魔王さまのスペック
「颯也はどんなチート、持っているの。」
純粋に興味があった。
だって、私のチートってばこの世界でいまいち使いどころが…。一番よく使うのは風魔法で、物を動かす。でも細かい調整が苦手だから自分で動いた方が楽っていう悲しさ。服のクリーニングは得意。でも部屋は片付けられない、細かい調整が出来ないから。だって、火もね、電気やガスあるし、水も水道あるし、何より魔法って、他の人に見られたり、知られたり、出来ないから。使えない。きっと、私より賢い人なら使いこなせるのかもしれない。でもたかが女子高生には無理、空も飛べるけど、思いっきり見つかるし。
将来クリーニング店デモシヨウカシラ。、
★★★★★ ☆☆☆☆☆ ★★★★★
僕のチートね…
別に雅に秘密にする必要はないけど、言いたくない。僕の黒歴史が絡んでいるから。
僕の能力は
人の心が分かる。
瞬間移動。
過去への時間移動。
物質制御。
未来予知。
千里眼、透視。
所謂、超能力と呼ばれる物の大半だ。
そしてその能力を前世の魔術で補強した。
僕まで転生して、3歳には前世の記憶があり、異様な3歳児だった。
能力の興味から周りの人間の心を読みまくり、ポルターガイストよろしく周りの物が勝手に動き回るのだ。僕は親を親とも思わない発言をするし。母は精神を病んだ。父は仕事に逃げた。
この人生では実の母親に『化け物』と言われた。僕もショックだったらしく、全く喋らなくなった。
結局、僕は父の妹である弥生さんに育てられることになった。父と同じく医者になり、僻地医療に携わる彼女が僕を連れ行くことに父も母も反対はしなかった。
彼女は大らかな人だった。例えば、忙しいなか、心の中で、『お腹すいた。お腹すいた。あー、オムライス食べたい。まず、玉ねぎを切って、冷蔵庫の鶏肉を…』とレシピを事細かく僕に向かって垂れ流す。僕に作らさせるのだ。3歳児に超能力を使って作れはひどい仕打ちだから。おかげでこの世界の家事全般が出来るようになった。料理のレパートリーも豊富だ。なんせ自分のレパートリーがなくなったら、料理本の○○が食べたいとリクエストするのだから。
その頃には僕も本も読めるし買い物も行く。島の年寄りのアイドルだ。小さな子供が母親を支えて頑張っていると認識されていたから。その頃の僕は叔母から人付き合いのポイントを教えられていた。『心が読めるなら簡単だ、笑顔で相手が望む人物像を演じながら当たり障りなくこなせ』である。そんな感じで自分の能力を思う存分使いこなして認識して、研究した。中学を卒業するまで。
中学3年の夏、転機が訪れる。
島には高校はなかったので、卒業後の相談をしようと、叔母の部屋に行き、叔母宛ての手紙を読んでしまった。
叔母が付き合っていた人からで、いつ帰って来るのか、待っていると綴られた数枚の手紙とごめんの言葉と共に結婚の報告の手紙だった。
僕が叔母の人生を狂わせた。僕がいなければ。
今の僕なら父や母と上手くやれる。
人生で最大の魔力を込めて、魔法陣も用意して、威力強化の魔術を使い、時間移動の能力で過去へと戻った。
3歳の誕生日だった。父も母も笑顔で、大学生の長兄も、高校生の次兄も、祖父母も、弥生叔母さんも、あの手紙の人までいた。あの人はこの時から待っていたんだと、僕の心が痛んだ。
五十嵐颯也の二度目の人生は順調だった。
叔母はやはり叔母のままだった。僕を引き取らなかった叔母は海外に活躍の場を移したのだ。でも、今度は手紙のあの人が後から追いかけて行った。今は二人の従姉妹とアフリカの空のした家族で一緒にいる。
この世界でも僕は年の離れた兄たちに可愛がってもらった。
僕が大人びた子供なのは、自分たちが年が離れているから、僕が背伸びしていると思っているらしく。よくヒーローごっこや野球、サッカーと相手をしてくれた。おかげで前世と同じように体も鍛えられた。今、長兄は五十嵐病院で働いているが、未だに僕を構う。勝手に雅を彼女だと決めて喜んでいる。自分の方こそ彼女を作れ。
そんな感じで、五十嵐颯也の二度目の中学二年生の夏休み明けに藤原一臣が行方不明になるまでは、順調だったのだ。