第八話 能力と目的地
今更ですが、小説情報の存在に気がつきました。(正確に言えば、思い出しました)
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お礼が遅れて申し訳ございませんでした。
あれから、三日ほどたった。
俺たちは、順調に旅を続けていた。
サラはメイドを崇拝しているだけあって、食料の調達などの身の周りの世話を進んでやってくれた。本当に、いつ寝ているのだろうと思うぐらい献身的に働いていた。
この三日間、歩いている時はこの世界の情報を聞いたり、仲間は大事にしなければならないといった道徳教育を受けたりした。正直、サラの教え方は、よく横道にそれるため、あまりうまくないと思うが、それを抜きにしても本当に様々な事を教えてくれて感謝している。
時々、新天地の生物が襲ってきたりしたが、すべてサラが道中で拾った、なんだかいい感じの木の棒を使って倒していた。ついでに、そいつらを四次元ポーチの中にあったナイフなどで解体し、素材として使えるものを剥ぎ取っていった。その素材たちは、四次元ポーチの中に納まっている。
ちなみに、人間から剥ぎ取ったものは、お金を含めたすべてをサラが管理している。銃までとられたのは、納得がいかなかったが、「ご主人様には、まだ早すぎます」ということで、今はポーチの中だ。
四次元ポーチは、冒険者に必需品と言われている魔道具の一つで、いい物になると家一軒ぐらいの物体も楽々入るらしい。サラが持っているポーチが、いい物なのかは分からないが、バンバン物を入れている様子を見ると粗悪品というわけではなさそうである。
この中には、調理用具もありなかなか重宝している。
魔法や魔道具のことも聞きたかったが、その理論だけで頭が爆発しそうになったので、後回しにしている。
そして、ここからが重要な所なのだが、俺は能力のことも学んだ。
サラはこの世界でもそこそこ珍しい、二つの能力持ちだということだった。基本的に固有種一匹につき能力は一つとなっているらしく、複数の能力持ちは、別々の固有種の子孫との間に生まれた子に多く出るらしい。
まあ、珍しいとはいっても、人類領域の少し大きい町なら必ず一人はいるレベルらしいが。
それを聞いた時は、すごいと思ったが、能力の内容を聞いて少しがっかりした。
まず一つ目の能力は、『早嫌眼』と呼ばれる、その目で見た生物の強さが分かる能力だった。
初めて聞いた時は、それなんてスカ○ター? と思ったが、詳しく聞いてみるとそんなに使い勝手の良い物では無かった。
どうやら、なんとなく強い弱いがわかる程度らしい。また、肉体的に強いのか精神的に強いのか判別が出来ない、そもそも強い弱いの基準が能力保有者のサラにも分からないといったように、微妙な能力なのだ。
名前は、この能力を発見した人類種の一人が「早々と見切りをつけられる嫌な眼」と言ったことが由来らしいが、真偽は不明。
二つ目の能力は、『血液検査』という、飲んだ血に関することなら何でも分かる能力だった。
使いどころがまったく無いように見える能力だが、蚊というかサラの元の種族であるオオアカチスイムシには、結構重要な能力らしい。というのも、新天地の生物の血は有毒であることが多く、強い生物の血が吸えたと思ったら毒で死ぬなんてザラなためである。そのため、この能力持ちは尊敬の念を集めるのだとか。
まあ、使う頻度も自分が吸うとき以外ほとんど無いらしいのだが。
「それじゃ、俺の血のことも分かっているんじゃないの?」と言ったら俺の時は記憶の流入でそれどころでは無かったらしい。
ちなみに、能力の命名権は発見者に与えられるらしい(ただし、人類種に限る)。なので、発見した人類種の種族によって、名前は大きく変わるらしい。サラの能力も前者はロイテ教国の前の国の人間が、後者は、マグス王国の魔人が付けたらしい。
まあ、とにかく俺はサラの血液検査によって自分の血液を調べてもらったのだ。
サラは、快く承諾し、サラの手のひらにほんの少しだけ垂らした血を舐め、能力を発動した。
しかし、ここでちょっと予想外のことが起きた。
普通であれば能力を発動した時点で、すべて分かるらしいのだが、俺の血はすぐに分からなかったらしい。
結局、今の今まで、つまり人間たちを殺した日から三日目の夜まで時間がかかってしまったのだった。
「時間をかけてしまい、申し訳ございません、ご主人様」
「いや、サラのせいじゃないし。いいよ、気にしなくて」
サラが起こした、たき火で暖まりながら俺は言った。
ちなみに、夕食は、ものすごい速度で突っ込んできたイノシシ――ダッシュボアというらしい――を焼いた物だった。
その肉は、脂がたっぷりと乗っており、焼いたサラの腕が良かったのか、口に入れた時にとろけたように感じるほど柔らかく、とても美味であったと伝えておく。
「それでは、分かったことの中から重要な事だけをお伝えしたいと思います」
「うん。重要な事と言わず、能力関係だけでいいよ」
「分かりました。まず、ご主人様は血に関する能力を二つ持っていらっしゃいます」
おお、サラと同じ二つの能力持ちと言うことかな?
「一つ目の能力は、簡単に申しますと眷属を作る能力でございます」
「眷属?」
この世界に来てからは、聞いたことが無い単語が出てきた。記憶の中では何回かあるが。
「はい。眷属という言葉は、ご主人様のご記憶の中から最も適する言葉として抜粋しました。詳しく申しますと自分につき従う者を作り出すといった所でしょうか」
「つき従う者を作り出す……」
「作るというとまた御幣があるかもしれません。血を与えた者に力を与え、自分の支配下に置く能力というのが、一番正確な表現だと思われます」
「…………」
「どうかなさいましたか?」
「いや……」
なるほど、その能力でサラはついて来てくれているのか。そう思ったらなんだか寂しくなってしまった、などと思うこと自体、都合がよすぎる考えなのだろう。
そうだ、このような能力でもなければ、自分なんかについてくる奴はいないだろう。
「……うん。分かった。もう一つの能力は?」
「はい。もう一つの能力は、血を与えた生物を鬼人とでも呼ぶべき生物に変える能力でございます」
「鬼人?」
「今の私がその状態です。変化内容は、角が生えることと人間形態になる事、後は雑食になる事だと推測できます。ただ、完全な変化内容は私にも分かりませんでした。ちなみに、鬼人と言う言葉はこの世界に存在しておらず、今、私がご主人様のご記憶を参考に作らせて頂きました」
「角? サラに角なんて……」
「いえ、小さいですが確かに存在します」
「へえ、でも眷属を作る能力と分ける必要あるの?」
なんだか分ける必要が無い気がする。
「そうですね、例えば、眷属にはするが鬼人にはしないといったことができるようになります。これによって人間形態にしたくないような生物を眷属にすることができます」
そんな場合は、あるのだろうか?
「まあ、いいや。今日はもう遅いし、寝よう」
「いえ、お待ちください。まだ、明日の予定をお話しておりません」
「明日? でも、明日もどうせただ、目的地に向かって歩くだけなんじゃ……」
「その、目的地に明日到着する予定です」
え? 待てよ、ということは?
「つまり、俺のぐうたら生活の第一歩が始まるということ!?」
「……その認識は後でじっくりと話し合って直すとしまして、明日のお昼頃には【蜘蛛の楽園】に到着できると思います」
やっと、次に進める。