堕落者退治と少女の思い
どこにでも居る少し優等生くらいの少年と少女が色んな事件とかに巻き込まれていくお話です。
瓦礫が散らかる廃墟ビルで、少女の声が響き渡る。
「ふぁーあ。さてさて、そろそろ終わりにしましょうよ~」
その少女は大きな欠伸を浮かべながらそう言うと、目前で腰を抜かして後退りをする男に槍を向けながらじりじりと歩み寄っていく。
「馬鹿にするなよ! 女子供はひっこんでろ!」
男は素早く立ち上がると、手に持っている剣を少女へ向け、投射する。そして少女がそれを槍で弾いている隙に、男はそのまま奥へ走り抜け、逃げて行った。
その様子を少女は虚ろな瞳で眺めていると、その少女の背後から少年の声がする。
「苦戦しているじゃないか」
「前に言ったでしょー。私は体質のせいで、人より寝ないと行けないんですー」
「そう言えばそうだったか」
「いわゆる病弱体質なんですよ、私は。だから無理させて、もしもの事があればリーダーの責任ですよー? それと『堕落者』さんだって『堕落者』さんなりの事情があるんです。完全に黒と判断できるまでは優しくしましょうよ。じゃないと眼鏡割りますよ」
「お前……それが上司に向かって言う台詞か。……まぁいい。だったらこの件は引き続きお前に委ねてやろう。だが、あくまでもお前が無傷の状態を維持できたらだがな」
少女は「はーい」と返事してすぐに「対して順位変わらないじゃん」と小言を零すと、駆け足にこの場を去って行った。
少年は腕を組みながらその後をゆっくりと追いかける。
「さてさて、追いつきましたよー」
少女は部屋の端に追い込まれた男に槍を向けながら、欠伸をしつつ言った。
それに対して男は両手を上げ、わずかに残された壁までの距離を後退りしながら返事をする。
「まぁ、待て。ここは話し合おうではないか。俺にも色々と事情があったんだ」
「初めから言ってるじゃないですか~。あなたが大人しくしてくれれば手荒な真似はしないと」
「実はだな……。実はだな……」
男はそこで口籠ると、壁に仕組まれていたスイッチを背中で静かに押した。すると今まさに少女が通り抜けた部屋の扉がスライドして自動でしまり、鍵がかかった。
少女は思わず背後を確認する。少年とも別れてしまった。今も少年が扉を叩く音が聞こえる。そして改めて男を確認すると、どこかに隠し持っていたのか、拳銃を少女に向けていた。
「……残念。お前はまんまと罠にかかったんだよ。この部屋には電気が流れている。そしてもしもの時に銃も隠してあった。さらに言うと女一人ぐらいなら俺一人でも十分だって事だ。眠気は覚めたかい? お嬢ちゃん」
「手荒な真似したくないんだけどな~……。ほんとに大人しく降参してくれないですかー?」
「まだ勘違いしてやがるぜ。降参するのはむしろお前の方だ。大人しくさせてやろうか?」
男は少女の足目掛けて発砲する。そしてその銃弾は少女のスカートから見える太腿をかすめていった。唐突に走る痛みに思わず、少女は足を抱えその場にしゃがみ込んでしまう。
そして少女は慌てて視線を男へ戻す。すると目の前では男が少女の額に銃口を宛がっていた。
「魔法でも使うか? 魔法使いさんよ」
「あぁ、使うさ」
そう言ったのはさっき別れてしまった少年だった。男は思わず背後を確認する。すると同時に、男の額を一発の銃弾が貫いた。
「結局『堕落者』は堕落した者。まともな奴なんていねぇのさ」
少年は座り込む少女の頬に付いた返り血をハンカチで拭き取りながら言った。
「なんで?」
「ん? 簡単な事だ。俺は壁を透き通れる魔法を持っている。それだけの事だ」
「そうじゃない。そっちじゃない。なんでこの男を殺したのですか?」
「それは……」
そこで少年は言葉を濁らせると、少し呆れたように言った。
「お前……馬鹿か? 馬鹿なのか? こいつは殺人までも平気で犯すまでになってしまった『堕落者』グループの一員だ。仮にこいつが殺人を犯して無かったとしても、悪事を働く組織に属している、それだけで重罪だ。生かしておいた所で社会的な死は免れないだろう。それに俺たちは、お偉いさんがそのグループを壊滅させた後の残党狩りが仕事だ。抵抗する場合、殺める事も許されている。それが俺たちの仕事なんだ。だから俺も仕方なく……だ」
「……でも、どうにかならないのですか?」
「だったらあの時、お前が死にたかったか?」
少女は何も言い返せなかった。
少年は拭き終えたハンカチをポケットへしまうと、立ち上がり言った。
「俺たちの仕事はしまいだ。帰ろうか」
遅い!くどい!とならないように出来るだけサクサクと読めるように早い展開で書いていきます。
逆に駆け足過ぎてるかもしれません……
一話一話は短いのでお暇な時にでも暇つぶしに浸かってください。