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綺麗な人。
尊敬、初めて会った人なのに、ひきつけられる何か。
私にとって、初めての経験だった。
すらりと通った輪郭に、黒目の大きいシャープな目。
笑ったときに少し下がる目尻に惚れた。良く言う一目ぼれまではいかないけどね。
私が初めて久遠先輩を(一方的に)知ったのは高校の入学式のとき。
二年生なのに生徒会長として、ステージの上に凛とした姿で立っていた。
五分ぐらいの話であったが、
求し訳無いことに何の話をしていたのだろう。覚えていない。
勿論、全校生徒向けの原稿を読んだ話でしょうに。
友人が面倒だという全校集会が私は実は待ち遠しくて、
「ホント面倒www」と言いつつもいつも楽しみにしていた。
接点なんてなかったし、遠くから眺めているだけでよかった。
というか、バレンタインに女の子から本命のチョコレートをもらうほどの男勝りな私には、
恋に悩んでほにゃららら…なんて似合わないだろう普通にって思ってた。
そう、思っていたんだよ?
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「いや。嫌だよ。」
「反論は受け付けないよっ!!」
私こと御園江沙雪は友人である木暮りりから、期間限定の勧誘を受けているところ。
なんだか毎朝の習慣になっているのを見る限り、募集期間の間ずっと付きまとうつもりだろう。
「さゆっちは絶対やるべきだよぅ。ほら、大学受験も考えてるんでしょ?」
「指定校でね。りりもそうでしょうが。」
「だからやろう言ってんの生徒会。分からず屋!」
話を簡潔にまとめると、りりはどうしても生徒会をやりたいらしい。理由は不明。
しかし立候補したはいいものの、生徒会次期メンバーの中には仲のいい友人がいない。
それは一年間困るということで、私に白羽の矢を立てたというわけだ。
てか、だからと言って私を巻き込むのちょっと待てや。
「私の命がかかってんの。人助けだと思ってお願い。」
「命は賭けるな!」
随分切実に頼んでくるりりに、私の心もたびたび揺れる。
ええええ。そりゃもうグラグラとね。
お前、ほかの友人に頼むとかないのか!?
そこどうなんだよ、りり。
「こんな頼みごとできるのは、さゆっちだけなんだよぉう。
みんな笑って沙雪ならやってくれるよ。って断言してた。」
誰だ、そんなこと言ったやつ。
「えっと、藍ちゃんに香にいっちんに野里香ちゃんでしょ。
あとはふーこ、えりりんに七紀ちゃん。そうそう、きーちゃんとか・・・」
「もういいっす。」
いったい何人に聞いたんだ、この子。
てか私はなんだと思われてるんだよ。ただのお人好しじゃんか。
そりゃやってもいいんじゃないかと思わなくもないところでりりの思惑にまんまと嵌っているのだが、
やりたくない理由はもちの論でお分かりのことでしょう。
生徒会には、おそらく先輩もいる。
あの七條先輩が。
今年も生徒会長に立候補したと風のうわさで聞いた。
冒頭で一目ぼれした、と豪語していた私とはまあ一年見事に接点などなく。
・・・忘れかけていたといってしまっても、過言ではなかった。
しかしこんな気持ちを持っていた手前、
なんか下心丸見えで生徒会に立候補したのならば、もう・・・生き恥だ。
現に先輩目当ての立候補者が七條先輩直々につぶされているという。
皆恐怖の顔を貼り付けて、生徒会室から退室していく。
・・・なにされてんの!?
「ね。さゆっち。一緒にやろうよ。」
「だから、嫌・・・」
「駅前カフェ名物五人前パフェ一つ。」
「乗ったぁ!!!」
後先のことなんて知るか。
一度食べてみたかったんだよ、五人前パフェ!
高校生の懐事情が悲しい私にとって願ってもないチャンスじゃないの。
私は、即答した。
その勢いのまま生徒会室に行った私はやっぱ後先考えればと良かったと思い直したが、遅かった。
りりが立候補するために一緒に訪れた時と違うのは、立候補者が私でしたということ。
立候補者募集期日までにこの書類よろしくと、七條先輩自ら満面の笑みで書類を手渡されて、
私は判断を誤ったことを悟った。
しかし解せないのが、生徒会室を出て教室に戻った途端りりが半べそを描きながら
「本当にありがとう。わたし、さゆっちのためなら死んでもいい。」
と私の手を離さなかったことである。




