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試験的なネタ

ダンジョン内の宿屋さん

作者: 日文

ダンジョンの中にある宿屋さん。

安心して眠れるしご飯も食べれる。

でもどうして?と考えていたらこんな事に。

『宿屋を作りなさい』


 はぁ、何この電波?

 そう思ってしまった私は悪くない。

 お風呂に入った。

 ご飯も食べた。

 一週間分の洗濯は今洗濯機がやってくれている。

 雨で干せないときも大丈夫なように、乾燥までしてくれる優れもの。

 ちょっぴり良いお値段だったけれど、手間を考えれば安いと思う。

 思うことにしている。

 洗い物も食器洗い機が大活躍している。

 床の掃除だって自動で動いてくれる掃除機にお任せだ。

 そんなめんどくさがり屋の私が、おやつとお茶の準備をしてゲームを起動したら画面からそんなことを言われたら突拍子もないことを思っても仕方がないと思う。

 普通のRPGだったはずだけどなぁ……先週セーブしたときまでは。

 いつの間に経営系のゲームに?

 電源を入れ直してみよう、きっと何かおかしなバクだ。

『資金源としてくじに当たるようにしました。くじを購入し資金源にしなさい』

 やだ、本格的におかしい。

 疲れているのかな?

 今日はゲーム諦めよう。

 大人しく寝て、明日はどこかに出かけようかな?

 あぁでも買い出しもしないといけないんだよなぁ……少し遠出して気分転換にしよう。

 そうしよう。

 電源をコンセントから引っこ抜くことで落とし、せっかく入れたお茶はペットボトルに移し替えて冷蔵庫にしまう。

 さて、寝よう。

「おやすみー」

 誰にでもなく宣言してベッドに潜り込んだ。

 上司に早めに相談してみようかなぁ?

 それでクビになったら適わないけど、一回どこかに相談した方が気が晴れるよね。

 そう思いながら私は寝た。


 だって普通本当の事って思わないんじゃないかな?

 妄想とか、気が狂ったとか言われた方がまだマシな気がする。

 宿屋って。

 ホテルでも旅館でもなく宿。

 資金源にくじに当選するようにしたって。

 人に言ったら妄想乙!って嗤われながら言われるだろうなぁ。

 くすくすと自分の妄想を笑いながら。




 そして夢を見た。


 そこは真っ白な空間。

 上も下も、右も左もない。

 ただ有ると言うことしか理解できない。

 そして何故か理解できてしまう。

 そこに私は私という明確な自意識を持たずにふわふわしていた。

 眠気と、居心地の悪さと、何処とも知れない場所という警戒心で混乱に近い状態でもあった。

 響くのは声なのか思念なのか、酷く私の思考の方向性を固定しようとする何か。

『宿屋を作りなさい』

 近いうちと言わないで、目が覚めたら病院探そう。

 そうしよう。

『妄想ではありません。貴女は正常です……少々精神構造に異端は存在しますが、この世界において異常と言われる構造ではありません』

 何か酷いことを言われた気がする。

 異端とか言われた気がする。

 いや、うん、恋愛とか興味ないからね、多分同世代のお嬢さん方と比べたら少々そう言った感情が未発達なだけだと思うよ。

 男に興味ないよ。

 だからといって女の子にも興味はないけどね。

 性的興奮ほとんど覚えたことはありません。

 おつきあいしても相手に淡泊だとか、自分のこと好きじゃないんだろうとか言われて振られるんだけどね……うん、嫌いではないけど好きでもないよ、お試しで付き合ってくれ言ったのはお前だろうが、そう言って相手が衆人観衆の前で罵倒してくれたから、にっこり言い返してやったけれどね。

 妙な賭の対象にされていたらしい。

 多少女子に人気があった相手だったために、面倒で嫌々付き合っていたから積極的にファンの女の子に情報流してデート途中で乱入させ、帰るようにしていましたよ。

 学校内で、嫌がる女子につきまとっている自惚れ男と囁かれはじめた矢先に振られたけど。

 うん、興味ないだけ。

 おかしくない。

『貴女に宿屋をやっていただきたい世界を、今夜から案内します』

 だからいらない。

 宿屋なんかやらない。

 寝るんだ。

 寝たんだ。

 夢くらい普通にしてくれ。




 朝の目覚めは最悪だった。

 寝た気がしない。

 しかし眠気はなくなっている。

 疲れはないのだ。

 …………起きるか。

 時間も少々早い。

 遠出しようと思っていたし、途中で朝を食べても良いし、早めの昼食で誤魔化す手もある。

 身支度をして財布の中身を確認。

 鞄に財布と懐紙、マイバックをいくつか放り込みさて出かけようとしたら……スマホが鳴った。

 設定していない音で。

 会社の誰かが勝手にさわったか?と思ったけれど、画面に表示されていた顔を見て唖然とした。

 そこには昨夜寝る前と寝た後に散々私に宿屋を作れと言った存在があったから。

 本格的に私の頭、壊れた?

