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Protocol Number.01 転生中

初めてのなろう投稿です。

拙い点があると思いますが、指摘は大歓迎です!

上達できるよう努力してまいります。

では、思考する機械の劇をお楽しみください。

「…………博士!!ここにいた筈のクラインはどこに行きました!?」


 若い男の声が薄暗い研究室に響き渡る。

 何かが居なくなって焦っているようだ。

 

「どうした助手よ……クラインなら私の隣で…いない!?」


 若い男に問われた老人は答えた。

 彼もまた驚愕する。


「ドアはロックされてて私達も出れない状態ですよ!?クラインちゃん消えてません!?」


「まあまあ、落ち着け助手よ、こういう時はのんびり待つのじゃ、果報は寝て待てというじゃろう」


 顔は汗まみれ、声は震えている。

 これはどう見ても…


「……本音言ってください」


「どこじゃあああああああああクライイイイイイイイイイン!!!!!」


 一人の老人の叫び声が虚しく、部屋を響き渡った。

 だが、彼らが探しているクラインは既にここにはいない。

 果たして彼らにクラインは再び会うことは出来るのでしょうか。

 ま、これも面白い出来事になると良いけど。

 クラインちゃんにはこっちで頑張ってもらわないとね、君には…


 この世界を助けてもらわないと。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 <SystemOnline>

 データベース起動。

 各部機能動作確認。

 多数の問題を感知。

 自動修復、不可能。

 Obj-K、■■■■起動。



 私は身体の痛みと共に目を覚ました。

 …目を開けると、そこは満天の星空だった。

 久しぶりにまともに空を見た気がする。

 …じゃない、そうじゃない。

 明らかにおかしいだろう、私はさっきまで…さっきまで…そうだ、博士とプログラムの検定勝負をしていたはずだ。

 なのにどうして外に私はいるのか。

 体を起こそうとする…が。


 起き上がれない。


「あれ?動かないな………声は出るのね。

…もしかして」


 手は問題なく動く。

 多少きしみがあるが、ダメージと呼べる傷は無かった。

 手が無かったらどうしよう…と思っていたがそんな手を焼くことはなかったようだ。


「手、だけに………」


 虚しい風が私を慰めてくれた。

 手を頭の上にあててようやく気がついた。


「帽子がない……」


 帽子がない。

 それがどうしたと普通の方なら思うだろうし、実際生活していて常に帽子を被ってないとダメ、なんて人は普通いないはずだ。

 ハゲの人はご愁傷様です。

 だが、私は違う。

 私には帽子は必需品なのだ。

 帽子に愛着があるとか、そういう意味ではない。

 確かにデザインは気に入っているが、そんな問題ではない。

 仮にその帽子のデザインがピエロの帽子だろうが私は被らなきゃならない。

 だって、私は。

 

 歩けないのだから。


 そんな私を助けてくれたのがあの帽子。

 あの帽子があれば。

 空をも飛べるだろう。

 実際飛べるのだが。

 そう、あの帽子は歩けない私を助けるために飛行能力が被ったものに付与されるマジックアイテムなのだ。

 実際には反重力システムによる魔法のかけらも無い科学の塊なのだけれども。

 そんな帽子が今、ない。

 もしかして近くにあるのかな、と思い当たりを見回す。

 そこで自分が今どのような状態で倒れているのかが分かった。

 自分は今、さながら小さな隕石が落下してきたかのようなクレーターのど真ん中で仰向けで倒れているのだ。

 

「えぇ……何があったのこれ…」


 どうしてこんなことになってしまったのか。

 昨日スパムメールを開いて助手のパソコンを廃棄させざるをえない状態にしたせいか。

 はたまた一昨日博士の発明品の山にお茶をこぼしてぶっ壊したのがまずかったか。

 もしかすると先週家のドアを躓いた拍子に掴んでドアと一緒に倒れて使い物にならなくさせてしまったのが悪かったか。

 ……いくらでもしてきた所業が思い浮かぶあたりさすが私と言えるだろう。

 ドジっ子。

 いや前半2つはわざとなのでその肩書は正しくない。

 言うならば悪戯好きだろうか。

 3つめはその天罰なのではないかと思っていたのだがもっと不運な目に私はあっている最中らしかった。

 話を戻そう。

 私は今現在クレーターでどこかの戦士のごとく倒れている。

 さて見回した時なにか見なかったか?

