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廃棄予定の世界で  作者: 生切 メイジ
19/25

閑話2 水着の事情と実は作っていた一人

閑話です。気楽に見て下さい。

 湖というものがある。

 これは、明確な定義が無いらしいのだが、一般的に水深が深い静止した水のかたまりを指すらしい。でき方も、地殻変動でできたり、火山活動でできたりする等様々だ。

 これはこの世界の人類種領域でも基本的に同じらしい。


 しかし、この新天地においてその常識が通用するとは限らない。

 例えば、サラから聞いたことなのだが、冒険者の噂で生きた湖というものが存在するらしい。当然、生物として数えられていて、呼吸も睡眠も捕食もするというのだから不思議な話だ。他にも、甘い水の湖から見た目が普通なのに入った瞬間氷漬けになる湖など、様々な湖が存在しているという噂だ。

 まあ、たかが噂ではあるのだが此処では結構重要らしい。情報が少ない新天地という場所では、噂も重要な情報源ということなのだろう。

 もちろん、デマもかなりの割合で混ざっているらしいが。

 それはともかく、なぜ、俺がこんな話をいきなり始めたのかと言えば、それはこの拠点が湖畔にあるということともう一つ理由がある。


 今朝の事だ。

 俺が、最近日課にしている十二神流の型の構えを確認していた時だった。あの猿との戦い以来、さすがに現状のままではダメだと思い直し、型の稽古だけは続けている。それは、まるで子供が見よう見まねでやっているお遊びのようであったが、それもやらないよりはましだと考え、此処に滞在している間、毎朝行っていた。

 その稽古の最中に忍び寄ってきた人影を見つけ、俺はそいつに声をかけた。


「なんだ。なんか用か?」

「へへっ、お邪魔してすみませんね。九鬼様。実は、一つご相談がございまして……」


 この少女は、元々進んで猿達の支配下にいたゴブリンと呼ばれる妖精の一種族だ。

ゴブリンは、本当にどこにでもいて人類領域では畑等を荒らす種族だと認識されているらしく、積極的討伐対象に認定されている。また、種族的には知能はそれほどでも無く、力も弱く、また能力も無い、人類種にさえ劣るとまで言われている奴らだ。

 この少女は、確か、名前はリンで、ここら辺に住んでいたゴブリンの村の村長の十五番目の娘らしい。服の制作にかかわっており、こちらも服の事を任せるのならと眷属化と鬼人化を行っている。将来的には、釛の元で働いてもらう予定だ。

 容姿は、頭の天辺からピンッと立っている一本の角が印象的で、現在鬼人化した中では見た目で鬼と分かる珍しい個体だ。薄い黄緑色の髪に緑の肌をしており、顔は小悪党のようなにやけ面をしている。


 胡散臭い奴だが、仕事はきちんとしており、結構優秀な奴だとサラが珍しく褒めていたのを覚えている。

 何せ、今俺が来ている服も下着もサラのメイド服からガーターベルトまでリンがすべて作ったのだ。記憶が流れ込んだのと良い素材があったのも一因ではあるが、ここまでいい仕事をしてくれた奴を優遇しないわけにもいかず、現在支配下の連中の中で一番いい部屋に住んでいるのは、リンということになっている。(釛は【蜘蛛の楽園】の自宅の穴が住処となっていてそこから毎日通っている。実際、此処の支配者はこの少女だと言える)

 しかし、リンは俺に話しかけるということが殆ど無い。

怖がっているのか、遠くから見てくるだけで話をしたことがあまり無かったし、こちらが近づくと逃げてしますのだ。それが、今はまるで親しい客に話かける商売人のような口調だったから、俺が警戒を強めたのも無理からぬことだったと言える。


