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第15話 かただけに(ドヤ顔)

 いきなりの暴露に全員驚きを隠せない。ここに俺が居なかったなら何も問題はなかったんだが、俺が居る時にというか俺に聞かせるために言ったらしいのは明白だ。そんな重大なことを下働きでしかない俺に言っていいのか?


「おいおい、こいつにそんなこと言っていいのかよ? そりゃ、こいつはいいやつかもしれないが、まだ素性は分からないんだろ?」

「そう、分からなかった。お前の故郷、ニホンという島国もどこにあるのか調べようもない。お手上げだ」

「ならば、なぜ……」

「私たちが判断できるのはお前の人格だけだった。それもお前は真面目な働きぶりを見せてくれたな。

よって私は、疑うより信用する方が賢明だと判断したのだ。

それに、字が読めて計算もできる人材を遊ばせるわけにもいかん。お前にその気があるのなら、より重要な仕事を任せたいと思っている」


 アリオス、執事の問いかけに答えているが視線は俺から離れず、まるで俺の疑問に答えているみたいだ。

 多分、ここが本当の意味で彼らの仲間になれるかどうかの分岐点なんだろう。強い視線に晒されて気圧されそうになるが、目だけは反らしちゃいけないと思いぐっとこらえる。


「俺……私は、頼る相手もいないところを拾ってくれた恩を今でも感謝しています。お役にたてるならその話、受けたいと思います」


 彼の視線が頭の中を覗きこまれているような錯覚に陥って目の前がくらくらしてきた。嘘は言っていないんだ。嘘は。ちやほやされたいという、もう1つの理由を言っていないだけで嘘ではないんだから、堂々としていればいいんだ。

 言い切った後はこちらも相手の目を見返す。しばらく無言で見つめあっていたが、領主の表情が和らいだことで空気が弛緩したのを感じた。ずっと息を止めていたらしく、肺に溜まった空気を一気に吐き出す。ほえー……。


「ふ……。いい目をするようになったな。

では話を戻そう。敵の規模は恐らく3万。もっと増えるかもしれないという。こちらも3万であれば動員できるが、お前はこれをどう見る? 色々なものを考えつくお前の意見が聞いてみたかったんだ」


 うっ……。なんか面白いことを言えという無茶ぶりを感じる。多分、ここがなにかしらの分岐点なんだろう。


「前回の進攻が2年近く前らしいので、そろそろ攻めてきてもおかしくないと思います。しかし、今までがそうであったように今回も何も問題はないでしょう」


 この街は数年に1度、隣国からの進攻をはね除けている経験がある。今回のは少し規模が大きいだけの『その中の1つ』でしかない。これまでの人生から言わせてもらうと、この進攻で最後になるのだがそんなこと言える筈もなく、無難な回答しかできなかった。


「ふぅん」


 ふぅんて。

 明らかにつまらなさそうな顔をされた。いやいや、どうしろと? 大丈夫なんだからそれでいいじゃん。ピンチになんてならない方がいいんだよ。

 その後は簡単に新しい仕事の内容だけ告げられ、詳しい話はまた後日担当の者から教えてもらうことになった。担当の者とは彼の後ろに控えるえる執事風の執事さんらしい。後は激励の言葉をもらっただけで部屋から出た。

 結局、俺の意見に対してなんのコメントもなかった。どうやら選択肢を間違えたらしい。悲しい。


◆◆◆


 扉が閉まった後も中の人物はピクリともしなかった。暫くの静寂の後、ようやく辺境伯が口を開く。


「どうだった?」

「嘘()言っていませんでした」


 誰に、何をと言うでもない呟きだったが、その意味を取り違えることもなく執事は答える。彼は伶太が入室してくる以前から嘘を見破る魔法を部屋全体に使っていたのだ。


「なら、問題ないと言い切ったのも『本当』か……。果たしてその自信は人から聞いただけで得られるものかな? ふふ……興味深い」


 口を三日月のように曲げて面白そうに笑う辺境伯。彼の黒い笑みに、アリオスはやれやれとため息をついた。


「無駄に勘ぐるのはお前の悪い癖だぞ? そんなに警戒しなくても、あいつは……頭の良い馬鹿だ」


 何事も直感でものを考える彼が一番核心に触れていた。


◆◆◆


「思ったより早くから戦争になるのは分かってたんだな……。まあこれで兵器開発をしても不自然ではなくなったし、よかったかもな」


 独り言を呟きながらあてがわれた部屋へ入る。さすがは辺境伯の屋敷だけあって、使用人全員に個室が与えられているらしい。

 よろよろと椅子に座り、盛大に息を吐いた。今日は精神的に疲れた。前回も、あの目だけは最後まで慣れなかったもんな……。


「やっぱ精神衛生的にも早く誤解を解かないとキツそうだ。そしてあわよくばアリオスみたいにタメ口を利けるようになりたい。堅苦しい口調は肩が凝りそうだ。かただけに」

「面白くない。0点」

「うおっ!?」


 急に後ろから声をかけられて、椅子から転げ落ちてしまう。そして机の足に後頭部をぶつけて悶絶。流れるように綺麗なコンボが決まったとかそうじゃないそんなことはどうでもいい。痛む後頭部を押さえて見上げた瞬間、固まってしまった。

 立っていたのは2人の少女。1人は領主の娘であるマリー嬢。そしてもう1人はまだ会ったことのない、ぱっとしない少女。だが俺はこの子のことをよく知っている。彼女はエイミー。アンスクルム辺境伯の数ある姪の1人で、前回俺の妻だった人物である。

丁寧にやり過ぎて失速してる感が否めません。戦争のくだりが終わるまではどうしようもないのでそれ以降をスピーディーに展開させていけたら……いいなあ……

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