魔王さま黒歴史
「僕の能力ね…。」
さて、どこまで話そうか。
いっそのこと全部話したら、雅はどんな顔をするだろうか。
拒絶はつらいかも。まぁ、話す前に戻ればいいか…。
★★★
「やっぱり色々もっていたんだ。そっちの方が私より楽しそう。ずるい。」
なんとなく聞きづらくて躊躇していたのが、バカみたい。
時間移動で人生二度目、そもそもこの人生が二度目でしょうが。それもチート付で。更に一回や二回リセットしていたからどうだというのだ。ただ羨ましいだけだ。
「それだけ。僕の一周目の人生には興味なし、ですか。」
なんかぶつぶつ言っているけど無視、若干顔が嬉しそうだ。
この4ヶ月ほどで、颯也の印象はだいぶ変わった。何でもそつなく笑顔でこなすの優等生は、巨大な猫だった。中身は一臣もだけど子供。
「続き聞く?」
今日は颯也の家で夕食までいるから時間もあるし、
「聞く、けど、アイスティお代わりしていい?」
★★★★★ ☆☆☆☆☆ ★★★★★
藤原一臣は行方不明になった。誰の記憶からも。
誰も藤原一臣を知らないのだ。クラス名簿にも名前はない。ただ僕の記憶の中にだけ存在していた。
なぜ僕だけ…。そう思うと暗い記憶が蘇りそうにのる。なぜ僕だけこんな世界に…。慌てて頭を振り思考を切り替える。
まずはいつ藤原くんが消えたのか。夏休み前に戻って調べることにした。
ただ気がかりがある。
前回の時間移動でかなりの時間、12年を遡ったので、神さまに怒られたこと。
今度は1ヶ月半、今までは長くても3日ぐらいだったから判断に迷うが、怒られたらその時。
結果、神さまは現れなかったし、一臣は普通にいた。
で一臣が消える瞬間を見た。見てしまった。
召喚用の魔法陣が足元に不意に現れて、光ったと思ったら消えた。僕の頭は『帰れる』という思いが大きくなった。
夏休み中、召喚魔法陣を研究して、一臣の行き先が僕の世界の可能性は低く、でも諦められなくて。
また夏休み前に戻って、魔法陣を書き込んだ石を一臣に持たせた。僕の世界なら僕が一臣と入れ替わるために。
でも、違っていた。僕の知らない国だった。
それから、一臣と一緒にいることが多くなり、呼吸することが少し楽になった。一臣といると自然と友達も増えた。
高校生になって、紗枝ちゃんの隣に雅を見つけた。
今まで一人だけ転生した人を見た。死体が青白い光に包まれて、淡い光の球体が魔法陣に吸い込まれて行った。その時より薄いけど、雅の体は確かに青白い光を纏っていた。
さすがにもう元の世界にの執着は薄れていたけど、確証もなかったから、スルーした。
★★★★★ ☆☆☆☆☆ ★★★★★
「えっ!」
私、見殺しにされた。
「雅が死んだ時、紗枝ちゃんも家族も憔悴してた。気になって、雅の記憶はなくならなかったから。」
前に見た死体の人は天涯孤独で市の行政の担当者が引き取りに来たから、気にならなかった。一臣は記憶から消えたから、僕しか気にしなかった。雅は違った。
「でも雅、何回助けてもよろけて頭ぶつけたり、夜中に急変したり、病院の階段落ちたりで死ぬんだ。だから、今回も目が覚めなかったし、死ぬのかなと思って見てた。」
「お手数おかけしました。」
「だから神さまに怒られた時、良かったって思った。終わり。」
何かごまかされた気がする。
ちょうどご飯と声を掛けられたので、ごまかされてあげよう。
回想って、難しいです。
ただの独り言の作文になってしまって…