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Number.05 初めてのクエスト

今度から22時あたりに固定して投稿しようと思います!

毎日の意義が薄れてしまわないように!

 私はカルロスの持つ小夜嵐という棒に引っかけられた状態でカウンターを覗く。


「出来たてほやほやの術士と一緒にできる依頼なんてないかい?

戦闘が出来るやつだと嬉しいんだが」


 無駄に良い笑顔でカウンターの受付嬢に話しかける。

 どうやらこの受付嬢、こちらに軽蔑臭い目を向けているよう…いや、これは単に目つきが悪い顔なのか?

 凛々しい顔といえばそれで済むのだがトラブルもありそうな目だな…と思った。

 心理学の機能をインストールしておけばよかった…博士達が嫌がるから入れなかったのだが若干後悔していた。

 無表情というものは一番何を考えているのか分かりにくい…泣いているけど嬉しい、とかの嘘つきな表情の方がよっぽどマシだった。

 うなー…と声にせず唸っていると、受付嬢はテキパキと書類を取り出し、その中から数枚を選んでカウンターに並べた。

 そつなくこなす姿は何度も何度も同じことを行って慣れているというのを知覚させ、安心感を与えるものだ。

 

「では、これらなどはいかがでしょうか。」


 そこには『はぐれオーガ一体の討伐』とか、『地下迷宮第二層の落し物捜索』とか、元の世界では見ることのないものばかり並んでいた。

 どれも依頼主が書かれており、しかも横に依頼主の評価も書いてあった。

 信頼できる依頼主を選べるということか。

 地下迷宮…所謂ダンジョンというものだろうか。


「ふーん…と、んじゃあこれでヨロシク」


 その中からカルロスは『群犬のリーダー討伐、もしくは撃退』を手にとった。

 群犬…先日に私が殺されかけたものだった…。

 あのまま噛まれても機械なので死にはしないが、帽子がなくなって電池切れになりかけたのは割りとトラウマ一歩手前であった。

 ゴムひもで首に通せば落とさなかっただろうが、如何せん子供っぽいので私は付けたくないのだ。


「承りました。手続きは済ませておきますので、よろしくお願いします」


「よしクライン、奇獣狩りに行くぞ!」


「あいよー…群犬を選んだのは昨日の私に対する何かでもあるのかい…?」


「へっそれもあるがな…単純に報酬が美味しいからだ。

それに群犬のリーダーは群犬より二段階ランクが上…つまりはDってこった。

それなりの難易度だし鍛えられると思うぞ」


 カルロスはカルロスなりに何か考えがあるようで。

 私にも反対することは特にないので従うことにした。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 サラミアンの街をでて、手入れされた道から獣道に移り二時間ほど経って、漸く目的の場所に到着した。

 私は浮いて移動しているので疲れないが、カルロスは歩いて移動しているのに全く疲れた素振りを見せなかった。

 しっかり鍛えている、ということもあるのだろうがきっとこの世界は人間も強くなっていく世界なのだろう。

 移動している間に何度か奇獣にであった…噛み兎という牙の発達した兎が襲ってきた。

 が、これらはカルロスが槍で突き刺して倒していた。

 カルロスのリュックサックに"刺さっていた"槍だが、どうやらこれはゴブリンに襲われた時にぶっ刺さっれた時のままの槍だったそうで、自分のものではないらしい。

 にしては上手く扱うので聞いてみたところ棒状なら何でも使えるそうだ。

 それなら確かに買った赤く重い棒…小夜嵐は良いチョイスと言えるのだろう。

 そして私は今のところ何もしていない。

 術式の行使はもちろん、武器での攻撃もしていない。

 完全にカルロスがこなしていたので少し申し訳なかった。


「さあてここだぞ…この森の最奥に群犬のリーダーがいるはずだ。

ここからは攻撃も激しくなるだろうしクラインもしっきり攻撃しろよ」


「もちろん頑張るよー」


 そう言って森に足を踏み込むとすぐに5匹ほどの群犬が出てきた。

 どうやら今まで倒してきた噛み兎の匂いが身体に染み付いてしまっておびき寄せている状態のようだ。

 唸っているが、すぐに飛びかかってくる様子はない…観察しているのかな?

 と、こんな時にいい閃きが思いついた。

 ハルバードの遊侠にカスケードステッキを押しあてて叫ぶ。


「カスケードステッキ、Number.10!!

その身に宿せ、『吸収』!」


 カスケードステッキから解析の光線が出て遊侠を囲み、そしてカスケードステッキは三つに別れてハルバードの刃の根本に一つ、そしてクリスタルにまるでブースターのような形で二つくっついた。

 本来はカスケードステッキを様々な銃に装着する際の機能だが、上手くいってくれた。

 そして続けざまにつぶやく。


「闇の術式、第七詠唱『吸切鬼』」


 呟いたのはザイラニクスの真似だが、詠唱は控えめでいく。

 聞いたところ術石は少しづつ術力を回復するようだが、もし切らしてしまったら一定時間回復に専念して使えなくなってしまうようだった。

 なので初心者の内は何度も使えるように低い詠唱を行使することにした…闇ならばどの詠唱でも違いは少ないのだけど、念の為だ。

 そしてこの術式は遊侠onカスケードステッキ…カスケード遊侠?の刃に闇が纏わりついていく。

 そして一番近い群犬へ突進する。

 群犬は突進してくる私に対して飛びかかって来たが、それを水平になぎ払う。

 飛びかかって来るということは、空中にいるということだ。

 私のような浮遊できるような能力がない限り、攻撃はかわせない。

 そして闇の術式の効果は『吸引』、近くの敵を近づけるのだ。

 なので刃の軌道が少しずれていても強引に切ることができる。

 そして群犬は無事上半身下半身で真っ二つになった。


「いい感じじゃないの!焔の術式、第六詠唱『紅花』!!」


 カルロスも術式を唱える。

 すると群犬の周りに焔の花が咲き始め、群犬はそれに怯えて下がり始める。


「飛びつけ!!」


 そうカルロスが叫ぶと、焔の花は一斉に群犬へと飛んでいき、群犬は哀れ爆発でボロ雑巾のようになってしまった。


「これで終いか…また俺がやっちまった。

でも一匹倒せたな!その調子だ!」


「あいさー!

