暑いと溶けます
「暑い~。溶けちゃうよ~。」
紗枝が生徒会室の机に突っ伏して呻いている。
原因は聖女の生徒会室のエアコンの故障。
聖女は各教室全てにエアコンが完備されているが、故障したら動かない。
「夏休み中の運動部への差し入れの手配は終わった。後は夏休みの天文部の合同合宿ぐらいだな。」
「夏休み前に王国と合同のお茶会をしてほしいと要望がありますよ。」
「みなさん、夏休み前に彼氏がほしいのねぇ~。」
菜々緒先輩はブラウスを第二ボタンまで外して、下敷きで扇いでいる。
美香先輩は、会計の引き継ぎの為に私に教えてくれている。二人で電卓片手に去年、その前と二年分を参考に今年の予算配分の変更の調整をしている。
暑くて、頭が煮え立っている。
「美香先輩、今日は暑くて無理です。頭が死んでますっ、ひゃあ」
「うふふ。」
いきなり、首筋がヒヤッとした。後ろは振り返ると、希美ちゃんが、ペラペラと熱の時に貼るジェルシートを振っていた。
「いま保健室で清香先生に貰って来たの。びっくりした?」
「した。ありがとう。」
希美ちゃんからシートを貰って、首筋に貼る。
人数分貰って来たようで、美香先輩も同じように首筋に貼っていた。菜々緒先輩はなぜ鎖骨の下に?
紗枝は子供か!おでこにペッタリと貼って、菜々緒先輩に落書きされている。『一臣♡』
「燿子先輩と一年生は?」
「暑いから、外にアイス買いに行くって~、あ~帰って来た。」
「ただいま。アイス、尚哉の奢り♪」
「お兄ちゃんに会ったんですか。」
「あぁ、向こうも一年連れて買い出しに来てた。」
コンビニは聖女の正門前、ちょっと大きい公園の一角にある。
聖女と王国は隣同士の高校だが、通学時間の混雑を避けるため、正門の位置が妙な所にある。聖女は中高一緒に南側西の端に正門。王国は東側に北に中等部、南に高等部の正門がある。合同会議以外で正門まで行くのはかなり遠回りでしんどい。合同会議の時は間にある金網の扉の鍵を借りて近道できる。
「尚哉先輩って優しいですね。理想のお兄さんって感じで。」
「だよね。」
「私は臣くんが好き。」
アイスを配る為にコンビニの袋をガサガサとしている一年生二人の間に割り込んで自己主張する紗枝。臣くんはダメだよ、と頬を膨らませ上目遣いで一年生に訴えている。可愛い。紗枝が一臣のこと好きなのは有名だからね。一年生の二人も紗枝の額の『一臣♡』の落書きを見て引いているし。
「希美ちゃん、ど~したの?」
一年生の発言に物申したい人がここにもいました。
希美ちゃん、意外とブラコン?尚哉先輩はシスコンだと思うけど。
「そんなに優しくないから。前はゲームのレベルあげとかしてくれたのに、今は全然してくれないし。映画や買い物も付き合ってくれない。」
いやいや、先輩って三年生で受験生ですよ。希美ちゃんのお姫様は尚哉先輩が騎士のように尽くしているからか。下僕ではないはず。
「尚哉は悪くないよ。悪いのはきっと私だ…。」
菜々緒先輩?頭抱えてどうしました?
「ほら、溶けるぞ。希美はコレだろ。尚哉が言っていたよ。」
「うふふ。これ好きなのです。」
「ほら、優しいじゃないか。良かったな。」
燿子先輩が優しい笑顔で、希美ちゃんの頭をポンポンとして。なぜ一年生は顔を赤らめている?
「買い出しに付き合ったから、香代ちゃんと里奈ちゃんが先に選んだらいいよ~。私、チョコならどれでもいいから~。」
美香先輩、それはどれでもいいとは言いません。
☆☆☆
魔法で涼しくすれば良いのでは、とは言わないで。
だって自分だけが涼しいのはダメだよね。
氷だって出せるんだよ、本当だよ。
この話から新しい章の予定です。
章の名前はもう少し話が進んでからで。




