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死屍累々

「やはり夢は夢だったな。現実のお前は俺が思っていたより、俺を理解していてくれた」


「なーにくさい事しれっと言ってるんですかー。そんなの当たり前ですよー。私はリーダーの事良く分かっているんですよー」


 歩くオレゴンの背後で笑みを浮かべてそう言ったハルシオン。

 老人に礼をして二人は今、ナンバー5の指定した街の中心部へ向かっていた。レムはオレゴンに通信機を渡したきり、姿を消しており、また行方をくらませている。

 日は完全に昇りきった後で下りつつあった。


「そう言えば街の中心部だと言ってましたねー。そこに何かあるんですかー?」


「大規模な混成魔法を展開中だと言っていた。魔法が完成するまでの防衛が俺たちの仕事だ。次は失敗は許されないぞ」


 それから二人はしばらく移動して街の中心部だと思わしき場所に辿り着いた。

 そこは広場のようになっていて、普段は公園としての機能だけでなく、貴族によるイベント事にも使用される場所だった。時には和気藹々として賑わったこの場所だが、今はあちこちに死体が転がり、整備された道の脇の木々にも死体がぶら下がっている。

 オレゴンとハルシオンにはこの広場が公園やイベント事が行われる場所とはとても思えなかった。


「これはー……死屍累々ですねー。服装を見る限り、倒れている人たちは堕落者さんたちですかねー?」


 オレゴンは唾を呑んで頷く。

 そんな二人に息を切らしながら声をかける者が居た。


「君たち、名は?」


 その暗い声の男性の服装から、オレゴンはこの場を仕切る指揮官と判断した。


「オレゴンとハルシオンです」


「やはりそうか。話は聞いている。ここの防衛に当たってくれるのだろう?」 


「はい、そうです。しかし既に死体があちこちに転がっているみたいですが?」


「そうなんだ。ここは混成魔法を展開するに十分な広さがあってここ選んだのだが、既に堕落者たちが占領していてね。さっきそれが片付いた所なんだ」


「なるほど。では僕たちが相手をするのも堕落者ですか?」


「それがね……」


 男性がそこまで言ったと同時に、どこかで太い悲鳴が上がった。

 三人は悲鳴が上がった方へ視線を向ける。

 するとそこには悲鳴を上げたと思われる男性が地面に倒れ込み、その傍らで襲来者と思わしき人物がこちらを睨んでいた。


「あれはー……ハーシャッドの屋敷のメイド服……!」


 真っ先にそう言ったのはハルシオンだった。

 そしてメイド服を来た女性が三人を目掛けて駆け出す。


「来るぞ!」


 指揮官がそう言い終える前にハルシオンは駆け出していた。

 対して女性は手に持っているナイフをハルシオンとすれ違い様に払う。 

 それをハルシオンは走りながらも屈んで回避し、そのまま足払いをして女性を転ばせた。

 盛大に地面を転がる女性。ハルシオンはその女性が立ち上がる前に、釘を顔の目前に打ち立てて言った。


「ハーシャッドさんの命令で動いているのですかー? そこにあなたの同意があってあなたが好きでしているのですかー? まさかと思いますが脅されて無理矢理していたりしてないですよねー?」


 女性は何も答えなかった。ただ涙を流して立ち上がりナイフを払う。

 女性の表情と行動の矛盾に、理解が追い付かないハルシオンへその様子を見ていた指揮官が言った。


「そいつに何を言っても無駄だよ。完全に操られている。涙を流したのは意外だったが……もう彼女の意思で体を動かすのは不可能だろう」


 そこで指揮官は剣を持って駆け出すと、ハルシオンを睨んで気を取られる女性に急接近し額に剣を突き刺した。

 ハルシオンがその事に驚いている間に、額から血を吹いて地面に倒れて行く女性。指揮官は剣を抜き、開きっぱなしの女性の瞼を閉じて続けた。


「だから僕に出来るのはせめて苦しまずに逝かせてやる事だ」


 ハルシオンは目前に転がる女性の持っていたナイフを拾い、それを見つめながら悲しそうに言った。


「付き合いが長い訳ではありませんでしたけどー、かつての同僚のこんな姿を見るのはあまり良い気分じゃありませんねー」


「辛いと思うがこれが今回の任務だ。君たちはこのまま、ここの防衛を務めてくれ。これ以上中央に敵を進めないでくれよ。ここが最後の砦だ」


 指揮官はそう言うと中央へ向かって走り、この場を去って行った。そして次々に現れるメイド服の撃退にオレゴン達は当たる。

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