『出かけるのであればくじを買いましょう。購入し、当選すれば少しは現実だと理解できるのでは?』

 そう言われるとそうかも知れないと少し思う。

 思ってしまう。

 誘導されている気がする。

 しかしまぁ、当たったらラッキーと思おう。

 当たったら宿屋作らないといけないみたいだけど……ひとまずは時間稼ぎにはなるか。

 しかし宿屋ねぇ……どうしろと言うんだろう。

 私は首を傾げながらどの宝くじを購入すべきか考えた。


 とりあえず今現在買える種類を一つずつ購入。

 スクラッチを削ったら一等だった。

 銀行へ行けと……

 まぁ平日に休み貰わないと換金出来ないし。

 何事もなかったかのように財布にくじを押し込めた。

 うん、ご飯にしよう。

 チョコと奮発して。

 でその後本屋さんだ。

 幻想でも狂気でもこの際置いておいて、確かに当たった。

 この一枚だけかも知れないけれど。

 他のも当たって資金が確かに出来たら考えなければ行けないかも知れない。

 先に報酬を押しつけて実行しろと言うのもアレだとは思うけれど。

『それを資金に宿屋を!』

 いや、私自営業の経験ないし。

 接客業もないからね。

 一人で宿の経営なんて無理だから。

 まぁ、いくつか調べるけどさ。


 一千万当たったからか、少しだけ気が大きくなってしまったのか、財布の紐がゆるみお高めな買い物をいくつかしてしまう。

 まぁ全部いるヤツだけどね。

 大きめで、かなり良い牛肉固まり。

 作り方を見てから食べてみたかったので、そのお肉で早速ローストビーフもどきに仕上げる。

 明日のお弁当に入れていこう。

 楽しみだ。

 スマホは電源を切っても電池が付いているので余り意味がないらしく、ソレは延々と妄言を垂れ流している。

 若干洗脳された感じで、宿屋経営についてとかネットで調べ始める自分が居るし。

 ソレはパソコンの画面が見えるところに陣取らせろと五月蠅いし。

 ざっと調べただけでも、古い施設買い取りリフォームでもかなりお金がかかると言うことと、好きでないとやっていられないと言うこと。

 無理だって。

 そんなお金有ったら、宿なんかしないで引きこもるワー

 基本は消防法と役所への届け出、そしてコプセントとかが重要っぽい。

『宿を出すのはこの世界ではないので、そこまで難しく考える必要はありません』

 そう言われてもねぇ……違う世界って(笑)

『今夜も夢の中で宿屋をやる世界に貴女を案内します。どういう風にするべきか、よく考えてください』

 この状況続行?

 人のお世話するの好きじゃないよ。

 やだなぁ……とりあえず明日のお弁当を希望に頑張るか。




 今夜も不可解な場所にいた。

 白い世界ではなく、どことなく南米というかアフリカみたいな未開の地というイメージが当てはまる。

 見える範囲にいる人々には活気がある。

 しかし顔が違う。

 見慣れたどこか生ぬるく生やさしい顔つきではなく、何某かを秘めた、覇気のような命のような何かがにじみ出ている顔。

 しっかりと筋肉が付いた老若男女。

 老人と言える年齢の人は少ないように感じた。

『ここは貴女が居た世界とは異なる世界。異なる法則によって支配されています』

 赤や緑、青に紫といった色とりどりの肌の色。

 一つ目三つ目、角にとさかのような飾り。

 五本指に六本指、そして三本指に水かき。

 尻尾があったり鱗があったり。

 顔の横ではなく頭の上の方に耳があったり背中に羽があったり。

 本当に色々。

 見たこと無いというか、ほとんど妖怪や幻想生物並みだね。

 やっぱ妄想かな?

 夢だよね。

 異世界で宿屋?