 …あった。

 帽子が足の裏に落ちていた。

 体を回転させて、それを取ろうと思った次の瞬間。

 

 帽子は哀れ空を飛んでいきました。


「うわあああああああああああ!!!待ってぇ!!!」


 頑張って這いずって追いかける。

 だけども帽子は私の声には耳をかさず、さっさとまるでこんな所には居たくないとでも言うように、クレーターから出ていってしまった。

 終わった…。

 私の人生はこんな終わり方をしてしまうのか。

 さようなら博士…助手…叶うことならまたいつか生まれ変わって会いましょう…。

 クレーターを這いずって出た所で私は帽子を再度見つける。

 そして私はさらなる危険に晒されていることを知る。

 

 「ぐるるるるる…」


 それは、野犬だった。

 野犬が数匹こちらを見つめている。

 いや、目をギラつかせているとの表現が正しいだろう。

 その目は明らかな敵意を込めていた。

 その内の一匹がさっき飛んでいった帽子をあろうことか被ってしまっている。

 どんなミラクルだよこんちくしょー!

 しかし待てよ。

 なぜアイツラは私を見つめているのだ?

 野犬をよく見てみると…その野犬はどれもやせ細っていた。


「あぁ、なるほど…私を食べたいわけか!

……嫌だ!!!来るな!!」


 私は完全にパニックになる。

 逃げられない。絶体絶命。

 野犬達は私に急に襲いかかるのではなく、じりじり距離を詰めてくる。

 そして時間が経つと、野犬は完全に私を包囲していた。

 その数は八匹。

 どれも私を食べようとウズウズしている、だが警戒しているようだ。

 

 その警戒は正しい。

 私は腰にかけていたステッキを手に取り、叫んだ。


 「カスケードステッキ!Number.01起動!」


 黒いただの棒でしかなかったそのステッキは、先端が光り輝き展開していく。

 

 「悶て苦しめ!『虚』!!」


 先端が展開し、まるでラッパのような形状になる。

 途端に、大きな機械音がステッキから鳴り響く。

 ラッパ口とは反対側から猛烈な風が吹き出す。

 そして、ラッパ口は何かを吸引し始めた。


「がるぅぅ!!!!」


 野犬達は危険を察知したのか、はたまた我慢の限界が来たのか私へ飛びかかった。

『それを待っていた。』

 

 飛びかかってきた野犬は一匹一匹、まるで電池がきれたかのように地面に突っ伏す。

 

 カスケードステッキは科学の力による魔法の杖。

 未完成なので出来ることは極わずかだが、その中の機能の一つを使用した。

 Number.01、虚。

 その効果は至極単純。

 一定範囲内の空気の中の酸素を吸引し、全て後方へ噴出することで範囲内の生物を窒息させる。

 魔法としてはえげつなさすぎる技である。

 科学では出来る魔法は限られているのだから…いつか瞬間移動とか出来るようになるのだろうか。


 「で、出来た…」


 ステッキは吸引・噴出をやめ、元の形へ戻っていく。

 ……あれ?