「相談? なんだ、もっといい素材が欲しいとかか?」

「いえ、それも良いのですが……、聞いたところによりますと九鬼様は女子に興味がおありとか」

「そりゃ、俺も男だからな。それが、どうした」

「ええ、で、あれば、このお話に乗っていただけるかと思いまして……」

「……言ってみろ」


 リンの提案は、簡単に言うと水着を作ったので俺とサラとリンとで海水浴ならぬ湖水浴でもしよう、ということだった。

 実に、素晴らしい提案だと思ったが、しかし彼女が何をたくらんでいるのかが分からなかった。リンは、そのような皆で絆を深めるために遊ぼうといったようなことを言うような奴では無かった。

 まあ、俺達を害するようなら何らかの制裁を加えればよいと俺は簡単に考え、その提案に乗った。

 すぐに間違いだったと後悔するとも知らずに。


「という訳で、やって来ました! プライベートビーチ!」

「ビーチでは、ありませんよ、リン。しかし、このビキニは少し露出が多いのではありませんか?」

「いえいえ、いまどきはこんな物ですよ、サラ様。それにその赤い水着もよくお似合いです」

「そうですか? そういうあなたも、その青い水着似合っていますよ」

「本当ですか? いやー、サラ様に褒められて私、嬉しいですよ」


 サラとリンの女の子同士の会話が聞こえてきても、その二人が肌をこれでもかと露出させ実に見事な水着を着ていても俺の気持ちは晴れなかった。理由は、俺の水着にある。


「おい、リン」

「なんですか? 九鬼様?」

「なんで、俺の水着も女物なんだ」


 そう、なぜか俺の水着も女物なのだ。といってもさすがにビキニとかそういうものでは無い。トランクス系の水着なので下はかろうじて男物だと言い張れそうだが、なぜか上もありそれを着ていかないといった時にはリンからもサラからもとんでもないと怒られ、無理矢理着せられてしまったのだ。

 一応言っておくが、俺は間違いなく男だ。顔は確かに女に見えなくもないが、しかし言うほどでは無くやっぱり男と言われた方がしっくりくる顔だと自分では思っている。

 だから、このような仕打ちは正直嫌なのだが、リンは妙にキラキラした目で鼻息荒く断言した。


「ハア、ハア、ハア、いえいえいえいえ! 似合っております、似合っておりますとも!」

「いや、似合っているとかでは無く、なんで女物なのか聞いているのだが」

「そんな些細な事、かわいさには関係ないのです。かわいいは正義! ビバ! ショタっ子!」

 

 おかしい、この子こんなキャラでは無かったはずだ。こう、子悪党的な悪巧みを考えている方が似合う奴だったのに、今では鼻息荒くこちらを凝視してくる。


「ダ、ダメ! もう……ガマンできない! 九鬼様! ぺロペロしてもよろしいですか!?」

「ダメに決まってんだろ!?」


 くっ、股のあたりに手をあてている姿はかなりエロいのに、こいつが変態であるのと、発情対象が自分というだけでこうも気持ちが引くものなのか!?


「サラ、お前からも何か言って……サラ!?」


 俺が、驚いたのも無理は無い。信用していたサラまでもがこちらににじり寄ってきているからだ。


「ご主人様……申し訳ございません」

「サラ! お前もか!」

「さあ、大人しくなさって下さい、九鬼様。女の子にこんなことされる機会などそうはありませんよ」

「いや、確かにそうだけど……ひゃっ!」

「ふふ、ご主人様はこんな味がするのですね」

「サラ! お前いつの間に! 離せ、ってリン! そこはダメだ! マジで!」

「九鬼様、そこでは分かりませんよ? きちんと単語で言ってもらわなければ」

「ちょ! ホント、ダメだって。 あっ! んっ!」

「ふふふ、本当にかわいい声で鳴きますね。ご主人様」

「さあ、観念なさって下さい、九鬼様」

「い、いや……ダ、ダメええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 そんなこんなで、俺達の湖水浴は結局水に入ることなく終わったのだった。


 緑の肌の子に似合う水着が分からず悩みました。

 というか、書き始める時には、サラの水着で九鬼君大勝利となるはずが、書き始めたら九鬼君が大変なことになっていました。

 本当、なんでこうなったんでしょう。謎です。

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