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貴族の会合

「会合と聞いていたけれど、意外とかしこまった所じゃ無かったですねー」


「まぁ貴族ってそんなもんだ。それに会合はパーティと言う意味も含むだろう? そんな事よりもうすぐ主の挨拶だぞ。怪しい奴が居ないか良く見張ってくれよ」


 白いクロスが被せられた丸テーブルに、それを囲うように配置された椅子。それらが無数に収まるほどに大きな会場で、ハルシオンとアルデハイドは壁に沿うように並ばされていた。

 その二人の横には、他の貴族のメイドや執事が同じく並んでおり、その列の前にはまるで階級の違いを分からせるかのようにロープが張られている。


「所でメイド長さんはどこに行ったのですかねー?」


「あぁ、メイド長はこのタイミングになるといっつもいないなー。裏方の仕事でもしているのだろう」


 二人の前には丁度、丸テーブルがあり、小太りの家族が楽しそうに食事を取っている。

 ハルシオンはその様子を気だるそうに眺めて居ると、偉そうにふんぞり返っている中年の男性と目があった。


「えー」


 どう言う訳か、その男はハルシオンの事を凝視している。それに耐えかねたハルシオンが思わず小声を漏らした。

 それから男はわざとらしく咳払いをして、大きな声で言う。


「まったく。上流貴族の集いだと言うのに、あんな小汚いメイドを連れてきたのはどいつだ? 不愉快だ、席を変えて貰うか」


 男は立ち上がり、「おーい」と声を荒げホールスタッフを呼び出す。

 そのあからさまなご立腹な態度に、スタッフが慌てて駆け寄った。


「どこのメイドか知らんが、あの小汚いメイドをどうにかしてくれ。せっかくの楽しい食事が台無しだ。さっきからこっちをずっと見てきやがる。この俺を見世物みせものか何かだと思っているのかね? 奴をどうにか出来んなら席を移して貰おうか」


 男は背後に立っているハルシオンに、肩越しに指差して、訴える。

 ホールスタッフはそれに対して、深々と頭を下げると、すぐにハルシオンの元に駆け寄り、小さな声でそれでありながら強く言った。


「おい、頼むからメイドの分際で面倒事を起こさんでくれ。分かったな?」


「とー言われましたも、私は何もしてないですよー?」


 ハルシオンは眉間にしわを寄せ、あからさまに反抗的に返事をする。

 その様子を見ていた中年の男は、どうやらハルシオンのその態度が余計に腹が立ったのか、ホールスタッフを押しのけ、ハルシオンに接近した。


「貴様。その態度はどう言うつもりだ?」


 男がハルシオンの首を掴む。

 周りの貴族やメイドたちこそこちらを見ているが、騒がしいこの空間なだけにそれ以外の人はそこまで関心をしめしていない。それが男を踏みとどまらせる事無く、大胆な行動に移させたのだろう。

 そんな中、冷徹な声で一人の女性が割り込んできた。


「何か問題でも?」


 男、アルデハイド、ハルシオン、皆が一斉に視線をそちらに向ける。

 メイド長だった。

 そして咳払いをして会話を続ける。


わたくしの配下のメイドが何かご迷惑をお掛けしましたでしょうか? とは言え例え、貴族様であっても野蛮な行為とみなされた場合は、正当防衛が許されてますが、どうか先にその手を下げて頂けないでしょうか?」


 男は両手を腰に当て、メイド長を覗き込む。


「正当防衛だとぉ? 小汚いメイドの上司はやっぱり小汚いばばぁか」


「あらあら。小汚いとはこれはこれは失礼致しました。貴族様はさぞご立派な容姿をお持ちで。息子様も良く似て福与ふくよかにお育ちなられて、それはそれはもう大変。蛙の子は蛙の子で御座いますわね。それでは私は仕事が詰まっておりますのでこれで失礼致します」


 メイド長は頭を下げて、視線をハルシオンたちに向けると言った。


「さぁ、行きましょうか」


 この場を去ろうとするメイド長に、ハルシオンとアルデハイドは付いて行く。

 そのアルデハイドが陽気な口笛が吹く中、中年の男は逃がさまいとメイド長の肩を掴もうとするが、その瞬間、三人の姿が消え、中年の男は転んでしまう。

 あまりに突然な事に目を丸くして周囲を見渡す男。その様子に周囲の貴族が苦笑いを浮かべていた。


「くそ、ただで済むと思うなよ……」

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