Number.07 クエスト終わり
今回は短めです。
読んでくださる方、本当にありがとうございます!!
「若干後悔してるぜ…なんともまぁ一瞬で終わっちまったな。
ハルバードに跨がって攻撃してる…というか突進してるのを見た時は武器間違えてるだろって思ったが…」
「てへー…ああいう乗り物が元の世界ではあったんだよー。
魔法使いの基本的な乗り物さー」
街への道を移動しながらの何気ないいつもの会話。
言われたことにちゃっかし嘘をついて説明する。
でないと私は元の世界の空想大好きコスプレロボになってしまう…魔法が好きなのは否定しないけど…。
いや案外コスプレロボで間違ってないのかもしれない。
実際白魔法使いの服装に、ステッキ(合体済み)と箒を持っているのだから…。
だが、そのコスプレロボという字面は何かと恥ずかしい。
恥じらいもある私には口が裂けても『コスプレロボのクラインちゃんです!ぴーすぴーす』とか言わない、絶対に言わない。
「へえ…まあいいか。
…合体しちまったステッキの代わりにこれを持ったらどうだ?」
そう言って、カルロスは引きずって持ってきていた赤鬼馬が持っていた斧を顎で指す。
獣人やらの種族が使用できるとのことで持ってきていたのだが…まったくもってその大きさから人間に使えるものとは思えない。というか使えない。
かなりの重さのある小夜嵐を駆る力のあるカルロスですら引きずるのに…
「カルロスは私を一体なんだと思ってるんだ…。
そんなもの振り回せてたまるか…」
「そうか、もし使えるとしてもぜってえお前には渡さんがな。
術式使える奴がこれ使うぐらいなら、売って別の武器やらを買うのが得になるんだぜ。
赤鬼馬は神出鬼没で武器やらはレアなんだ…鬼だけに…って喧しいわ!」
一人で突っ込んでるカルロスであった。
しかしあの時に第二詠唱を行ってから体のだるさもとい緩みは解けそうにない。
不可思議な力で滑りが悪いというのは気味の悪いことだった。
こんな副作用があるならさっさと個字を見つけてしまうべきである。
とはいえ見つけるのは運にもよるので、果たして私は運がある機械なのだろうか。
───なんて、世迷言。
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「クエスト終了報告、承りました…赤鬼馬に遭遇するのは不運ですが、新米達が遭遇せずにベテランのいるあなた達のグループに当たって…まあ、不幸中の幸いでしょうか。
ありがとうございます」
口頭で終わった…けど。
相手側に確かめる方法とかはあるのだろうか…?単純に群犬のリーダーの生存が確認されればバレるけど、もし誰も確かめられないような依頼だったら果たしてどうするのだろうか。
そんなことをカルロスを小突いて質問してみると、どうやら信用がない新米術士だとかは討伐したモンスターの一部を剥ぎ取って提出したり、多少報酬から利用料が差し引かれるが『映し目』というスキルを持った人が確認するらしい。
そして初めて聞く『スキル』の存在。
……彼曰く当たり前すぎて忘れていたらしい。
知らないせいで何か問題を起こしてしまう前でよかったと安堵したが一発ごつんと頭突きしておいた。
スキルというのは皆が生まれもってもつ『生来スキル』と、後から何かの拍子で覚える『経験スキル』なるものがあるらしい。
しかし、生来スキルを持つ者はそれなりに多いが、経験スキルを持つ者はかなり限られるらしい。
ちなみに私のような遭難者は生来スキルは存在せず経験スキルが異世界に来たことで一つぐらいは付いているようだ。
「どうやって確認するのさ?」
「術士証の裏見てみ…おっと、見せたくなけりゃ見せなくていいぜ。
術士証は属性適解のある表側しか相手には見せないのが基本だ。
裏のスキルは不名誉なスキルもあったりするからな…それも自分のせいではないのに理不尽についたりするからな…」
「へー…属性適解すら私は見せたくないけど…」
そして私は術士証をポケットから取り出し、裏を見てみた。
そこに書かれていたのは、
『稀の遭難者:効果切れ』
…これは意味のないものだろう。
『泡沫の処刑者:術力吸収防護』
………私が殺したわけではないのだが…間接的にザイラニクスが殺したというか、ザイラニクスがいないと殺せてなかったというべきか。
なんにせよよくわからない効果…エネルギードレインの阻害みたいなものだろうか?
