最終決戦へ
オレゴンは再び目を覚ます。
重たい頭を回して隣を確認すると、ハルシオンが手を繋いで並んで寝転んでいた。
「おはようございます。リーダー」
目を閉じたままのハルシオンはそのまま続ける。
「安心してください。もう夢じゃないですよー」
思わず跳ね起きるオレゴンを、追いかけるように起きるハルシオンは胸元に優しく抱き寄せて静止させる。
「大丈夫ですよー。呪いを半分背負ってくれたからか伝わってくるんです。怖い夢見てたんですよね。もう大丈夫です。微睡が保証します」
「……俺には分からない。夢なのか現実なのか。どうしたら良いのかも分からない」
「私を信じて」
「無理だ。だってお前は……」
そこで言葉を失うオレゴンにハルシオンは頭を撫ぜながら言った。
「私がどうかしましたか? 私はちゃんとここに居ますよ。私はリーダーの良く知る微睡ハルシオンですよー」
オレゴンの強張る体から力が抜けていく。そして思わず涙を流すオレゴン。
「悪夢を見ていた……」
「分かってますよー。辛かったんですよねー、怖かったんですよねー」
ハルシオンが強くオレゴンを抱きしめた。
そこでしばらく無言でハルシオンに抱かれているオレゴンだったが、少しずつ現実に戻り自分の置かれている状況を理解する。
「ちょっと待て。ハルシオン」
顔を赤くするオレゴンはハルシオンの両肩を持って引き離すように距離を取る。
するとそこには同じく顔を赤くするハルシオンが居た。
「わ、私だって恥ずかしいんですからねー」
人差し指と人差し指を胸の前で遊ばせるハルシオンはオレゴンから視線を逸らしながら言った。
そこへ部屋に入ってきたレムが咳払いをする。
慌てて距離を置くオレゴンとハルシオン。
「お目覚めですか。あなたの通信機がずっと鳴っていましたよ」
そう言って通信機をオレゴンに渡す。
すると場が悪いのかレムはそそくさと部屋を後にした。
オレゴンが急いで通信機を確認する。
「ナンバー5からだ……」
オレゴンがそう言い終える同時に通信機が鳴った。
慌ててオレゴンが通話に出ると、ナンバー5の声が部屋に響き渡る。
『また遅い応答ですね。これはかなりの数の貴族を救ったのだと判断しても良いのですね?』
「そ、それが」
『失敗したと?』
「す、すまない」
『……役立たずめ。と言いたい所ですがあなた方に新たなチャンスを設けようではありませんか』
「な、なんだ。俺達に出来る事ならなんでも」
ナンバー5はそこで大きく息を吸うと流れる様に言った。
『今回の戦争の主導権を握っている者。お伝えしましたがまたハーシャッドなのですよ。そして彼が面倒事を起こすのは初めてでは無い。さすがに鬱陶しい。そこで私たちは今回、全面的にその戦いを受けて立とうと思いましてね。それもナンバー2の組織との同盟を組んで。そしてあなた達にも参加して頂きたいと思ってご連絡したのですよ。分かりましたか?』
「わ、分かった。了解した」
『良い返事が聞けて結構。ではそこから街の中心部へ向かいなさい。最終決戦ですよ。ハーシャッドに終止符を打つのです』




