表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生失敗談  作者: ゆゆ
1.新しい世界に
11/29

私の非日常

「とりあえず、現状のさ把握と共有だな。」


 みんなが使ったカップなどを片付けて、部屋も衝立を戻して、私たちはテーブルからソファに移動した。

 ソファに座るといきなり、五十嵐颯也が言った。


「颯也でいい。で、何かできるの?」


 何が、できる?って、何?


「魔法、使えるんだろ。何ができる。」

「えっ。と」

「ふーん。火、水、風、土ね。あぁ。無理に喋らなくていいよ。わかるから。なるほど、…魔力のコントロールかな…いや、魔法の認識の違いか…」


 勝手に把握して、一方的に共有するな。

 なんだろう、みんなの前と違うよね。

 ムカムカしてきたんだが、怒っていいかな。いいよね。


「良いわけないだろ。…まず水からだ。氷は出せる?」


 何なんですか、この人、嫌いだ。


「魔法、使えるようになりたくないの?」


 魔法が普通の異世界なら勝手に覚えていけるだろうけど。この世界で独学は難しいと思うよ。と、言って、目が早くヤレと言う。


 氷、ね。

 まず水で、確か…


「やるわよ。」


 頭の中でイメージする、掌に水球を、そして、気圧を下げて真空にして、


 少しずつ涼しく寒くなってきた。

 よし。


「よし、じゃねえよ。止めろ。死ぬ気か。」


 いきなり、頭をポカって叩かれた感じがして、集中が途切れて魔法が消える。

 私の向かいに座った五十嵐颯也は渋い表情で睨んでいる。


「やっぱり魔法を認識してないな。火は。」


 また、イメージして掌に火球のを出す。

 火と水、風(ミニ竜巻)は日曜日も少し遊んだからできる。


 五十嵐颯也に言われるまま、火球、水球、ミニ竜巻と出して、動かしてみせた。

 そして、大きな水球を出している時に、


 ガチャリ。

 と、扉があいた。


「えっ。」


 一瞬の出来事に対応できない。

 藤原一臣と紗枝の目の前で水球はバシャリと水になり、床一面水浸しになった。


「あっ。」


 三人で固まっていると


「『片付け、掃除』」


 五十嵐颯也の声が聞こえた。

 そうね、掃除しないとね。

 止まった頭を無理やり動かしてみると、水浸しの床は綺麗に元通りになっていた。


「雅ちゃん、異世界行ってないよね?」


 歪みはないし、なんで?と紗枝が言う。


 私はまたパニック状態だ。見られた。いや、異世界?歪み?


「颯、説明。」

「先週のトラックで転生予定だったのを邪魔した。」

「やっぱり、か。」

「転生の邪魔はさすがに初めてだよ。」

「で、なんで、椎名さんが魔法、使ってるの?」

「異世界クォリティ。女神の祝福の先払いが付いたまま。」

「もしかして、また……かよ。」

「そんなとこ。」


 私のパニックをよそに藤原一臣と五十嵐颯也で話が進めている。ついていけない。私の話なのに。


 話をしながらみんなでソファに座った。五十嵐颯也の前に藤原一臣が座って、紗枝が藤原一臣の横に座ったから、私は五十嵐颯也が座っているソファのL型の横一人分のスペースに、


「横、座れば。話辛いよ。」


 五十嵐颯也の横に座った。


「あと、颯也でいいよ。一々フルネームを連呼しないで。」

「なに、椎名さん颯のことフルネーム呼びなの?」

「お前のこともフルネームだぞ。」

「えっー。フルネームって、敵認定みたく嫌じゃん。オレは一臣でいいよ。雅ちゃん。」


 嫌。敵認定みたく、じゃなくて敵決定。

 なに、コイツ等。

 くすくす笑うな、五十嵐颯也。


 よし、水球をぶつけてやる。


 五十嵐颯也の視界に入らない場所で水球を創り、投げつけるイメージで、


 できた!


 でも五十嵐颯也の顔の前で水球は消えて、


 ぱしゃり


 私の頭の上にぶつかった。


「冷たい!あー、びしょびしょ。」


 制服も濡れてしまった。


「雅さん。上手にコントロールできたね。」


 上手い、上手い。と笑顔で誉められる。

 ムカつく。次は火球だ。


「あのさぁ、考えバレてるってか知ってる?」


 忘れてた。


「だよね。それに僕、魔法も魔術もかなり極めて、この世界に来てからも研究して、この世界でなら無敵だよ。」


 さらりと最強発言をした、痛い子だ。


 …。睨まれてしまった。


「二人の世界作ってないでよぉ。」


 紗枝が可愛く睨んでる。可愛い。


「で、雅ちゃんなんで魔法使ってるの?」

「私、トラックにひかれて異世界に行く予定だったみたいで、でも助かったけど、神さまが一度くれた力だからそのままあげる、みたいな?」

「ふーん。」


 あれ?興味ない?


「紗枝は驚かないの?」

「なんで?」

「いや、トラックにひかれて異世界行く予定だった、なんて言ったら普通、ドン引きだよ。」

「そう?」


 そう、じゃない?


「だって、私、異世界から来たから。」


「あっ!紗枝!」


 藤原一臣の小さな叫びがして、


 紗枝の頭に、


 ぴょこんと、


 猫耳が、


「えへへ。黙っていて、ごめんね。」


 やっぱり、紗枝、可愛い~!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