はじまり
毎日が退屈。
朝起きて、学校行って、帰って勉強して寝る。
日曜日も、起きてぐだぐだしたら、夜で寝るだけ。
部活動?
そんな情熱はないし。
彼氏?
女子校には男の子はいないよね。
出会いを求めてバイト?
疲れることはしたくない。
何だかなぁ~。枯れてる?そうかもね。
私、椎名雅、聖川女子学園高等部の2年生。そう、2年なのよ。1年の時はさ、まだ高等部に、高校生に夢というか憧れ?もあったのよ。これでも一応は。
まあ、うちの聖女は、あっ、聖川女子学園は略して聖女って呼ばれのよ。で、聖女は、それなりに憧れの学校なのよ。初等部からあるけど、そこから通うのはごく少数のお嬢さまね。中等部は親族が聖女に在学中か卒業生で、尚且つ在学中の方の親からの推薦状が必要っていう厳しさ。で、外部の一般人が入学できるのは高等部のみで、これはかなり成績が必要なのよ。自慢じゃないけども頑張ったのよ、私。
話がズレた?聖女は憧れって話だよね。
聖女自体も憧れだが、聖女には、姉妹校ならぬ兄妹校がある。しかも隣に。入学基準などは聖女と同じ、所謂イケメン御曹司が通っている天王寺学園という男子校だ。略して天園とか王国とか呼んでいる。王国の生徒は王子と呼ばれている。不思議なことに王子の制服姿はイケメン補正が三割増しになるみたいだ。聖女の制服もたぶん、きっと…だといいな。
まぁ、そんなこんなで去年はわくわく、ドキドキな一年だったと思う。外部生ってことでイジメられないかとかも心配したしね。イジメに関しては、お嬢さまって凄いわ。イジメないの。っていうより外部生を尊敬の眼で見てくれる。テストの成績だろうが、運動だろうが、クッキーを作れば、自分で作ったことも味も、なんでも誉めてくれるのだ。もう姫よ、姫。本当に高貴な人は他人を貶めないのね~。まぁ利害関係が対立してない間はって、注意がつくらしいけどね(笑)。そんな平和な日常も一年経てば退屈になるよねぇ。
何か面白いこと起きないかなぁ~。
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★
「雅!エデンの皇帝が学祭でコスプレするらしいの♡近衛の皆さんも。で、今王宮で衣装合わせしてるって。見に行こ!」
いきなり目の前に美少女の顔面が心持ち残念なセリフと共に現れた。訳すると『天王寺学園の生徒会長が学園祭の生徒会劇で衣装を着るらしい。生徒会役員も。今生徒会室で衣装合わせしてしているから見に行こう』ということだね。
「えー。やだ。めんどくさい。」
だって王国の生徒会室だよ。因みに学祭は共同開催なので、生徒会役員は先生の許可を貰えば、学祭の打合せに生徒会室に行けるのだ。聖女の生徒会の衣装合わせは昨日した。演目は高校生がロミオとジュリエットの世界でハッピーエンドにする為に悪戦苦闘するコメディだ。
「ほら、行くよ~。」
美少女お嬢さまはワガママだね。断りの言葉なんか聞こえていない。無理やり引きずられて行く。
この美少女お嬢さま、一色紗枝という私の小学校からの友人だ。紗枝は中等部から聖女に入ったから、中学の三年間は別の学校だったけどね。紗枝もいたし、受験頑張れたのだろうな、私。
「紗枝、雅、どこ行くの?買い出し?」
「エデンの王宮まで目の保養に」
「あー。紗枝はそのために生徒会入ったんだったね…。雅、ご苦労さま」
聖女の校内ですれ違う友人に見送られて、ドナドナをBGMに王国に行く。
でも校門を出た所で、紗枝が王国の副会長、紗枝が謂うところの宰相閣下だね、を見つけて声をかけながら走って行く。
「臣くーん。」
紗枝は宰相閣下とは幼なじみである。藤原一臣、宰相閣下らしい名前だと心底思う。
紗枝の後を追って、道路を渡っていると、
「危ない!!」
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