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SKYED7 -リオン編- 上  作者: 九綱 玖須人
巨星を集い
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巨星を集い 6

「大事な話なんじゃねえの、それ。エイファとかも一緒じゃなくて良かったのか? 二度手間だ」


「私も全員の前で話す予定だったんだがね」


「お姉様たちはもうお部屋にいなかったんです」


「お姉様だあ!?」


「エイファお姉様は私のお姉様ですっ」


「いや知ってるけどよ……なんか、ぞっとする響きだな」


「良い御家柄なんだね、本当に」


「可哀そうな家だ」


「さて、君たちは少尉たちが何処に行ったか知っているかね?」


「いいや。いねえなんて俺も今知ったし」


「あ。あれじゃない? 昨日、持ち場の小路を封鎖するって言ってたからその確認しに行ったとか」


「あー……あり得る」


「ではそこへ行こうか。伍長、上等兵、早く準備したまえ」


 バルトスとセロはヘイデン少佐に急かされて着替えを手早く済ませ、四人でサネス班の持ち場へと向かった。




 やはりエイファとエリスは既に持ち場に着いていた。


 二人もヘイデンの登場に驚いた。


 しかしエイファがそれ以上に驚いたのは妹のニファの存在だった。


 嬉しそうに駆け寄り飛びつくニファを抱きしめエイファは困惑した表情を浮かべた。


「ニファ! 退院できたのね!」


「はいお姉様、私は退院しましたっ!」


 抱擁する二人を眺めながらバルトスとセロはまじまじと顔を見比べる。


 双子というだけあって髪型の違いに気づかなければ本当にそっくりだった。


「すごいなぁ、本当にそっくり。……なんでバルトスはすぐに分かったの?」


「そんなもん簡単だ。見ろよ、エイファは絶望の絶壁なのに対してニファは少しある」


「何があるんですか?」


「何って胸……」


 得意げに答えかけたバルトスはエリスに尾てい骨を蹴られ声にならない悲鳴をあげて地面を転げまわった。


「腕が元通りになって良かったわ」


「腕が元通りになって良かったんですか?」


「覚えていないの、ニファ? あなたの腕、丸太みたいに大きくなっていたのよ?」


「私の腕は丸太のように大きくなっていましたが、イクリオ病院のお医者先生様たちが元気にしてくれました」


「姉の前でもああいう喋り方なんだね」


「腕が丸太ってどういう状況でしょうか」


「エリス特務曹長、ご苦労だったね。いろいろ大変だっただろう」


「いいえ少佐殿。大変なんてもんじゃありませんでしたよ」


 苦笑してヘイデンは頭の汗を拭いつつも周囲に注意の意識を向けていた。


 小路は朝から通りに来た人がそれなりにいた。


 生活道路が急に閉鎖になり不満の声が出ていたが、エイファたちは昨日既に怪我人が出たという嘘を理由に住民に理解を求める任務をこなしていた。


 きっと今日も広場で催し物が始まる時間になったら人がごった返すであろう。


「忙しくなりそうだね。だが、それも暫くの辛抱だ。計画通りだね」


「計画通り?」


「この持ち場に配属させるよう働きかけたのは私の意志だ。町の見取り図を見て、ここが人の出入りの弱点だと考えた」


「おいおい、じゃあ俺たちはずっとここに釘付けじゃねえか。さっき言ってた作戦を遂行できねえぞ」


「作戦?」


「そのことについて話そう。伍長、上等兵、民間人への対応は君たちでやれ。ただし耳だけはこっちに向けておけよ」


「こんな街中であの話すんのかよ。誰かに聞かれるぞ」


「こんな街中だからこそ内緒話が出来るんだよ、伍長。怪しい人間がいたらすぐに分かるさ」


 ヘイデンはエイファたちに自分の娘とハースト軍曹がこの町にいるかもしれないことを説明した。


「まさか……軍曹が、どうやって?」


「それはサネス一等兵の第六感が答えを導きだしている」


「ニファの第六感?」


「そうだ。知らなかったかね? 君の妹は軍曹の居場所を特定する勘を持っている」


「信じられねえよな。なんでそんな能力がある」


「陛下が仰るには君たちが扱っている兵器に搭載しているセエレ鉱石は魔力を原動力としているとのことでな。サネス一等兵がハースト軍曹の目を斬った時、その魔力が軍曹に流れて二人の意識が繋がってしまったとのことだ」


