきます。剣士の方は崩れたレンガで投擲をお願いします。絶対に出てきてはいけませんよ」

 兵士達のおおー!という叫びがきこえ、私は結界を駆け抜ける。兵達が後ろから援護してくれているのがわかった。

 私は歌いレイピアに〈聖女〉の魔力を込める。刀身は青く光り、聖なる力を宿した。


 シシリーオンの弱点は前足だ。左のシシリーオンにレイピアで切りつけた。この魔物のモーションはゲームと一緒だ。尻尾で攻撃したあとは前足の攻撃がくる。場所もわかっているので少し下がって切りつけてやった。

 体当たりが来れば次は咆哮が来る。一度範囲外まで下がって咆哮がやむと同時に一気に切りつけた。

 聖女のスキルはかなり効くようで数度斬りつけると霧散して消えていった。

 もう1匹は教会の結界にへばりついている。中にいる兵士達が上手く惹きつけておいてくれたお陰だ。結界に攻撃されまくったせいでMPも危険域を示すレッドゾーンに突入したがこれなら大丈夫だろう。

 私はもう1匹にきりかかった。ターゲットがわたしに移りさっきと同じようにきりかかる。

「はぁぁ!」

 最後は上から突き刺し、2体目のシシリーオンは霧散した。



「やった……」

 しかし教会から聞こえるのは歓声ではなく悲鳴であった。


 なにが?


 その疑問はすぐに解けた。辺りを見回すと更に4匹に囲まれていた。 まさか、教会にこんなに集まってくるとは。人間がここに逃げ込んでいるのに気づいたのだろうか。


 教会で大勢を保護した事が仇になってしまっただろうか。4匹は無理だ、魔力もない。結界が保てない。


 私が惹きつけて遠くにいけばなんとかなる……?


 私はレイピアを構えながら青ざめる。すると兵士達が結界を飛び出し私の元へ寄ってきた。


「聖女様!」

「なっ、貴方達出てきては駄目だと!」

「聖女様は皆とお逃げください。私たちが惹きつけます」

「4体ですよ?無理です!死んでしまうわ」

「私たちは兵士です。それも覚悟の上です」

「下がりなさい」

「駄目です!聖女様はお逃げください」

 彼らの手は震えている。顔色も悪い。


 どうすれば……どうすればいいの!!


 シシリーオンは考える時間など与えてくれない。4体が一斉に私達にむかって襲い掛かってきた。


 やるしか、ない!一匹でも多く倒す。


 私は汗ばむ手でレイピアを構え、迎えうつ。そして、レイピアとシシリーオンの爪が交わる刹那、背後から突風が吹き荒れた。


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