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2017年 夏文集『STIPES』  作者: 西南学院大学文芸部
2/7

『夜凪』・『In her uterus』

作:浦島コタロー

『夜凪』



風が止む 波が止む 時が止まる

光が止む 匂いが止む 世界が止まる


それは休息ではない

忍び寄る怪物をそっと待っている

怪物は木を割り、肉を闇の中に叩きつける

視界を奪い、知らぬ間に食い尽くす

そんな「バケモノ」をそっと呼び寄せている

これは安息ではない


風が止む 波が止む 時が止まる

光が止む 匂いが止む 世界が、凍る



―――――――――――――――――――



『In her uterus』



気づけば、ぼくは水の中にいた

温かく、どこかほっとする水の中に

不思議と息苦しくはない


水は思っていたよりは少なく

身体を伸ばせば柔らかい壁に触れる

ふにふにとしている壁を押してみると音が聞こえた

少し高く、優しい音

初めて聞いたはずなのにずっと前から知っているような

返事をしたくなるような

そんな音が水を響かせて伝わってくる


音はそれから頻繁に聞こえてくるようになった

嬉しそうな音

愛おしそうな音

落ち着いた音

同じ音でも調子は毎回違っていた


時には怒りが含まれていたり、震えていたりしているように聞こえた

そんな時ぼくは決まって壁を押した

ねえ、大丈夫?

ぼくがいるよ

きみのすぐ側にいるから

壁を押すと、音はいつも少し止んで、それから優しい調子に変わった

壁からは反対側から押されているような力が感じられた


しばらくしてぼくの身体は大きくなった

壁だと思っていたものが本当は丸い部屋だとこの前知った

そしてその部屋も最近は小さく感じるようになった


苦しそうに呻く音で目が覚めた

それと同時に部屋が小さくなっていく

どんどん強くなっていく音に迫ってくる壁

一瞬ひどい苦しさを感じた後、辺りは白に覆われ、ぼくは大声をあげた


ゆっくりと目が慣れてくると、大きくて柔らかい人がぼくを愛おしそうに見ている


「初めまして」



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