 無理だって。

 そう言うのは中二病激しい方にでもお任せした方が……

『そのチュウニビョウですか?それを患っている方は向いておりません』

 さいですか。

『一所に閉じこもっていても平気であること。自分の居場所を大切にすること。気配りが出来て物事を良い方向に考えられること。そういった細々とした条件があり、貴女は該当したのです』

 引き篭もりと言いたいのだろうか?

 キチンと働いているのに。

 自分の居場所を大切にするのは当然じゃないのか?

 気配りも、物事を良い方向に考えるのも自分のためだけど……何か妙だよね、条件。

 特に閉じこもっていても平気。

 宿を経営しているからって、外出一切無しってあり得ないのに。

 何か隠してる?

『この世界は貴女の世界で言う“剣と魔法の世界”に近いです。貴女が宿屋を開くのはダンジョンの中です』

 えっ?

 今なんと?

『ダンジョンの中と。ですから特定の職種の者以外訪れません』

 はっ?

『外に仕入れに行くことなども不可能です』

 それでどうやって経営しろと!

『初めから持ち込んでください。泊まる人数も最低一人から二十四人ほどです』

 無理だ。

 一人でそんなにも世話できるか。

 しかもダンジョンだと?

 容易く荒くれ者だと予想できる。

 そんなの相手にしてられない。

『人手が必要というのであれば、奴隷があります。信用できる存在を、と言うならば人形という方法もあります』

 人形に宿屋やらせたら良いと思う。

 わたしみたいなの引っ張ってこなくとも、それで解決するんじゃない?

 うん、それで良いと思うよ。

『ダンジョン内の唯一の安全な場所が宿屋です。それは地上にあるどのような宿泊施設よりも安全で、安心で、清潔で、美味を味わえるのです。故に人々はダンジョンを目指し、宿屋に泊まるのです』

 何か思っていたのと目的と目標が違う感じな事を言われた。

 この世界で最も安全というような趣旨を聞いたような……?

 やっぱり、この世界危ない?

 それに奴隷とか言うし。

 清潔とかって言うことは、病気とか危ない?

 やだなぁ……

『そして何より肝心なのは、宿の主人の安全や危険への認識。盗むことは悪いこと。暴力を振るのは悪いこと。悪口を言うのは出来たら避けたい。そう言った自分の周りで出来たら起こって欲しくないことをどういう風に考え、認識し、実行しているのかと言うことで宿屋での安全が変動します』

 基準装置と言うことか!

 なんじゃそりゃーーー

 だったら私でなくとも。

 そう思う。

 いくつかの条件があったとしても、こういう世界を望む誰かがこればいいのにと。

 安全でない世界で、危険かも知れない相手を泊める仕事をしろだなんて冗談でもやめて欲しい。

 私は安穏と生きていきたい。

 楽しみの為にたまに散財して、それを後悔しながらも喜び、老後のことを考えて蓄財したり、友人とたまに遊んだり……そんな普通がいいのだ。

 こんな、妄想なのか気が狂ったのか判らない状況は望んでいない。

『この世界のダンジョンにいくつか宿屋はありますが、なかなか長くやっていける人がいません』

 他にもいる?

 だったらその人達と話せないかな?

 何がいるのか、必要なのか。

『皆、若い時間で留め置いているのに百年と持ちません』

 ウチの世界でも百年生きれば長寿だよ。

 お祝いされるよ。

 そんなたった少しの間みたいなつかわれかたしないよ。

 一人きりで百年とかって、どんな拷問?

 もしかしてそう言うのが平気な世界の人たちが宿屋ってやってる?

 でもそうなら持たないはず無いよね……

『ですから貴女はより長く良い状態のまま持って欲しいので、まずこの世界を見せました。明日はダンジョンを見て回りましょう』

 泣きたくなった。

 夢だと思いたかった。

 夢にしたかった。

 妄想で、病気だと思いたかった。

 それなのに、なのに、私の中の何かが現実だから諦めなさいと私を諭す。

 もう、泣いて良いよね?




そして始まる彼女の苦悩と苦労の連続。

宿屋の前に自分の精神を守らなければならないと知り、補給というか仕入れもほとんどムリだと理解し、そんな彼女が作り上げる新たなダンジョン内での彼女のお城。

続き書いても良いですかね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い設定ですね。 本人の娯楽はデータや器具等を買い込んでいくとかできても、仕入れできないのが難点ですね。 数十年間にわたって常に一流水準を保つのは流通がネックだと。錬金っぽいのとかできる…
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