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第21話 1クールに1人くらいは嫁がいました

 戦闘が終わった後の戦後処理は第一王子も混ざって交渉するらしい。本来なら国王が来るんだろうが、あまりにも早く終わってしまったため予定が会わなかったとかなんとか。それに、戦闘は丸投げだったのにこういうのはでしゃばってくるのかと思わなくもなかったが、封建制度の社会とは得てしてこういうものかもしれないな。

 交渉内容なんかは参加してないからよく分からないが、これで完全に戦争終結だ。被害は少なく、賠償金などの得るものが大きい結果となった。

 え? 交渉の席には立たなかったのかって? 仮に俺が参加できたとして、何ができるんだよ。なんか普通に交渉とかしちゃってる主人公いるけど、そんなことできるとは思えないわ。いいように手玉に取られるだけだろ、普通。特に学生なのに交渉できてるやつとかね、もう余裕でブラウザバックですわ。


 さて、俺個人にしても戦争の早期終結の立役者として今度国王に謁見することになった。その気球にしても、今回の戦闘で大いに有用性を認められ、販売は国と独占契約を結ぶ一大産業に。生産量こそ制限されてしまったが、それならばと現代での利用法であるレジャー用としても運用。ロープに繋いで短時間飛ばすだけなら魔力量の少ない俺でもできるので人材不足ということもなく、多くの観光客を呼び寄せる要因となった。

 こうして俺は一躍有名人となり、褒美もたっぷり。後は悠々自適な生活を送るだけ。まさにウハウハである。

 とはならないのが現実である。偉くなると責任も増える。前よりめんどくさい書類仕事に忙殺される毎日が戻ってきた。それだけならまだしも、気球のレジャー事業の管理も増えて余計に忙しくなったよやったね。まったく、誰だよ気球を観光用に使おうとか言い出したやつ。あ、俺だった。

 悪いことばかり考えても気が滅入るだけなので、これからは偉くなって良かったことだけ考えようそうしよう。

 やはり一番大きいのは人間関係である。さすがに領主やアリオスなどは目上だしタメ口はできないが、前より気安く話しかけられるようになっている。マリーやエイミーに関してもそうだ。あと、気球開発にたずさわった職人たちからの人気も高いらしい。おっさんからの人気はいらねえ。当面の目標は達成できたと言えよう。


 国王に謁見とかいうイベントは何事もなく終わったのでカット。そうです。美少女なお姫様のフラグなんて都合よく立つわけなんかあるはずないんですよ。

 というわけで忙しくも楽しい生活を送っていると、領主に大事な話があると言って呼ばれた。中身は縁談の話である。前の人生より数年早いが、当時は言葉を覚えて働き始めたくらいだろうから、比べることでもないのかもしれない。

 縁談の話の戻ろう。街の有名人となっていた俺のところには、商人や近くの領主たちからの話がそこそこ来ているらしい。商人はともかく、他の領主からのは引き抜きだろうことはなんとなく分かる。あとは個人的に仲良くしていたマリーやエイミー、ティナなんかとの話も上がっていた。恐らくうちの領主からすれば、今の3人の中から誰か選んで欲しいところだろう。ティナって誰だ。あ、副隊長か。


「今すぐ決める話ではないが、まあ考えていてくれ。それとも、他に意中の相手でもいるのか? 例えばお前の故郷にそういう相手がいたか?」


 いやそれはないです。あ、強いて言うなら1クールに1人くらいは嫁がいましたがなにも問題ないです。


「私の娘もそろそろ嫁に出す頃だ。あれもお前のことをよく話しているし、お前にならば安心して送り出してやれるのだがな。

どうだ、うちの娘は? 贔屓目に見ても器量良しの女だろう?」


 まあそりゃ、間違いなく美少女だし今回は初めの方からなついてきてくれて、それで気が楽になったところもあるんだけど……。なんというか、妹みたいな感じで見ていたから急に言われてもいまいちピンとこない。

 エイミーは前の人生があるから、愛しく思う気持ちもあるのだが、昔とは違って幼い彼女は妻というより娘を見ている気分になるんだよな。

 ティナは……どうなんだろうな? そもそも選択肢の1つってだけで向こうは了承しないんじゃないか? からかいすぎて嫌われてると思うし。

 それ以外の候補についても、会ったことないからなんとも言えない。

 好きな人ねえ……。こういうのはパッと思い付くみたいな感じのことを聞いたことがあるようなないようなだが、俺の場合は……。うん、あり得ない、かな。

 今こそ難聴をこじらせた鈍感系主人公が羨ましいと感じたことはない。だって何も考えなくても女の方からやってきてそのままナアナアでめでたしめでたしなんだろ? 鈍感系主人公とか気持ち悪い、人じゃないとか思ってたけどウラヤマシイナー。


 縁談は保留にしてもらってから少し経った頃、隣の領地で飢饉が発生していると報告があった。

 来た。一見別の土地の、うちとは直接関係ない事件のように思えるこれこそが、後の大飢饉にまで繋がってくる重要なイベントなのだ。

 詳しく言うとその土地の領主は恩義に厚い人物で、ここで助けてあげると20年後に起こる大飢饉の時に駆けつけてくれる。この手助けがないと、いくら流行り病を防いだところでどうしようもなくなるのだ。そしてもし戦争が長引いてしまっていたら助けに入ることができなくなってしまう。戦火が街にまで広がっているので、復興のためにそれどころではなくなってしまい、20年後で詰むというわけだ。あの日アリオスを助けたことが20年後にまで関わってくるなんて、今までの記憶がなかったら夢にも思わないだろう。

 というわけで縁談のことなんて後回しにして、この事件を解決しないといけない。戦争の時もそうだったが、今回も俺が介入しなくても領主は助けを送ることを決断するだろうが、ここでも少し手を入れておきたい。

 反対意見は領主に任せるとして、俺はマスクの開発に取りかかった。

ブックマークありがとうごさいます。

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