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異世界転生失敗談  作者: ゆゆ
異世界と
27/29

絡みあい、解けて

颯也視点です

 ★★★★★   ☆☆☆☆☆   ★★★★★


 出店を一通り楽しんだ後、なんとなく天王寺の境内に来た。石段を上った先の高台に広場になっている場所がある。石段の手前にも広場があり、子供用の遊具やベンチもあるが、そこは花火大会の準備で立ち入り禁止だ。


 一臣に缶けりから抜けると伝え、柵に寄りかかる雅を見た。


「どうしたの?狭川に懐かれて疲れた?」


 何で狭川に懐かれているのだ。

 狭川は福井のことを気にしていたはずだ。

 福井も今日はやたらと僕に懐いてくるし。


「颯也こそ、射的なんて簡単じゃないの?全然当たってなかったけど?」

「夜店でマジになって力使わないよ。」

「でも香代ちゃんは颯也先輩に取ってもらいたかったみたいだよ。」


 何で福井が出てくる?


「雅もなんか欲しかった?」

「別に、いらないよ。」

「ふーん。」


 雅が欲しいと言えば力を使っただろう。

 何が気になるのだろう。

 もしかして、やきもちか。期待してしまう。


「雅って素直じゃないね。」


 いい加減自覚しろ。



「雅!こっち~!アクセサリー屋さんがいるよ~。」


 雅と移動した先には。


「宝石店へようこそ、お姫さま。」


 帽子を取っておどけて挨拶をした知った顔があった。五十嵐颯也の知り合いではない。白麟の知り合いだ。髪や瞳の色は違うけど、この顔、口元右下の黒子、シォンリーだ。遥か西の国から蘭皇国に来る商人。ただシォンリーはああ見えても女性だった。

 肩の下で一つに纏めた長いオレンジ色の髪のこの人は紛れもなく男性だろう。


「安いけどキレイで守護石にぴったりな石だよ。お兄さん達、彼女にどう?」


 折りたたみの椅子に座ってアクセサリーを勧めている。

 よく見るとどの石も魔術、魔法が込めてあるみたいだ。先輩たちに渡したものは…風と水の守護みたいだ。他のも呪い的な物は無さそうだ。


「お兄さん、お揃いの石でストラップ、オマケね。」


 一臣と紗枝ちゃんのは、防御力と攻撃力アップ?必要性ないだろ、ソレ。


「一年生には俺が買ってやろう。生徒会に入った記念品だな。」

「この流れだと、雅さんのを颯也が買うから、希美ちゃんには僕がプレゼントしましょう。」

「なんか嫌々ですか。」

「プレゼントさせてくれませんか、希美姫?」

「そこまで言うならもらってあげます。」


 目の前のこの男は胡散臭いが、物は悪くない。


「雅はどれ?」

「いや、自分で買うよ。」

「お前、空気読め。山田が希美ちゃんに買って、何でお前が自分で買うんだよ。」


 暫く悩んで、薄紅色の丸石の周りに白い涙石がある花の形のストラップを選んだ。

 同じデザインの指輪もあったので、こっそりと購入しておいた。


「はじめまして、白麟皇子。」


 生徒会のみんながアクセサリーに夢中になっている時に胡散臭い男が話しかけてきた。


「魔女姫さまからの贈り物を預かってきました。」


 にっこり笑っているが、胡散臭さしかない。


「えっと…警戒しないでもらえます。なんかボク殺されそうな気がするんデスケド…。」


 白々しい、先に僕に殺意を放ったのはソッチのくせに。白麟は伊達に戦場で最前線に立っていたわけじゃない。兄上と並んでいたんだ。


「ビクトリア、ビクター、トーリア、君にはなんて名乗っていた?僕の妹、同じ顔してるでしょ。」

「ビクトリア…勝利の女神を自負していましたね。シォンリーは。」

「一番末っ子で唯一の姫だからね。甘やかしすぎたんだよ。彼女では世界を渡れないから、僕が来た。」


 僕は兄弟の中でも一番優秀だからね。なんて言っているが、シォンリーに兄弟がいたとは驚いた。彼女は親とかなく、一人で大きく成ったような気がしていた。


「コレが預かったもの。今は小さくしているけど、君の魔力で元のサイズになるし、魔女姫が細工していたから、前より使えるようになっていると思うよ。」


 そう言って僕の手のひらにストラップに付いたミニチュアの短剣をおいた。

 藍虎兄上が成人した時にくれたものだ。麒麟の角を刀身にしてあるから、魔法との相性も良かった。

 最期の時に魔物の体に突き立てたままだった。

 この場で元の大きさには戻せないから、小さいまま手の中の短剣を握りしめる。白麟の魔力を感じる。白麟の魔力は、僕を確かめるように僕を覆い隠して、僕の中に収まった。


「此処はとても不安定だからね。きっとすぐに壊れるよ。なるべく早く安定させないとね。あの男は切り離しを約束したらしいけど、認めてはいないから。オリジナルを確保できた今、此処が壊れてもいいと寧ろ壊れることを願っているよ。」


 だから頑張ってね。と名前も名乗らずに帰って行った。



「僕は雅が好きだよ。」


 花火の音に隠して、懲りもせず言ってしまう。

 狭川の存在が気になって仕方がない。



「私も、私も好き。」


 花火が終わったあと、雅が、周りも気にせず返事をくれた。

『今の颯也が好き。なんでだろう、颯也は違うって思っていたのに…。今の颯也は私の颯也だって思って。いや、なにこの思考、ヘン。変だ私。』

 また、雅が閉じ籠もっている。顔は無表情に近いのに。



 雅は白麟を探していたのだろう。

 なんとなく、そんな気がした。


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