「なんだそれ」


「相思相愛ですっ」


 紅潮してもじもじするニファは置いておいてそんな眉唾な話を急に信じることなど出来なかった。


 確かにセエレ鉱石は鉱石というには全くそれぞれの見た目が異なる。


 重量物を異常に軽くするという未知の特性を持っている。


 しかしそれが魔力などという非科学的なもので説明されてしまうと笑うしかない。


 皇帝自身も不思議な力を使うとはいえ、それらを信じてしまうとなんでもありのような気がしてエイファたちは拒絶するしかなかった。


「本当に軍曹の居場所が分かるの、ニファ?」


「はい、私はハーストさんの居場所が分かります。だいたいですけど」


「サネス一等兵の話では彼の気配は暫くあっち方面の山あたりにあったとのことだ。それが今になってここらへんに移動している」


「ずいぶんふんわりした探知能力だな」


「あっちの山って……ねえエリス」


「ノーグタン山の国営炭鉱のある場所……ですか?」


 セロとエリスが何かに気づきヘイデンが大きく頷いた。


「レイトリフ殿に調書を取りに行こうとしていた君たちの乗った馬車が襲われたのは山の北側にある街道だったね。あの時はレイトリフ殿が帝都直轄の部隊を買収したのかと思いその線で動いていたが、それだとレイトリフ殿が謀反を企てていると喧伝しているようなものでどうしても腑に落ちなかった。しかし実は軍曹一味が首謀者だったとしたらとしたら、どうだ? 帝都とバエシュ領を仲違いさせようとして仕組まれた罠だと考えることが出来るのだよ。君たちの報告書ではけしかけられた炭鉱労働者は扇動した警備兵の顔をよく覚えていなかったとのことだが、それは顔を隠していたからじゃないか? ……隠さざるを得ない傷があったとか、な」


 ハースト軍曹はマノラの町からの行方が不透明になっていた。


 内陸を通りリンドナルへ抜けようとしていたのならバエシュ領沖で起った巡視船の大量撃沈は軍曹の動向から諜報部の目を逸らす為に協力者が起こしたということか。


 辻褄は合うが一同はどうにも腑に落ちなかった。


 あまりに壮大な計画でありそれが本当ならすでに戦争が始まっているといっても過言ではないが、軍曹程度の階級の人間が何故そこまで事件の中心で行動できるのか謎だったからだ。


 軍曹は最強の兵士などとは呼ばれているがそこまで軍に大きな影響力があるわけでもなく、当然島嶼の信を得るだけの繋がりもないはずだ。


 なのにヘイデンの話しぶりでは軍曹が首謀者のようである。


 その断定ぶりはまるで問題の言及を国内だけに留めておき、容疑者として浮上している島嶼の存在を擁護しているようにも思える。


 その証拠に島嶼の少数民族が絡んでいるかもしれないという最初の憶測はいつの間にか語られすらしなくなっていた。


「御言葉ですが少佐。……軍曹は、なんというか、正々堂々としている人でしたのでそういう策略とかはやらない人だと……思います」


 遠慮がちにエイファが進言する。


 バルトスやセロもそのように思った。


 会ったことはないが、前線では彼の特攻は語り草になっている。


 良くも悪くも猪突猛進な人間がそこまで小細工を張り巡らせるとは到底思えなかった。


「しかし状況証拠がそう言っている。君は妹が嘘をついているとでも?」


 ヘイデンに反論されエイファは黙る。


 確かにニファは嘘はつかなかった。


 尚も何か言いたげなエイファだったが上手く言葉に出来ずに言い淀んでいた。


 そのエイファの肩に手を置いてヘイデンは諭すように語りかけた。


「いいかい、戦争はすでに始まっている。ここはもう敵地だと思え。さっき言ったがここを持ち場に割り当てるように頼んだのは私のせめてもの抗いだ。この小路がそうそうに閉鎖されるのは分かっていた。今はまだ住民の説明で大変だろうがそのうち誰も通らなくなる。つまり手が空く状況が生じるのだ。そうなったら君たちはこの町をくまなく調査しなさい。ただし深淵には近づくな。軍曹は泳がせておき、陛下が式にご参列された時にどこから襲撃してくるか、どこを逃走経路に利用しそうかを導き出すんだ」


 なるほど、とセロは思った。


 上層部は全てを軍曹の仕業にしようとしているのではなくここで全ての膿を出し切りたいのだ。


 だから共犯者に警戒されないように今は全ての罪を軍曹に集約しているのだ。


 確かに島嶼の勢力が絡んでいるのだとしたら迂闊なことをして取り逃がせば次に捕まえる機会はそうそう訪れないだろう。


 皇帝を囮にするというあり得ない策ではあるがあの不気味な皇帝なら難を逃れそうな気もした。


 だいたい理解したような一同の顔を見てヘイデンは満足げに微かな笑みを浮かべた。


 ヘイデンは嘘をついていた。


 軍曹が炭鉱付近を通りリンドナル入りをしたというのはニファの第六感の通りだが時系列は異なる。


 軍曹が炭鉱付近を通ったのはつい最近のことでエイファたちの馬車が襲われた時には恐らくもう島嶼へ渡った後のはずだ。


 その彼が、皇帝の娘をジウに届けそのまま隠棲でもしてくれればよかったものを再び帝国の地を踏むというのなら再び利用させてもらうまでである。


 これ以上はジウと揉めたくないので彼に全ての罪を着てもらい口封じするのが最善手だった。


 そしてヘイデンには何としても同時に処しておきたいものがあった。


 今回の事件は奴を失墜させるのにまたとない好機なのだ。


 これはヘイデンの復讐だった。


 情けない積年の恨みだ。


 そんな私情を年若い彼らに曝け出せるほどヘイデンは人間が出来ていなかった。


 結果、味方である彼らさえも自身の面子の為に労して欺かなければならないのであった。

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― 新着の感想 ―
あらあらまあまあ! ロブを巡る三角関係になるんですか。 ラブ・ハーストさんって誰か呼んでたりしないすかね。
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