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シャルルループ

「よぉ、貴族様。ご機嫌麗しゅうございます。……って言うのは別れの挨拶だったか? まぁ、どちらでも良い。要は気分はどうだ?って事だ」

 アルデハイドは鎖で椅子に括り付けれているボロボロの衣服を着た少女を見下ろして言った。

 しかし少女は何も答えない。

 そのままアルデハイドは焼き焦がれた部屋を見渡して続けた。

「お前の部屋の本に興味深い物がいくつかあってな。度々お邪魔させて貰って居たんだが……見て分かるように綺麗さっぱり焼けてしまったみたいなんだ。わざわざお前を救い出してやった理由はもう分かるな?」

 そこで初めて少女は言葉を発した。

「何の本を見たのかは知らないけど、要は知識が欲しいのね。抵抗しないから、この鎖を解いて」

「話が早くて助かるぜ」

 アルデハイドは少女の背に回ると、少女を縛り付ける鎖を外す。

 そうして解放された少女は自前の傷んでしまった長く黒い髪に手を通して言った。

「まぁ、あんな場所で一生肉体労働させられるより、あなた達に助言している方がよっぽど良いわ。……だけど、それにしても気になる事が一点」

「なんだ?」

 黒髪少女は部屋の入り口で様子を伺っている夢見を指差す。

「あなた……ハルシオンって言う子と似てるけど、もしかして姉妹か何か?」

 その問いに答えたのはアルデハイドだった。

「ご名答。と、まぁ早速だが聞きたい事がある」

「……まぁ答えられる事であれば」

「魂に関して。何でも良い。魂にさえ関していれば魔法でも道具でも薬でも……洗いざらい教えてくれ」

「……あぁ、そう言う事。もしかしてオレゴンって言う子について知りたいの?」

「まぁ、そいつも関係者と言えば関係者だが、それだけじゃない」

「ふーん。まぁ良いわ。長くなるけど覚悟してね」








 それから黒髪少女から長い時間を掛けて情報を聞き出したが、結局アルデハイドが出来る事は無かった。

 しかし分かった事はある。

「要は、このままジョーカーを好きにさせているとオレゴンとレムの命が危ないって事だな」

「えぇ、そうなるわね」

「だとしたら止める術は無いな。ジョーカー相手に戦った所で、結果は見えている。うーん、どうしたものか」

 アルデハイドは壁に持たれ掛けて肩をすくめる。

 ジャックも夢見もその場で黙り込むのみ。提案の一つも出なかった。

 そうして長い沈黙が訪れる。そしてその沈黙を破ったのは、アルデハイドでも黒髪少女でもジャックでも夢見でも無かった。

 唐突な爆音と共に、屋敷が揺れる。

 それだけでボロボロの屋敷は破壊されてしまいそうな勢いだった。

「な、なんだ!?」

 アルデハイドが割れた窓から外を眺めて叫ぶ。

 皆が一斉に視線を追い掛けるとそこには、想像を絶する大きさの渦が巻き上がっていた。

 その竜巻はその色を黒く染め、誰が見ても危険な物にしか見えない。そもそもこれほどの距離がありながら、肉眼でその竜巻を捉えられる事が異常だった。

「なに……あれー……。禍々しい渦……。オレゴン君がジョーカーと接触したと言う事?」

 夢見の問いに頷くアルデハイド。そしてその手に箒を出現させて返す。

「だとすれば次はレムが危ない。もしかしたらオレゴンよりも先に……。ひとまず様子を見に行くぞ」

 そして黒髪少女を指差して続けた。

「お前! 名前は?」

「……シャルルループ」

「そうか。じゃあ長いからシャルルな! お前も来て貰うぞ」

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