forced『断行』
同時刻、中心部。
「おやおや。中々解決しないなー思って直接私が出向いてみれば……まさか自由の身になっていたとは思いもしませんでしたよ」
ナンバー5は火の海と化す広場で、舞い上がる火の粉を手で払いのけながらそう言った。
対して前に立つ全身を黒いコートで包んだ謎の人物はフードを深く被ったまま何も答えない。
「私を前にしてただ茫然と立ち尽くすだけとは……。生意気だよ、お前……!」
ナンバー5が両手を広げるだけで周囲の火の粉は吹き飛ばれ、謎の人物のフードも脱がされた。
「こんな所で何をしているのですか? ハーシャッドさん」
「変だな。この空間には何か違和感がある。お前は何者だ?」
「何を訳の分からない事を」
ナンバー5が駆け出す。
そして拳を顔に振り払うが、ハーシャッドはそれをいとも簡単に回避した。
それだけの事に動揺を隠せないナンバー5。
「避けた……? なぜだ。かわせるはずもない……お前如きが」
ナンバー5はそのまま飛び上がり、ハーシャッドの顔目掛けて回し蹴りをする。が、ハーシャッドは足を容易に受け止め、ナンバー5を近くの建物へ投げ飛ばした。
すると建物は積み木のおもちゃの様に崩れ、ナンバー5を瓦礫の中に埋めてしまう。
「かっ!!」
しかしナンバー5の掛け声と共に瓦礫は吹き飛ばされ、ナンバー5はそのまま走り抜けハーシャッドへ近付いて行く。
「liberate『デヴァステイト』」
魔法を唱えて走るナンバー5の背後に現れた魔法陣から大量の鎖が放出され、甲高くて激しい音を鳴らしながら建物や木々に巻き付いて行く。
そしてナンバー5はそのうちの一本を掴み取ると、空中へ引き上げられ、手の平から地上に居るハーシャッドへ向けてまたもや大量の鎖が放出された。
対してハーシャッドは雨の様に襲い来る最初の鎖を少し体を揺らす程度で回避し、行き場を無くした鎖は地面に突き刺さった。
また次に来る鎖も立て続けに回避し、ハーシャッドは鎖に囲まれながらも無傷でその場に立っている。
「これも駄目ですか。ではこれはどうでしょうか……! 私の魔法の二段階目ですよ」
ナンバー5はそう言いながら空中から地上に降り立った。その勢いで地面は割れ、瓦礫が浮き上がる。
そして間髪入れずに、今度は空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから大量の石柱が降り注いだ。
同じく柱が地面に衝突するたびに、地面が激しく割れ、砕けた柱と地面の残骸が踊るように舞う。
「forced『断行』」
さすがに魔法を使わないと防げないと判断したのか、ハーシャッドが魔法名を呟くとハーシャッド自身から弱い衝撃波が発せられ、それが鎖や石柱に触れると、あろう事かそれらがぼろぼろと音を立てて崩れていく。
しかしナンバー5は取り乱す事も無く、冷静に言った。
「その魔法どこかで……」




