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機械仕掛けのワルツ

作者: 里兎

一時でも心が休んで頂けたら幸いです。

踊る。踊る。

世界が砂に覆われ。

例え観客がいなくても。

いつまでも。

いつまでも。


昔は沢山の観客がいた。

世界もこんな砂ばかりではなくて、建物が沢山あった。

沢山の人もいた。

そして私の隣には私を造った技師もいた。

――――そう。

私は機械人形。

踊る為だけに造られた。

ネジ巻き仕掛けの人形だった。

技師と世界を旅をして。

見せ物をして。

お金を稼ぐ。

そうした存在だった。


技師は私を1度も人形として見なかった。

同じパートナーとして大切に扱ってくれた。

それが嬉しくて。

それが幸せで。

私は心を持ちたいと思った。

毎日願った。

そしてそれを見かねた星達がその望みを叶えてくれる。


……それがいけなかった。

今更ながらそう思う。


でもその時はそれが嬉しくて直ぐに技師に会いに行った。

驚きの顔。

でもそれはすぐに笑顔に変わる。

その表情が幸せで。

今迄の想いが溢れる様に口から次々と言葉が出てくる。

夜遅くまで。

そんな私の話を技師は笑顔で聞き続けてくれた。


それだけで良かった。

貧乏でも。

歩く道が長くても。

それが良かった。


なのに人間達は文明を進めようと。

世界の全ての木々をなぎ倒し。

建物を競い合うように建てた。


世界はそれに怒った。

太陽で全てを燃やし尽くし。

建物と文明全てを灰とした。


そしてそれは人類も同じ様に。


気が付いた時に私は砂に埋まっていた。

急いでかけ登り私はあの人の姿を探した。

でも。

見えるのは砂ばかり。

そこにはなにもなかった。


鉄の体で私だけ助かったのだろうか。

悲しいという感情はあるのに。

機械仕掛けの私には涙を出すことが許されなかった。


心なんて貰わなければ良かった。

こんなに苦しいのなら。

いらなかった。

こんなに辛いのなら。


背中では目一杯廻されたネジがゆっくりとギコギコ音をたてながら回っていく。

あの人が回してくれたのだろうか。


どうして?


私には必要無いのに。

あなたがいないなら。

この世界を生きていたくない。

だから踊った。

ネジが早く回り終わるように。

この砂と灰として混じったあなたに早く会えるように。

ただ悲しさだけが。

あなたに会いたいという愛しさだけが。

私を踊らせた。


ここには観客がいて。

手作りの舞台があって。

あなたが隣にいて。

みんな笑顔で。


踊ってる間はそんな幻影が見えた気がした。

その最中幻影のあなたは私に近付いて

私に話し掛けてくれる。


『私はこんな結末望んでいませんよ』


「!?」


彼の言葉に無い筈の心臓が飛び上がる様な感覚で踊りを辞めてしまう。

観客も。

手作りの舞台も。

幻影がスッと消えてしまう。

でも。

あなただけは私の側で。

私だけに優しく。

笑い掛けてくれた。


『生きて。君の世界を創って下さい』


そしてそれだけ言って。

あなたは消えた。

私には残酷な言葉。

あなたがいない世界なんていらなかった。

それでも。

それでも………。

…あなたが望むなら。

私は……。


ぎゅっと自分の手を握り、辺りを見回した。


まだ無事な所はあるの?

まだ生きている人はいるの?

私の世界………。

それは何?


………探しに行こう。

見付かるまで。

このネジが回り続ける限り。

私の世界。

それがあなたがくれた希望だから。


機械人形は歩く。

どこまでも。

どこまでも。

砂の世界の先を。

自分の世界を目指して。

それを見ていた星達は。

彼女の力になりたくて。

少しずつ。

少しずつ。

技師の代わりに。

背中のネジを巻いていく。


彼女の物語りはこれから始まっていく……。




―――――fin


最後迄読んでくれてありがとうございました。

全て無くしたとしても、何処かにあなたを想っている存在は必ずいると信じております。

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