プロローグ
プロローグ-
季節は春。
今日は学校の入学式。
つまり、俺こと西宮春斗は今日からめでたく高校一年生ってわけだ。
別に、不安なわけでもなく。
中学校の奴らと別れて悲しいわけでもない。
いつも通りに家を出て、いつも通りの時間に、いつも通りに通学する。
ただ、一つだけ、いつも通りじゃないことがある。
それは、今日に限って憂鬱なことである。
それも、ものすごく。
いつもと同じで飽きてきた。いつからだろう?こんな生活に飽きを感じてきたのは。
いつからだろう、退屈になってきたのは・・
そんな、一人憂鬱に学校に向かってる俺に。一人の男が話しかけてくる。
「よお春斗!なんか朝から元気なくないか?お前どうせ朝までゲームか何かしてただろ?」
と、元気な口調で、話しかけてきたこいつは。今日から同じとこに通う俺の友達。
神浦春平。好きなものは恋バナ。嫌いなものは人の陰口だ。
切っても切れない腐れ縁だ。つまり、頼りない幼馴染ってとこだな。
「どうせって言い方やめろ。俺はただ憂鬱なだけだよ。」
「憂鬱・・?憂鬱ねぇ・・・春斗、もしかして入学式がめんどくさいとかか?あーいや、言わなくてもいい。多分、絶対そうだから。なぁ?どうせそうなんだろ?」
と、なんの根拠もなく。勝手に俺が入学式がめんどくさいから憂鬱。などと思ってるみたいだ。
「そうゆうわけじゃない。俺は飽きてきたんだよ、この毎日に。」
憂鬱さと退屈さを交えたこの気持ちに名前をつけたい。
「春斗が憂鬱なんて言葉使うの初めてみたな・・ましてや、飽きたなんて一度も口にしたことないよね?僕に隠し事かな?親友なのに?ずっと黙ってた?親友なら親友らしく。相談に乗るのがベストだと思うんだよねぇ!僕!」
と、本当にうざったしい。いつ誰がお前と親友になったか!腐れ縁なのは認めるが。
「・・・今心のなかで、『うざい』とか、『お前とは親友じゃない。』とか思わなかった?」
鋭すぎて引ける。だが、本音を言うのも違うので。俺は嘘をつく。
「そんなわけあるか、親友だぞー親友~」
「棒読みなの、まるわかりだよ・・・」
そんな、くだらない会話をしているうちに。見えてくる。
大きな校舎に正門。その、大きな正門には、たくさんの生徒が吸われていく。
正門にちょこんと置いてある。入学式の看板。
ドーン!と、効果音がなりそうなくらい威圧感のある校舎。
それを前に俺達は立ち止まる。
「あぁ・・でけぇなぁ。」
それしか言葉が思い浮かばい。というより。これが一番お似合いな言葉である。
「中学校とは比にならないねぇ~」
中学校の二~三倍ほどある校舎に圧倒される。
「こんなに大きかったら、飽きとか退屈さとか憂鬱さとか、全部なくなりそうだねぇ。これは飽きれないねぇ。飽きることなんて到底無理だろうねぇ。ねぇ?春斗。」
本当にうざったしいこの言い方。だが、普通はそのはずだ。
そもそも、学年が上がった時点で、クラス替えがある。それで普通は飽きないはずだ。
新しい環境になり、舞い上がるはずだ。だが、俺たちは、その普通とは違った。
ここ、碧丘学園の入学は、いや入園は、幼稚園である。さらに言うと幼稚園から大学まで。クラス替えが一切ない。つまり、先ほど。俺が春平とは切っても切れない縁と言ったのはそうゆうことである。
さらにさらに、この学校。全寮制なのである。
しかも、幼稚園からずっと。まぁ、家政婦らしきものは中学二年までいたので、生活はなんとかできた。
さらにさらに、この学校。埋め立てられた地にあるのである。大きさは東京ディ〇〇ーランド三つ分ほど。
まぁ、そんな場所行ったことないが。
親の顔よりみたクラスメイト。そんな生活に。飽きを感じていた。
そんな生活に。退屈さを感じていた。
そして、そんな生活がまた始まることに、憂鬱さを感じていた。
元気がないのは、朝までゲームしてたからではなく。憂鬱だから。
憂鬱なのは、また、この生活が始まるから。
俺は求めていた・・のかもしれない。
出会いを。
それから、独りずっと考えてた俺に春平が言う。
「なぁ、春斗。入学式って十二時からだよな?今まだ十時半だし、敷地内を散歩でもしないか?」
そう春平は俺に提案してきた。
「昼の十二時までやることもないし、そうだな・・・散歩を許可しよう。」
「許可制なのね。」
と、ツッコミが入った。
そんな俺たちを大きな門が迎え、そのまま順路に進んでいく。
俺たちが足を入れて数分後。校舎を目の当たりにした俺は、いや俺たちは驚く。
「・・・ぇ?」
あまり声も出ない。
「でっけぇなぁ。」
本当に、それしかいうことがない。というより、それが一番お似合いな言葉である。
それから花が舞う道を進み。しかも男二人で。このシチュなら普通男女と・・・
っとと、いかんいかん取り乱した。
そんなこと考えてるうちに見えてきた。
第一体育館。
またしても俺はぽかーんと口を大きく開けて。その大きさに驚く。
こんなところで入学式すんの?
