71.卒業試合6
きょうのおはなしは、みじかいです。ごめんなさい。
魔力はあまり回復していないけれど、心はしっかりと回復していた。
ゲイツと少し離れて闘技場の端に立ち、貴賓席に陛下達が戻るのを待っていると、不意にあの時の記憶を思い出した。
――あの日の卒業試合も、私はこの場でゲイツと戦うことになっていた。最愛の婚約者……いえ、愛していると思い込み、その思いを口実に怒りを正当化させた私。
正々堂々と戦いを挑んできたゲイツに、私は防御の魔法が壊れても尚攻撃を緩めなかった。
そんな私を抑える為に、ジャンクルーズ殿下やヴィゼル先生も闘技場に上がり、私と相対した。
彼等の攻撃を受け、私に掛けられた防御魔法も壊れ、複数の人間からの攻撃に混乱した私は、自身の魔力を暴走させて巨大な炎龍を作り出した。
元々魔力が減っていた私の、その魔法はすぐに沈静し。周囲を燃やす炎は――多分、エイシェン殿下が魔法で消してくれたのだと思うけれど……生憎とその頃にはもう、まともな意識は残って無く、推測しかできない。
今度は大丈夫よ。
炎を覚醒しているからゲイツに負けるつもりもないし、正気を失うつもりも無い。
ゲイツの方は見ずに、静かに闘技場の観覧席を見ていると、貴賓席の王族の方々及びエイシェン殿下が戻ってきた。
私達の後ろから戻ってきたヴィゼル先生に促されて、闘技場の中央へと歩く。
「これより、魔法騎士科ゲイツ・グレンドル、魔法科コーラル・ユリングスの試合をはじめる」
浪々としたヴィゼル先生の声が響き、私とゲイツは貴賓席に向かって礼をした。