次が問題だった。
『ザイラニクスの友:術式陣の破壊・闇属性優遇』
これで私は裏面を見せることが一生できなくなってしまった。
何してくれてんだあのクソッタレダークボール。
てっきり言わなければバレないものかと思ったら術士証を盗まれたりすれば即バレるものになってしまった。
…とはいえ闇属性優遇はかなり良いものだ。
しかし術式陣の破壊はよく分からないものだった。いつか何かの拍子で知ることになるだろう。
こんなスキルが書いてあるということを一応心の中に閉まっておいた。
「では赤鬼馬の斧はこちらで現在のレートに合わせて買い取りましょうか?
それとも独自で何かに使用されるのでしょうか?」
スキルの会話になって放置されていた目つきの悪い受付嬢から切り出してきた。
「いいや、こいつはここで売っちまうぜ。
一部…そうだな、10000Rsは俺が受け取るけど残りはは預けてる金に追加してくれ」
金に関しては私は必要なもの以外は買わないし、口座を作るのが面倒だったのでカルロスの口座に私の分は全部突っ込んでもらうことにした。
「承りました。
では10000Rsです、お受取りください」
受付嬢はカウンターの横の金庫から銀色をした紙幣を10枚取り出し、カルロスへ渡した。
この世界は硬貨や紙幣がある世界の様だが、実際にその価値になるような素材が混ぜられた硬貨や紙幣のようらしい。
元の世界ではただの紙切れだったりしたので意外だった。
「どうする?今日の火の時間の仕事分は終わっちまったな。
暗の時間まで休むか?」
「そうだねぇー…ちょっと休みたいしそうするかな」
「……機械が休むとは」
彼は冗談めかしておどけて言う。
「第二詠唱してからおかしいの…私も変だと思うんだけど…」
それを聞くと彼の顔はまじめになる。
「ふうむ…それは術式の『リバウンド』だな。
使い慣れてない奴が高い詠唱をすっとその負荷がからだにのしかかるってもんだ。
あとは慣れてる奴でもイメージ不足や不適切な言葉だったりすると起こることがある。
それがあるうちはまだまだひよっこってこった。
今日初めてしたんだから当たり前なんだけどな…。
まあ気にするんじゃない、時期に消えるさ」
そんなものがあったのか。
疑問に思ったらすぐに聞くべきだと再確認した。
「うん…あの、休む前にさ、行きたいところがあるの」
「おっなんだ?言ってみろ」
「酒屋」
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「私酒に関しては全く詳しくないんだけどねー…。
というか美味しさなんてどうでもいい。
良く燃えるか、否か!」
私はそう宣言する。
「それは酒屋としては割りと悲しい言葉だねぇ…。
美味しく作ってるのに…。
………そだ、これ飲んでみな」
目の前の獣人…恐らくは元は犬だと思う…が、私にお酒の入ったコップを差し出す。
私は味覚は存在するが、燃料としかお酒は見ていないのだ。
たとえゲロマズでも余裕で飲み干せる…まずいのは苦手だけど。
「ん…分かった、飲むよ。」
コップを口につけ、一気に飲み干す。
「……!!美味しい!!!」
「だろう?
私だけでなく先祖代々作ってきた酒だ。
安くて旨い。これをモットーにしてるんだから不味いなんて言わせねえ」
そういう酒屋の店主はニコニコしていてとても嬉しそうだ。
ちなみにお世辞でなく本当に美味しかった。
元の世界の酒が粗悪すぎた…?
「おじさん…これ頂戴!樽で!」
「樽!?」
カルロスがぶっ倒れた。