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ハルシオンの体質

「ナンバー5。どういうつもり……? こっちは高い金を払ってあなたの組織に依頼したのよ? ハーシャッドの拘束が依頼内容のはずよね?」


 包帯に包まれ、怪我が完全に癒えていない黒髪少女が静かに怒りを露にする。


「申し訳ございませんね。報酬金はお支払頂かなくとも結構ですよ」


 椅子にだらしなくもたれ掛るナンバー5の誠意の無い対応に、黒髪少女は怒りをより表情に現した。


「な……! そんなの納得出来ないわ……! 前払いだけで私の全財産の五割なのよ?!」


「しかし契約内容に同意したのはあなたではありませんか。それに結果は同じですよ。彼は今頃何者かに拘束されてますよ? こちらで拘束しても同じ事。半額返ってきただけでも良かったではありませんか」


「ふざけないでよ……? これじゃ私の汚名は晴らせないわ……」


「汚名……? 知ってますよ。少年少女に心無い殺戮を行わせたとか」


 ナンバー5は高い声をより高くして言った。


「それはハーシャッドの策略よ……。私は罪を擦り付けられただけ」


「これは極秘情報なのですが、その殺し合いは、確か領地の奪い合いの為に行わせたと聞いてますよ」


「なんでそんな事まで……!」


「それもあなたがハーシャッドの所有する領地に手を出したとか……。これだとただの逆恨みではありませんか。因果応報自業自得ですよ」


「……」


「話は済みましたか? でしたらハルシオンと言う子にここに来るように伝えてください」


「これで済むと思わないでよね」


 黒髪少女が部屋を後にする。

 そしてしばらくしてから扉がノックされた。


「どうぞ」


 ナンバー5の返事に、扉を開けて入ってきたのはハルシオンだった。


「あのー、何かご用ですかー?」


「わざわざすみませんねぇ。あなたに一つ忠告して差し上げようと思って」


「なんですかー?」


「薬。おやめなさい」


「え……? 薬?」


「えぇ、あなた最近眠れないでしょう。薬の効果ですよ、それ。まぁもっとも眠れないと言っても並の人間程には眠れているんだけどね。それでもあなたにしては睡眠が浅すぎる。あなたは本来もっと眠るべきだ」


「何だーそんな事かー。てっきり実は毒だったんじゃないかと思いましたよー。だったら良いじゃないですかー別にー。活動時間が増えますしー、強くなれますしー。わざわざ寝なくても良いのに眠らなくてもー。それにしてもなんで私が良く寝るって知ってるんですかー? 食堂でも会いましたし、ストーカーさんですかー?」


「そんな事、私ほどになれば一目見れば分かりますよ。あのハーシャッドですらもその事に目を付けていたのですから。けど、まぁ、好きにすれば良いでしょう。あなたがどうなろうと私が知った事ではありませんしねぇ。では出て行ってくださいな」


 ナンバー5は扉を見て言った。


「目を付けてた? どういう意味ですかー?」


「話せば長くなるんですよ。長話は嫌いです、私は。あなたの為にそこまでサービスするつもりはありませんので、どうぞ速やかに出て行きなさい」


 ナンバー5がさらに扉を指差して言ったのに対し、ハルシオンは近くのソファに倒れ込んだ。


「……おやおやどういうつもりですか?」


 机を指で叩くナンバー5。

 ハルシオンはソファに顔を埋めて答えた。


「教えてくださいよー。一目見たら分かるんですよねー。私実は気になってたんだよー? なぜこんな体質なのか。それともさっきのは虚言ですかー?」


「うるさいですよ。情報が欲しければ金を持ってきなさい」


 ちらちらとナンバー5の顔を覗き見るハルシオンを半ば無視するように言った。

 対してハルシオンは仰向きになって欠伸をする。


「あ、眠くなってきたかも……」


 その様子にナンバー5は呆れて言った。


「私にそんな態度を取ったのはあなたが初めてですよ。情けない事にどう対応したら良いのか……」


「眠れば良いと思うよー。一緒に寝ますか? あ、変な意味ではありませんよー」


 既に睡魔に負けかけているハルシオンは滑舌を悪くして続ける。


「私、どうなるんだろー。指名手配されてる人みたいな生活送るしかないのかな……」


「興味ありませんね」


「リーダーはなんであなたと一緒に居たんですかー?」


「さぁ? 誰の事を言ってるのかは分かりませんが、三人ほど知らない者がついて来ましたねぇ。まったくこっちが聞きたいですよ。あの女に弱みでも握られているんじゃないですか」


「ナンバー5さんって意外と優しいんですねー……。無駄話に……付き合って……」


 ハルシオンはそこまで言うと、睡魔に完敗したのか、だらしなく眠り込んだ。

 ナンバー5は携帯電話を取り出すと、誰かと会話を始める。


「……もしもし私ですが? えぇ、迎えの者をよこしなさい。あ、それと、メガネへここに来るように伝えてください」


 ナンバー5は携帯電話をポケットにしまうと、独り言を呟いた。


「これがあの女の妹ですか。似ているのは身形みなりだけですね。あれほどの男がどうして固執するのか。理解に苦しみますよ」


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