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温泉物語  作者: 蒼乃みあ
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第六十四話 メアリー達とのお買い物

 約束の日はあっと言う間だ。今日はメアリー達と中央都へ行って遊ぶ日である。初めての事に、私は内心ワクワクしていた。


「おはようございます、メアリー様。アンナ様、ライラ様。」

「ええ、おはよう、アイシャ。」


 いつもの様に先に下りて、私は三人を待っていた。その間、話し掛けてくれた女の子達と少しだけ喋る。今日はメアリー達と出かける事を話していると、今度は私達とも行けると良いねー、みたいな話題でちょっと盛り上がった。

 私だって、普通の女の子ですからね。学生時代に女友達と遊びたいとかあります。前世では殆ど出来なかったしね…。


 そんなこんなで、お喋りをしているとメアリー達がやって来た。私は話していた彼女達に挨拶をしてその場から離れる。メアリー達に話し掛けると、朝食を食べてから出かけるらしい。

 最近はメアリー達と毎日朝食を食べている。たまに他の子達にも誘われるけど、メアリーが断ってくれているのだ。


「今日はどこに出掛けるのですか?」

「そうね…。確か新しくカフェが出来たらしいからそこには行きたいわね。」

「ブティックで新しいドレスも見たいですわ。」

「それなら、雑貨屋さんにも行きたいです!」


 おお、女の子っぽい!凄い楽しみになって来た。


「それでは、参りますわよ。」

「はい、メアリー様!」


 朝食を食べ終え少しの食休みを挟み、私達は寮を出た。正門まで歩いていくと、以前に出掛けた時の様に、大きな門が開かれる。


「アイシャ、直ぐそこに馬車を用意しているから、乗っていくわよ。」

「はい、メアリー様。」


 やっぱり、学校から町までは馬車で行くのが普通なんだ。大した距離じゃないけど、貴族の人は馬車移動が基本なんだなぁ。

 三人と話していると、あっと言う間に町へと着いた。


「メアリー様、どちらから行かれますか?」

「そうね…。最初は雑貨屋で買い物でもしましょうか。」

「はい!」


 四人で町中を歩き始めた。本来なら護衛とかいるものだと思ったけれど、今この場には私達しかいない。気を利かして女の子だけにしてくれたとか?それとも、どこかに隠れてるのかな?


「メアリー様、あのお店に入りましょう!」

「いいわね。」

「行くわよ、アイシャ!」

「は、はい!」


 アンナが指さしたお店の中へと入っていく。ちょっとした装飾品や小物が置いてあるようなお店で、店内はかなり可愛らしい。少し値段が高めの髪飾りや指輪、ネックレス等の装飾品に、可愛らしい刺繍のされたハンカチや色鮮やかなスカーフ等。様々な商品を四人で見て回り、アレが良いのではないか、コレはどうだろうか、何て話し合う。


「このポーチ、可愛らしいですわ。」

「こちらの香水は、とても良い香りが致します。」

「あの花の小物、素敵ですね。」


 メアリー達三人は、キャッキャうふふとお買い物を楽しんでいる。私も一緒に混ざっていいのかちょっとだけ不安になったが、直ぐに私にも話し掛けてくれたので四人で買い物を始めた。


「次はあっちに行きましょう。」

「はい、メアリー様!」


 色々なお店を回っては、四人で買い物をする。と言っても、私はそこまでお金がある訳じゃないので、アレコレ買えないのだけども。


「ああ、そろそろドレスを見に行きましょうか。」

「畏まりましたわ。」


 メアリー行きつけの仕立て屋さんと言う事で、私達はやって来た。流石、貴族のお嬢様が良く行くというお店。外も中もシンプルでありながら、かなり豪華だった。

 店内に入ると直ぐに一人の従業員がやって来て、個室の方へと案内してくれる。


「コレはコレはっ、メアリー様。アンナ様とライラ様も、ようこそいらっしゃいました。」

「頼んでいたドレスは出来ているかしら?」

「ええ、ええ、勿論でございます。只今お持ち致しますね。」


 従業員である男性は、メアリー達に挨拶を済ませるとお店の奥の方へと入っていった。暫くすると数着のドレスを持って戻ってくる。


「こちらでございます。どうぞ、ご確認下さい。」

「……。」


 渡されたドレスをそれぞれがジッと見つめる。一人だけ何も無いので、若干居た堪れない気持ちになる。


「……良く出来てますわね。」

「流石ですわ。」

「このまま完成させて下さいませ。」

「ありがとうございます。大変光栄でございまます。」


 小さく吐いた息の後に、メアリーが一言呟いた。その後にアンナとライラも言葉を続ける。男性の従業員はニコリと微笑み、出来に満足してもらった事へ感謝の言葉を述べた。


「そう言えば、アイシャはどの様なドレスを仕立てましたの?」

「ドレス…?」

「社交パーティーに着て行くドレスですわ。」

「……!!」


 そう言えば、私、ドレスなんて持ってない!ど、どうしよう…!去年の親交パーティーと冬のお茶会は着物だったし、実技の授業やヴァレス祭は学生服のままだったから今度の社交パーティーのドレスなんて、考えた事無かった。

