部の創設 ⅳ
「…着いたよ、ここが僕が住んでる家。」彼に連れられてたどり着いたのは、まさに屋敷そのものだった。「…って全然普通じゃないじゃん!」知奈がそう言う。それは私も同意見だった。周りと見比べても、この建物は明らかに違う。完全にお屋敷だ。「そう?本家はもっとすごいよ。まあ僕もあまり行ったことはないんだけど。」「え?自分の家なのに?」私は思わずそう聞いてしまった。だって、自分の家にあまり行ったことがないなんておかしい。「さっきも言った通り、色々あるんだ。まあこの話はあとにするとして、とりあえず入ろう。」四条君はそう言うと、和風な門を開けて中に入る。私たちは「お邪魔します」と言って彼の後をついて行った。門をくぐると、松の木などがあちこちにあり、初めて来た私は子供のようにキョロキョロと辺りを見回して、それは隣の知奈も同じだった。
玄関を開けると、彼は「ただいま帰りました。」という普通は言わない挨拶をした。すると廊下の奥から綺麗な女性が出て来た。外見的に、私たちとそう年は離れていなそうだ。「お帰りなさい、玖遠君。あら、お友達?」「はい。僕、文学部に入ることになったんです。4人はその部員なんですが…」彼がこちらを向く。私と知奈はぺこりとと頭を下げて、名前を言って挨拶をした。「私はここの家の長女の佳奈です。よろしくね。」その女性は私たちに優しく微笑んだ。「そしてその後ろの2人が…」彼がそういうと、2人は私たちの後ろからヒョコッと出て来た。「ああ!来貴君と梓紗ちゃん!久しぶりね。」「はい、お久しぶりです。」「…ども。」「ふふっ。2人がいると昔を思い出すわね。どうぞみなさん、ごゆっくり。」佳奈さんはそう言うと先程のように微笑み、戻って行った。「とりあえず、上がって。」
「ここが僕の部屋。適当にゆっくりしてて。あ、来貴はダメだよ。飲み物とか運ぶから、手伝って。」「あ、ごめんね。ありがとう」「いえいえ。来貴行くよ。」「へーへー」2人は部屋を出て、リビングに向かった。「私、男の子の部屋とか初めてかも。」「私も。まさか初めてが四条君のお部屋とは」「私もここ以外はあまりないなー。あとは来貴のとこくらいかな」「3人とも仲良いんだね。」「んー。まあ小さい時から一緒だし。昔と違うのは、来貴が不良なこととか…あとはー………」そう言いかけたところで、梓紗は黙ってしまった。「………あのね、このあと多分、玖遠から話があると思うんだけど。実は…「お待たせ。」梓紗が何かを言おうとしたところで、2人が帰って来た。「…………梓紗。コイツも話すつもりでいるから、大丈夫だ。」駆堂が梓紗を諭すように言う。私たちは何の話をしているかまるで分からなかったが、とても大切な話であることは分かった。「んー。最初にこの話しないといけない感じだね。大丈夫だよ梓紗。来貴もありがとう。……伊藤さんと黒田さんには知っておいて欲しいことなんだ。これから一緒に活動して行くわけだしね。…まず、僕には母と双子の兄が居たんだけど、8年前に亡くなってるんだ。交通事故で。僕もその交通事故に巻き込まれて、僕だけが助かったんだけど…その影響で、僕は事故以前の記憶がないんだ。」