表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生失敗談  作者: ゆゆ
はじまり
4/29

スタートに戻って、はじめてみよう

「雅~。良かった~。私のせいで雅が死んだらどうしようかと思ったよ~。」


 紗枝は私の顔を見ると泣き出した。昨日の夜は私が死んだ夢を見て眠れなかったらしい。

 しかしこの病室、個室でソファまである高そうな部屋だ。

 で、そのソファに見慣れた男が二人向かい合って座っている。


「紗枝。大丈夫だよ。椎名さんはトラックとはかすりもしてなかったじゃないか。颯に抱きしめられて眠りこけてだけだよ。」


 っくっくっく。と笑いながら藤原一臣は言う。


 そう、私を助けてくれたのは、五十嵐颯也。この病院、五十嵐総合病院の三番目の息子で、王国生徒会の書記だ。

 しかもあの時、私を抱きかかえる形で助けてくれたのは、五十嵐颯也。トラックと私の間に入る形で。トラックは五十嵐颯也にすら当たらなかった。らしい。で、私はトラックにひかれたと思い気絶したみたい、です。


「でもなんで颯ちゃんはあんな格好してたの?」

「あぁ、アレね。罰ゲーム。あの格好で外まで買い出し行けって、コウがね。」


 藤原一臣がコウと呼ぶのは、王国生徒会の会長さまだ。私達聖女の役員にはとても優しい人だが、王国では恐怖政治だとか独裁体制だとか言われている。主に部費が認めてもらえない部活動の人達に。部費が欲しければ結果を出せが皇帝命令だとか。


「颯ちゃん、美人だった」


 紗枝が拗ねた声で頬を膨らまして五十嵐颯也を可愛く睨む。

 あー、紗枝可愛い。けして私は女の子が好きなわけではありません。

 紗枝は身長も152㎝でちまってしていて、髪もゆるふわのくせ毛で、笑うと右頬にだけえくぼができる。

 私服もピンク色とかひらひら、ふわふわが多くて、似合うのだ。正確はかなり腹黒くあざとい天然だ。素で腹黒く発言をする。女の子に嫌われるタイプ、というか小学校時代はイジメられていた。本人は気にしていなかったようだが、寧ろ煽っていたかも…。あれ?紗枝、可愛いよね?


「そうか、あの筋肉質な胸なし美人は五十嵐くんか…」


 ぼそっと、呟いた私の言葉を


「颯、胸なしだって、ウケ、る…」


 とツボにはいったらしく、藤原一臣は涙を流して爆笑し始めた。


「ああ、くっくっ、学祭では…ふっふっ…胸て…くくく…創ろうな。あはははは」


 とうとうソファを叩き出したよ。

 そんな藤原一臣をニヤリとみて


「いいよ。そうなれば全校生の前で一臣と交際宣言してやるよ。」

「颯ちゃんが本命だったのね。私は遊ばれたんだね。」

「紗枝ちゃんと一緒に修羅場して、皆に無いこと無いこと言ってやろうよ。」

「やめろ。」


 藤原一臣の嫌そ~な顔はちょっと楽しい。


「ねぇ、学祭って、舞台で?」

「あれ?燿子さんから聞いてない?男子生徒は椎名にって言ってたぞ?」

「聞いてないし、五十嵐くんが女の子なら身長差で無理があるよ。」

「あぁ、ごめん。学祭ではみゆき先輩がやるよ。」


 また、くっくっくと笑う藤原一臣。

 今度は何がツボだったのか。


 窓からの風が涼しいから肌寒いに変わり、日差しも夕方の赤を仄かに感じたころ、三人は帰って行った。


 開いた窓からの風でカーテンがひらひらと踊っているのを見ながら、昨日の夢が、夢でなかったことを考える。

 ベットに寝転んで見る病室の天井は真っ白で、まるで夢の世界のようで、私の記憶を刺激する。



 夢では、なかった。



 私の手のひらで熱くない小さな炎が、踊るように揺れて、消えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