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帰る。
帰りたい。
帰らして!!
まあね、
こんな願いは叶うはずなく。
「さて、みんないなくなっちゃったし、御園江さん。」
「え、は!?」
「ほら、御園江さん。行くよ。」
「ちょ、りりは?春先輩!?」
なに手を振ってんの!?
一緒に行きましょうよ、てか、一人にしないで!!
私が何とか七條先輩の手から逃れようと身をよじると、さらにきつく巻き取られ耳元でささやかれる。
「沙雪ちゃん。言うことを聞きな。」
「ひぃ!!」
肉食動物に捕食されたみたいだよぉう。
そこでこそこそしている二人とも。
後で覚えておきなさいよ!先輩だからって容赦しないんだからね。
とかまあ、声に出す勇気も持てず頭の中で何度もリフレインする。
「ああああ、あの、どこ行くんですか?」
二人が去った店内で、七條先輩がレシート片手に私の腕を片手にお会計へと向かう。
「何処って、お楽しみさ。」
「お会計。」
「構わないよ。」
「じ、じゃあ、私の分だけでも!」
七條先輩が背負っている私のバッグ。
それに手を伸ばしたはいいが…。
「ダメでしょう。」
「ダメじゃないでしょ!?」
ちょっと定員さん。微笑ましそうにみないでくださいよ。
「女の子に払わせるにはいかないじゃないか。」
「…じゃあ、今日だけ。」
「いや、一生ね。」
「は?」
いかんいかん、なんか空耳が。
会計を済ませて外へ出ると、もう空は夕焼け色だった。
「あの…。なんなんでしょうか。」
「なんなのかというと?」
「もう夜も近いので、帰りたいのですが。皆解散したのでしょう?」
なんか、思っていたのと感じが違うなぁ。七條先輩。
「気のせいですよ。」
「どうやった、読心術!」
「企業秘密です。」
この人怖い。物凄く帰りたい。
「照れますね。」
「だからなぜ!?」
「でもね、今日は逃がしてあげられない。」
「私はなんの獲物ですか。」
「沙雪ちゃん?」
あ、まずい。
なんか地雷踏んだ。
「今日はいつまでに家に帰ればいい?」
「いつまでっ!?」
「沙雪ちゃん?」
「ひぇ!?いえ、あ、う、うちは友達のうちに泊まると言えばいつまででも…。」
そういうと、恐ろしいほどの笑顔で微笑んだ。
私なんかまずいこと言ったか…?
寒気が止まらないのだが。