……あれ?」


 森に踏み込んで大して距離は歩いていない。

 だけど、何やら大きな影が少し先で動いたのが見えた。

 もしかして、リーダーか?


「今何かいなかった?

大きな影のやつ…」


「俺は見えなかったな…確認しに行くぞ!」


 そう言って二人でその影が動いた場所へ走る(飛ぶ)。

 …そこには、群犬のリーダーはいなかった。

 代わりに真っ赤な鎧を全身に纏ったケンタウロスの様な…奇獣がいた。

 奇獣は私達の身長の二倍はある斧を持っていながら、それを軽々と扱っているようだ。

 奇獣の目は真っ直ぐこちらを見据えている。


「……ランクC、赤鬼馬。

ここらじゃ見ねえはずだぞクソッタレ!!」


「ランク…C…?

カルロス…倒せる?」


「………わからん!

実を言うと昨日サボる為にランクCを倒していたという言い訳作ろうとしてたが、それは傭兵を二人ぐらい雇ってパーティを作っての話だ。

二人だけじゃ…厳しいぞ」


「あはは…じゃあ出し惜しみ無しで頑張るか」


 そして、私が次の言葉を口にしようとした時だった。

 赤鬼馬は斧を振るい、なんと斬撃を飛ばしてきた。

 私でなくカルロスを狙った攻撃だったが、カルロスはその斬撃を棒で叩き割った。

 しかし、棒を持った腕に切り傷ができていた。


「…チッ!焔の術式、第五詠唱!!

『紅桜』!!!」


 カルロスの周りに焔の花びらが舞い、そしてカルロスは赤鬼馬へ突っ込んだ。

 私も攻撃をする。


「Number.02…『放出』!」


 カスケードステッキと合体したハルバードを跨ぎ、それはまるで魔法使いの箒へと姿を変える。

 そしてクリスタル側が後ろだが、その後ろについたパーツが勢い良く空気の放出を始め一気に加速する。

 一瞬で赤鬼馬との距離を詰めて、詠唱する。


「闇の術式、第五詠唱『矢射』!!」


 その詠唱で周りに小さな陣が複数展開し、中から闇の矢が勢い良く飛び出ていく。

 赤鬼馬のあちこちに被弾させていたが、鎧は貫けない。

 だが、逆に言うと鎧以外には刺すことができた。

 赤鬼馬は少しよろいだ。

 そのまま箒の加速を止めず、跨いだまま赤鬼馬にハルバードをぶっ刺す。

 それは鎧を貫通し、胴体にダメージを与えた。

 すかさずカルロスがそれに合わせて足に棒で連撃を加える。

 しかしこの化物はランクC。

 すぐに体制を立て直し、斧を私へ振るってきた。

 この瞬間を私は逃さない。


「闇の術式、第二詠唱!『因果鏡』!!」


 私と斧の間に鏡が出現する。

 そう、この鏡はザイラニクスが使用した『狂鏡』だ。

 正式名称が分からないのでイメージを膨らませた名前にして、個字で上がらない分詠唱を一段階上げて詠唱した。

 結果的に成功し、斧が鏡をぶち破る。

 その斧は赤鬼馬の首をいとも容易くはねた。

 辺に沢山の血が飛び散る。

 血の噴水のように首から血が噴き出しているのだ。


「おぉ…危なかった。

上手く詠唱出来たけど…第二詠唱すると…なんだろう、体がだるくなるな…」


 機械の体でだるいだなんて、また面白くもないギャグを…と思われるかもしれないけど、本当に調子が悪くなったのだ。

 関節の滑りが悪くなったというべきか。

 どうやら術力を自らが使用しないとはいえ、副作用の様なダメージが高度な詠唱では帰ってくるようだ。

 これを何度もやろうものならまともにハルバード…遊侠を持てなくなってしまう。

 詠唱には気をつける。


「すごいな…あっさり終わっちまった。

こんなんじゃ群犬のリーダー討伐なんてすぐ終わるな!」 


 なんと終わっていた。

 別に間違いではなく、群犬のリーダーは紛れもなく終わっていたのだ。

 首をはねられて。

 カルロスが言うには…というか予想するには、赤鬼馬に殺されたのだろう、とのことだった。

 奇獣同士では種類によっては争いが絶えないので、こういうこともあるそうだ。

 リーダーを倒す手間が省けてラッキーなのか、赤鬼馬にであってアンラッキーなのか。

 五分五分といったところか…いや、普通に不運だと思うのは私だけか。

 カルロスはというと、赤鬼馬討伐で追加報酬が貰えるようですそのことで喜んでいた…。

 やはり価値観の違いは面白い。


 二人並んで再度街へ向かってのんびりと、一人は歩いて、一人飛んでいった。

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