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書類の提出も終わり、生徒会選挙のリハーサルのため忙しくなってきた近頃最近。

いまだ駅前のカフェにも行けず、機嫌が悪い。


「さゆっち~。」

「はい?」


結構なスピードで走ってきたりりについて、この生徒会選挙期間。

彼女についてわかったことは多い。

こいつここ一年で私の扱いがうまくなった。

生徒会選挙でちょとしたミスをして落選してしまおうという私の考えは、

まあいとも簡単に見破られ、ちょっとした騒動の挙句に般若の顔をしたりりにつぶされた。

というかまたしても買収されたところをみると、

自分で自分が信用できなくなる。

この騒動の次の日に、隣町のクッキーを箱で渡された時は驚いた。

これ、高いよね。一時間以上なら場合と買えないんだよね。

巷で人気の子猫クッキーを交渉材料に出されたときは、おそらく小袋のほうだと思っていた。

だって高いんだよ、これ。

駅のカフェのこともあるし、ずっと後か流れることも考えてた私にとって、

大きな衝撃だった。

実はりりってお金持ちだったり?

うそ。玉の輿じゃん!

まあ、冗談だけれどもね。



うん。

買収されたからにはとうとう、

りりを裏切られなくなってしまった。

だめだ。逃れる手がねぇ。

今更だがな・・・ははは。


そして私が何時しかときめいた王子様とは、ここ一ヶ月会わない日は無いんじゃないかと思うほどに毎日見ている。


久々にみた彼は、第一印象の冷たーい人物ではなく、もの凄く甘い笑みを浮かべている。

へぇ、こんな人だったんだな~と人事ながらりりと話していると、りりは「うん」とやけに神妙な面持ちで言った。



「さゆっち明日の原稿考えた?」

「うん。大体の流れはね。後はアドリブで何とかなるかなって。」

「やっぱ、尊敬するなあ。私は一言一句間違えないように原稿読むのが精いっぱいだよ…。」


私だって最後までやるって決めたからには、全力を尽くしますよ。

しかし、今回は定員もぴったりだし(先輩目当ての女の子は入らない)

投票数で役職が決まるこの学校では、まあ何とかなるだろうというのが私の考えだった。


「あ・・・。啓先輩。」

「うん?」


啓という名前に心当たりはなく、誰だと思い振り返ると、七條先輩の姿。

・・・知らなかった。先輩啓って名前だったんだ。


「七條啓斗が本名だよ。御園江さん。」


え、私口に出していた!?

うっわ、凄い失礼じゃん。

でもずっと七條先輩って呼んでいたし…ねぇ。

少し誤魔化すようにりりを見る。


なんだか背筋に冷たい空気が流れた気がして肩をすくめる。

いや、風邪かなぁ…。


「あぁ、そうそう、私先生に呼ばれていたのよ。バイバイさゆっち!!!」


陸上選手顔負けのスピードで元来た道を去っていく。

何で行ってしまう!?

いや待ち。原稿の話するためだけに走ってきたの?

逃げるように去らなくてもいいじゃん!!!


・・・もしや七條先輩のことが好きとか?

あ、それなら納得できる。

そしたら生徒会に入りたいと思うよね。

うんうん。それなら応援するべきだよね。

尊敬する先輩と親友。

りりは可愛いし、目の保養になるじゃない!


「あのさ、一人百面相しているのは楽しいけど、なんかいいことでもあった?」

「ほっ?」


あ、まずい。

先輩いること思いきり忘れていた。

それにしても。

あー。やっぱり整ってるなぁ。顔。

ここ一か月ぐらいでこの人の仕事ぶりを見せてもらったけど、

やっぱりほかの人とは違う次元の神に愛された人なんだろうなと思う。

・・・やっぱ尊敬すっわ。


「明日、応援しているよ。一緒に仕事頑張ろうね。」

「明日の今頃には結果出ているのでしたね。緊張します。」

「心配しなくても平気だよ。君のうわさは僕たちの学年まで届いているからね。

・・・君は人気者だね。」

「先輩こそ人望がとても厚いじゃないですか。」


そういうと「そう?」と軽い返事が返ってきた。

にこやかに笑いながら、

一歩ずつゆっくりと近付いてくる。


・・・あの先輩、顔近くないっすか?

と思うほど、先輩は私に近付いてきた。

てか、背がでかいですよ、七條先輩。

私なんて彼の影に隠れてしまっているだろう。

場違いながら、今が放課後でよかったと思う。



窓からは夕日が差し込む時間。

生徒はほとんど下校していた。



女の子の中では身長が大きいほうだと思っていたけれども、先輩からしてみたら見下げる形だった。


大きい先輩を見上げる私の顔に、

先輩の髪がかかってきてくすぐったい。

ど、どうしたんで・・・しょうか??

先輩の手が首筋をなぞり、頬に添える。

訳が分からないよりもくすぐったくて、身をすくめる。



待て。違う、違うよっ。恥ずい!!!!

ちょちょちょ・・・離してください!

私さっき、友達の恋を応援するって決めたばかりなんですよぉ!


「沙雪ちゃん…。」


男の人に呼ばれたことのない名前で呼ばれ。

首筋に熱のこもった息を感じ、居た堪れなくなった私は先輩の胸を押し、逃げ出した。











次の日の

生徒会の選挙では特に大きな失敗もなく終わった。

この学校では、生徒会に立候補した全員に生徒会会長になる可能性がある。

それもそのはず、ここの学校の選挙は特殊で、この人がいいと思った一人に投票をし、その票数の多い順で会長から庶務まで決めるのだ。

一通り集計も終わり、再び集会が始まる。

勿論会長は七條先輩で、私はその隣に副会長として座った。

せめてあと百票少なければこの人の隣に座らなくてよかったのに!!

という言葉は投票してくれた人に失礼なので呑み込んだが・・・。


昨日のことは忘れられる筈もなく、

微笑みは上辺だけ。

ざわつく心。

私の心臓は締めつけられた。






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