36.決意
翌日、学園へ戻る準備を整えてから。昨日偶然フレイムと出会ったあの喫茶店で落ち合い、教会へと向かった。
「図書館でもかまわないんじゃ無いのか? その方が君の家に近いし」
そうフレイムは言うけれど、当分行けないわ。いくらフレイムが人払いしてくれたとはいえ、公共の場所であんな事をしてしまって……っ!
思い出すだけで頬が熱くなるような事をしてしまった場所で、平気な顔なんてできないもの。
だから、待ち合わせはあの喫茶店。
フレイムと一緒に途中で立ち寄った花屋で花束を選び、教会へ行けば神父様は教会の中にいらっしゃった。
「おや、お嬢様。今日は、素敵な男性とご一緒ですね」
目を細めて微笑む神父様に照れながら、祭壇の花瓶に花を生けさせてもらう。
「ごゆっくり、お母様と語らってください」
「ありがとうございます」
そう言って席を外してくれる彼の心遣いに感謝して、フレイムと並んで祭壇の前に跪く。
お母様、どうかお父様を守って。そして、私に未来を覆す力を下さい。
この後地下を確認に行ってきます。多分……元に戻っているでしょうけれど、何度だって燃やします。私、負けません。
――ラン……私の魔力が尽きるまで、付き合ってあげるわ。
決意を胸に、閉じていた目を開けて祭壇を見上げる。
太陽の光を受けて煌めくステンドグラスは、いつもと変わらずに美しかった。
やや遅れて隣で祈っていたフレイムも顔を上げると、ゆっくりと視線を私に移してにやりと笑い、私の頬を硬い指先で撫でた。
「なんだ、いい顔してるじゃないか。泣き濡れた顔もいいが、強気な君もいいな」
「貴方が隣に居てくれると、私、強くなれるみたい」
頬に触れる彼の手に手を重ね、精一杯の笑顔を返した。