 私が慌てたのを見て、メアリー達は少し眉を顰めた。


「アイシャ、まさか…。」

「わ、私、ドレスの事を忘れてました…。」

「…全く、アイシャったら…。」


 呆れた様に溜息を吐いたメアリーは、従業員に二言、三言話し掛けると、直ぐに誰か呼んで来るように申し付けた。


「アイシャ、折角ですから、ここで仕立ててしまいなさい。」

「で、ですが…。」

「ドレスは直ぐに出来る様なモノではありませんわ。」

「まずはサイズを測ってからデザインと生地を決め、仮縫いしながら少しずつ形になっていくんですもの。メアリー様の言う通り、早く作っておいた方が良いわよ。」


 着物の時も作るのにそれなりに時間は掛かっている。私が作るより早いといっても、お願いして直ぐに完成するものではないと分かっている。

 メアリー達の言う通り、出来るだけ早い内に用意しておいた方が良いだろう。


「てっきり、アルベルト様方に贈られてると思いましたのに…。」

「そんな、恐れ多い事出来ませんでしたから…。メアリー様方の言う通り、私もお願いした方が良いですね。……あ、でも、私今手持ちが…。」


 ドレスのような高い買い物をするつもりじゃなかったし、今持ってるお金でドレスが作れるわけがない。以前のゴタゴタで多少のお金はあるけれど、ドレスって幾らぐらいするんだろう…?


「後で払えばいいでしょう。我が家で立て替えても構わないし。」

「それは、申し訳が…。」

「良いから、アイシャはまずドレスを作る事から始めなさい!後でアルベルト様方に迷惑や恥をかかせてはならないのですから!」

「は、はい!」


 思わず返事してしまった。でも、まあ、確かに次に外出できるのがいつか分からないし…。ここは、メアリーの言葉に甘えておこう。帰ったらアルベルトとジェイクに伝えて、何かお礼が出来ればいいかな…?


「お待たせ致しました。どうぞ、こちらへ。」

「行くわよ、アイシャ。」

「はい…!」


 やって来た従業員達に連れられてきたのは、さっきの個室よりも広い部屋だった。周りには様々なドレスや布が飾られてて、大きな鏡が立てかけられてる。ここで注文したり、試着するのかな?


「アイシャ様。まず、デザインはどうなさいますか?」

「ひぇ…!」


 アイシャ様、なんて初めて呼ばれた…!何だか凄い違和感…。


「どうせなら、アイシャも私達と同じにしたらどうかしら?」

「それは良いですわ、メアリー様!」

「…皆様は、お揃いなのですか?」

「ええ、そうよ。私達、よく同じデザインを基にして仕立ててもらってるの。」

「私達がメアリー様と全く同じものを付ける訳にはいかないから、少し違う感じにはなるけどね。」


 確かに、親交パーティーの時のドレスを思い出すと、アンナとライラのドレスはお揃いみたいになっていた。だけど、メアリーのとは大分違った感じに思えた様な…。

 私が考え込んでいると、まるで心の中を読んだかのようにアンナが話し続けた。


「親交パーティーの時は、流石にメアリー様とは違う衣装にしてもらったわ。」

「あの場は学園で初めてのお披露目でしたもの。ご一緒には出来ないわよ。」

「成程、そういうモノなのですか。」


 うーん、ますます貴族って面倒臭い。取り敢えず、階級が違ってもお揃いに仕立てる程三人の仲が良いって事は分かった。


「メアリー様の衣装を基にするのならば、この様な感じは如何ですか?」

「あら、いいじゃない。」

「私達とも違いを出すなら、この辺りはこうしたらどうかしら。」

「そうね、アイシャならその方が似合いそうだし。」


 次々とメアリー達が案を出して、従業員の女性と話を進めていく。正直、今の貴族女性の流行とか分かんないし、任せておけばいいんじゃないかな、なんて私は部屋の中を見回した。


 今の流行りはどうやらプリンセスラインでふんわりとしたスカートのドレスが流行しているらしい。レースを使ったり、リボンを付けたりと人それぞれに違いは出るものの、ドレスの形としては今一番注文の多いモノだそうだ。

 メアリー達はプリンセスラインのドレスを基に、胸元には沢山のフリルで少しボリュームを付け、スカートには小さなリボンを散りばめたデザインだった。裾の方には綺麗な花の刺繍がされていて、レースから透けて見えるのがとても可愛らしい。

 アンナ達と少し違いを出す為に、メアリーはスカートの部分に所々小さな宝石を付けてキラリと光る様にしてるらしい。


 宝石なんて付けたら、幾ら掛かるのだろうか…。恐ろしくて聞けない…。


「アイシャは少し背も小さいし、胸も余りないから胸元のフリルは少し多い方が良いんじゃないかしら。」


 ぐさりと、心に刺さる言葉が…。


「それなら、スカートのリボンを減らしましょうか。上も下もボリュームがあると変ですわ。」

「色は何色が良いかしら?私達とは違う色が良いわよね。」


 因みにメアリーは赤に近い紫色、アンナは朝緑色でライラは橙色だった。うーん、他の色と言えば青とか?親交パーティーで来たのは白と水色の淡い感じだったし、濃い青なら違った感じに見えるかな?