「これもでかいねぇ。まるで小人になったみたいだ」
本当に、それしかいうことがない。というより、それが一番お似合いな言葉である。
あれ・・・?なんか同じこと言ってたりする?気のせいかな。
次に訪れたのは新校舎(B棟)である。
この大きさ。普通にメインよりも大きくない・・・?
「これ、A棟よりでかいねぇ・・」
でかい。とにかくでかい。
「なんというか、開いた口が塞がらないな。」
「そうだねぇ・・ぽかーんとしちゃうねぇ。」
そして、最後に行きついたのは食堂。
えぇと。なんて言おうね。
大きさがおかしい。ていうか、そんなに生徒いなくない?
「わぁ。」
ほら、もうコメント出てきてないよ。
なんもいえねぇ・・・
ってなってるよ?
と、驚いていたら。
『午前十一時三十分。入学式三十分前ですので、新入生のみなさんは、第三体育館に、お越しください。』
いつの間にか十一時半になってたみたいだ。
その放送があったため、俺たちは急いで第三体育館に戻る・・・
え?第三??
おかしいな。さっき俺らが見たのは第一体育館だぞ?
第三って・・・第三って??
とりあえず、焦らずに春平に聞く。
「なぁ春平。第三体育館ってどこ?」
春平はこう答えた。 わからない と。
「え?」
「俺に聞かれてもわかるわけないだろぅ?一緒に回ったのは、本校舎、第一体育館、新校舎、食堂だよ?どこに第三体育館なんてあるのさ。」
「あっ、あっははは。そうだよね、一緒に回ったのはその四つだもんな。」
と、俺は思わず笑う。
「で・・どこ?」
俺がもう一度春平に問う。
と、春平は言う。
「知らない。」
と。
俺は思わずもう一度聞き返す。
「え?」
そうすると春平はもう一度。
「知らない。」
と、春平は答えた。
俺はこう提案する。
「本校舎に戻らないか?」
「よし!そうしよう!で、どこ?」
二人そろってぽんこつだ。な?言っただろ?頼れない幼馴染だって。
俺はもう一度提案する。
「探すぞ。」と。
「あたりまえだ!探すぞ春斗!全力で!」
と、全力で探した結果。
三分も経たずに見つけた。
割と近かった。というか、新校舎の裏にあった。
そうだよな、普通新校舎と本校舎繋がってるよね。
そして、ついに。入学式が始まる。
飽きた、退屈だ、憂鬱だ。などのことはもう忘れるしかない。
そう思いながら俺は少し憂鬱ながらも、それを消し。入学式に挑む。
『続いては、新入生代表の言葉。』
「はいっ。」
と、少し短めの黒髪美少女が立ち上がった。
ほう。あの人が新入生代表かぁ。
「新入生代表。嵯峨芳。」
長い代表の挨拶が終わり、大きな拍手とともに帰って行った。
あんな人が中学校にいたなんてな。知らなかった。
そして、そのまま入学式は終わり。
俺と春平は先生の指示通りに進んでいく。
そのまま進んでいくと。列に並ばされた。奥では何かが配られている。
順番が来るまで待っていると・・
「なぁ春斗。」
春平が話かけてくる。うざったしいとは思ってないぞ?
「なんだ?」
「新入生代表の嵯峨さん。可愛かったねぇ。」
なんともまぁ、誰にも聞かれたくもない話だった。
おれは、適当に。
「ああそうだな。」
と、返す。
「あんな子がうちのところにいたなんてねぇ。僕びっくりしちゃったよ。」
何を言ってるんだがこの変態は。なんて話してるとすぐに順番が来た。
「はい、こちらがクラス表になります。」
クラス表?そんなに貰ったことなんてあまりなかったな。
なんせクラスが変わらないからな。まぁ、進学したため、念のために配られたのであろう。
そう、思ってた。
え・・・?
俺の後ろの席のやつ、こんな名前だったっけか?杉宮徹?確か後ろは杉田亮だったはずだが・・
異変が起こってることには気づいた。すぐに。
なんだって、配られたクラス表が。少し違ったからだ。
ミスなのか。それとも・・・クラス替えなのか。
そんな中俺に話しかけてくる。
「春斗!クラス替えだ!」
・・・・ぇ?
言葉にはならなかった。
「クラス・・・替え?」
精一杯出した声は少しかすれていた。
「ああ!同じクラスだぜ!」
と、悲報と朗報が一気に俺の脳内に入り込む。
だがそれは、明らかに。朗報であった。