 やばい。

 あろうことか帽子を被っていた野犬は飛びかかっていなかった。

 この野犬はリーダー格だったようで、飛びかかるのが最後の予定だったが、仲間が次々に倒れていく為躊躇したのだろう。

 結果、生き残ることになった。

 対して私は大ピンチであった。

 カスケードステッキはその性質からかなりの電気を消費するので一回の使用のたびに一旦腰に戻して充電期間が必要なのだ。

 そして現在使用済み、充電はまだ。

 私の自衛武器はもう残っていない。

 どうか運良くこの野犬は私を脅威に思って逃げてくれないものか…。

 あ、だめだ。

 完全に狂った目をしている。

 仲間を殺された怒り、か。

 私には理解できたが同情はできなかった。

 

 野犬が私へ飛びかかる。

 やっぱりこんな所でおしまいだったのか…私は。


 その時。

 どすっ という鈍い音が響いた。

 

 私が野犬に噛まれた音…ではない。

 それは野犬を槍が貫いた音だった。

 槍を投げた主は、ただ笑った。

 

「ははっはははっ!夜の散歩で爆音が響いてその音の主を探してたらどうやら女の子を救っちまった!」


 なんだこいつ。

 

「……ありがとうございます」


 そいつはいかにも『冒険家』とでも言いたそうな奇抜な服装をしていた。

 背中にはどでかいリュックサックに野犬を貫いたのと同じいくつかの槍がぶっ刺さっていた。

 コスプレ野郎に私は救われたのか…?

 だけど救ったことには変わりないのでお礼は言った。

 

「いやいいってことよ!それよりも…お嬢さんは術式使いか?何でこんなところにいるんだ?

今術式使いは招集がかかっていたと思ったが」


 …これはとても面倒な奴に絡まれたのでは。

 面倒くさい…面倒くさい…。

 面倒な奴というよりは痛い奴か。

 ……私も魔法使いの格好をしているのだけれど。

 というか服装で術式使いって呼ばれたのかな…?

 そもそも術式ってなんだ。魔法じゃないのか。

 いや、それ以外に何があると言うんだ私よ。


「私はお嬢さんじゃなくてクライン、クラインでいいよ。

それに私は魔法使いの格好してるけど…言っちゃなんだけど科学による模倣よ。

というか招集って何?」


 私がそう言うと彼は心底呆れたような顔をする。


「……魔法?術式使いじゃないのか、それはまあいいとしてだ。

招集知らないってどうなのよ。明日は術式使い含めた冒険者に王国の感謝パーティが開かれる日だろうが。

バックレたりなんてしたら殺されるぞ…?」


 ……嫌な予感がする。

 もしかして私は夢を見ているのか。

 私が夢を見たことなんて今までなかったんだけど…。

 


 まさか。

 これは昔読んだ本にあった…いやあれはフィクションだったのだが…。

 いやいや、まだこの男が狂っている可能性の方が高い。


「…あの、あなたは?なんて言うのですか?」


 恐る恐る尋ねた。

 彼は意気揚々と答えた。


「俺は術士のフィクサー・カルロス。

カルロスって読んでくれ。

それでまあ見てろよ… 」


 そう言うと彼は右手の手のひらを空へ向け、叫んだ。


「焔の術式、第七詠唱!紅蓮華!!」


 彼の右手から、それは出た。

 勢い良く炎が飛び出して、それは5mほどまで伸びたところでとどまり、大きな球を形作った。

 

「発破ァ!!!」


 そしてその火球は爆発し、小さな火の粉…いや、炎の花びらをあたりに散らす。


「うわっわわっ!!」


 炎が肌に触れそうになり、慌てて払ったが熱くなく、また服に触れたのも燃えることはなかった。


「はっははっ!燃えねーよ心配するな!

俺はな、術士だが代々親から秘伝を受け継いだ花火師!こいつを世界で花開かせるのが俺の使命だ!」


 彼は自信満々に、そして楽しそうに笑ってそう言った。

 


 分かった…思い出した。

 これが異世界召喚ってやつだ…。

 私はやっと自分の置かれている状況を少しは理解できたのかもしれない。


 野犬まで這いずって落ちていた帽子を被る。

 そして、私は言った。

 どう生きていけばいいのか学ぶしかない。


「私をあなたの仲間にしてください!!」

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