「こちらは如何でしょう?」

「…いいんじゃないかしら?アイシャ、どう?」

「はい、素敵だと思います。」


 女の従業員が差し出したのは、濃い青色の生地だった。紺碧色に近いけど、スカート部分には白いレースが掛かるので、上と下で違いが出ていてそこまで暗い感じにはならない。


 私はその色でドレスを作ってもらう事にした。


「では、先程の案でお願いするわ。」

「畏まりました。」

「アイシャ様、サイズをお測りしても宜しいでしょうか?」

「お、お願いします…!」


 うわぁ、凄いドキドキする…!着物を作った時もそうだったけど、お店で測ってもらうのも緊張するな…。


「アイシャ、私達は先程の部屋で待っているわよ。」

「め、メアリー様…!」

「終わったらアイシャを連れて来てちょうだい。」

「畏まりました。」


 そう言って、メアリー達は男性の従業員と一緒にスタスタと部屋から出て行ってしまった。待って、一人は緊張するから置いて行かないでほしい…!


「アイシャ様、腕を上げて下さいませ。」

「ふぁ、はい!」


 ちょっと噛んでしまった。サイズを測っていた女性が少しだけ笑ったのが分かる。恥ずかしい…。


「はい、コレで終わりでございます。」

「あ、ありがとうございました。」

「では、先程の部屋へご案内致します。」


 扉の前で待機していた従業員に声を掛けると、一緒に行くように言われる。さっき来た道なので一人でも行けるが、お店の中で面倒を起こす訳にはいかないので、大人しく着いて行く。


「お待たせ致しました、皆様。」

「ああ、終わったのね。」

「はい。」

「ドレスはいつ頃出来るかしら?」


 メアリーの質問に、共にやって来た女性の従業員が話し始めた。


「一月も掛からずに仮縫いは出来ると思います。そこで問題が無ければ本縫いに入りますので、二月もあれば…。」

「それなら、十分間に合いますわね。」

「アイシャ、アルベルト様方に仮縫いの為の外出許可を取っておいて頂戴。家になら兎も角、学園に呼び出す訳にはいきませんもの。」

「畏まりました。」


 忘れない内に、ちゃんとお願いしておかなくちゃ。


「では、後は宜しく頼むわね。」

「本日はありがとうございました。またのお越しを、お待ちしております。」


 少し話し合えば、このお店でやる事はお終いだ。お金は出来上がってからでいいそうだで、金額も何とか払えるような額だった。ドレスでこんなに使う予定じゃなかったけど、仕方がない。学校で使うのに必要なら、用意しておかなきゃいけない。

 正直、服に使うなら温泉の為に使いたい。露天風呂の外観として、周りに季節の草花を植えたいんだよね。森の中にあるのだから、緑溢れる温泉にしたい。檜…は無いけど、それっぽいのはあったからなんちゃって檜風呂とか。


 その為に掛かる費用を考えると、貯金はいくらあっても足りなくなってしまう。全部をアルベルトやジェイクにお願いするのも申し訳ないんだよね…。

 現状、そうしないとやっていけないんだけども。


「メアリー様、アイシャの装飾品はどうしましょう?ドレスにあった物が必要ですよね。」

「アンナ、その前にお昼にしましょう。ドレスを仕立てるのに少し時間が掛かりましたもの。」

「まあ、確かにそうでしたわね。」

「新しく出来たというカフェ、楽しみですわ。」


 いつの間にか、お昼時になっていたらしい。そう言えば、お腹が空いていた。当初の予定通りに、私達四人は開店したばかりのカフェへとやって来た。

 当然ながら、貴族であるメアリー達が居るので、並ばずにお店の中へと入っていく。外で並んでいる子達の視線が痛い。ごめんね、私も平民なのに…。


「店内はまあまあね。」

「椅子やテーブルは可愛いですわ。」

「メニューは何に致しましょう?」


 いつもより、少しはしゃいだ様子のメアリー達を見て、私もテンションが上がる。さっきまで申し訳なく感じていた筈なのに、私の気持ちはもう違う事に向いていた。


 だって、学校に来て初めての友達とお出掛けだよ!女子会だよ!


 お茶会とは全然違う。前に話したみたいにガールズトークが出来るなんて、凄い嬉しい。やっぱり、女の子の友達っていいよね。前世でも余り出来なかった事だから、そんなに経験がある訳じゃないし。

 ラティスと二人で遊ぶのとはまた違う。ちょっと気は使うけど数人の女の子同士で一緒に遊ぶなんて、今世では滅多に出来ない事だ。折角の機会、楽しまないと勿体無いもんね!


「ふぅ…、お茶を飲むと落ち着きますわね。」

「はい、メアリー様。」

「ここは学園と違って人もいないし、ゆっくりとしましょう。」


 運ばれてきたお茶と料理を飲みながら、ドキドキの女子会の始まりである。

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