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異界  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
4/10

野口 翔太(8)

 4-①


 あいつは……よっちゃんじゃない。


 お父さんも、お母さんも、先生も、友だちも、みんなぼくの言うことを信じてくれない。

 この前の土よう日に、よっちゃんと、ちかくの林にあそびに行った。

 虫とりをしている時によっちゃんがいなくなった。よっちゃんをさがしてたら、人間みたいな形の、黒くてもやもやしたおばけがよっちゃんと手をつないで、よっちゃんをどこかにつれて行こうとしてるのを見つけた。

 よっちゃんをたすけなきゃと思って、おばけのあとについて行ったら、おばけはよっちゃんをつれて大きな黒い穴に入って行った。おばけをおいかけて、ぼくもいそいで穴に入った。


 4-②


 穴を出たら、いつもあそんでる林とはちがうところに出た。

 昼なのに……空が真っ赤だ。見たことのないへんな木がいっぱい生えてる。きっと、ここは……おばけの国だ。

 たいへんだ…早くよっちゃんといっしょににげないと!! よっちゃんをさがしてたら、むこうの草むらで“がさっ……がさがかっ……”って音がした。

 おばけかもしれないから、見つからないようにそっと草むらをのぞいたら、そこにいたのはおばけじゃなくて、よっちゃんだった。

「よっちゃん!!」

 ぼくはよっちゃんのところへ行った。でもよっちゃんがなんかへんだ。

「よっちゃん……どうして、はだかなの?」

 よっちゃんはなにも言わない。

「よっちゃん…? ねぇ!? よっちゃ……あっ!?」

 よっちゃんの足元に……もう一人よっちゃんがたおれてる。たおれてるよっちゃんは、あたまからいっぱい血が出てる……たおれてるよっちゃんは、ちゃんとふくをきてる。

 はだかのよっちゃんが “にぃぃぃっ” とわらった。こいつは、よっちゃんじゃない……おばけがよっちゃんにばけたんだ!!

 ぼくはにげた。よっちゃんのおばけがおいかけてくる。だいじょうぶ、よっちゃんは走るのが早くない。心の中でそう言いながら走ってたら、あの穴を見つけた。来たときよりかなり小さくなってる。

 ぼくはしゃがんで小さくなった穴に入って、まっくらな穴の中をハイハイですすんだ。だんだん明るくなってきた、もうちょっとで出ぐ…


 “がっ!!”


「わぁぁぁっ!?」

 なにかがぼくのくつをつかんだ。足を引っぱって、ぼくをおばけの国につれて行こうとしてる!! こわくて足をバタバタしてたら、くつが脱げた。うごけるようになったぼくは、いそいで穴の外に出た。

 いそいで帰って、お母さんに「よっちゃんがおばけにつれて行かれた」って言ったら、よっちゃんのお母さんや、おまわりさんが来た。ぼくはお母さんと、よっちゃんのお母さんと、おまわりさんたちを、穴があったところにつれて行ったけど、あの穴はなくなってた。

 おまわりさんたちがよっちゃんをさがしてくれたけど、よっちゃんは見つからなかった。


 それから三日して、よっちゃんは帰ってきた。よっちゃんのお父さんとお母さんも、先生も、クラスのみんなもいっぱいよろこんだけど、ぼくは知ってる……


 あいつは……よっちゃんじゃない。


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