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暁に消え逝く星  作者: ラサ
第五章

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提案


 戻った三人の衣服についていた返り血を見て、リュケイネイアスは渋い顔をし、アルライカは驚いた顔をしていた。

「エギル様とファレス様に、今から全員で行くと伝えて来い、ライカ。今後のことを話し合う」

「おう」

 行く前に、イルグレンに声をかける。

「初陣はどうだった?」

「ああ。なんとか」

「俺やお前のときよりは立派だったさ」

 ソイエライアが横で付け足す。

 アルライカはソイエライアのようにイルグレンの頭を軽く撫でた。

「そうか、よくやった」

 それだけ言うと、アルライカは馬車のほうへ走っていった。

「やはり、そっちに行ったか」

 リュケイネイアスの言葉に、ソイエライアもやはり苦々しげに答える。

「ああ。皇子の顔も知らない奴らだった。腕はそこそこあるようだが、あの場に来た奴らは、全部片づけた。周囲も探ったが、とりあえず逃れた奴はいないな。ケイ達は?」

「こっちはいたって平和だ。一応ライカには馬で周囲を探らせたが、見張っている気配もなかった。昨日の様子見とは違うか、レシア?」

「違う気がする。昨日の今日で時期としては合うけれど」

「とりあえずお前らは着替えて来い。それから馬車へ。俺は先に行ってる」

 促されて、三人は天幕で着替えることにした。

 アウレシアは自分用の天幕へ、ソイエライアとイルグレンももう一つに入り、手早く着替える。

 そうして、馬車へ行くと、周囲はぐるりと護衛の者達で囲まれており、物々しい雰囲気を与えている。

 アルライカが馬車の入り口で待っている。

「お待ちかねだぜ」

「ああ」

 ソイエライアが先に入り、次がアウレシア、イルグレンと続き、最後にアルライカが入る。

 中にはエギルディウスが寝台の上に座り、その横にはソルファレスが床に直に座って控えている。

 その隣にリュケイネイアスが胡坐をかいて座っている。

 イルグレンを確認すると、三人は立ち上がる。

「皇子様!!」

 押さえてはいるが、切羽詰ったようなソルファレスの声が聞こえる。

 胸に手を当て、最敬礼する。

 イルグレンには、その仕草が何かそぐわぬように感じられた。

「イルグレン様、こちらへ。お座りください」

「――」

 一瞬戸惑うイルグレンに、アウレシアも促す。

「ほら、あんたが座ってくれないと、あたしらも座れないんだよ。行って」

 イルグレンは寝台のエギルディウスの隣に座った。

 それから、エギルディウスが皇子の隣に座り、残りの五人が床板に敷かれた絨毯の上に座り込む。

「――」

「イルグレン様。ご無事で何よりでした」

「心配致しました」

 エギルディウスとソルファレスが声をかける。

「大事ない。それより、話は聞いたのか?」

 リュケイネイアスがソイエライアに視線を流す。

「ソイエ、今日のことをエギル様に報告してくれ」

「わかった」

 ソイエライアがエギルディウスとソルファレスに簡潔に今日の出来事を説明する。

 エギルディウスとソルファレスは渋い顔をしてそれを聞いていた。

「刺客の剣の型は東のものではなく西のものだと思われます」

 最後の言葉に、ソルファレスが顔色を変える。

 エギルディウスを振り仰いだ。

「エギル様、西からとは――」

「ファレス、それが重要なのではない。今のところは」

 護衛隊長の言を、エギルディウスが短く遮った。

 そうして、皇子に向き直る。

「刺客が来たのなら、今後は旅を急がねばなりません。サマルウェアまで、あと一月を切りました。剣の稽古はもうおやめください」

 イルグレンは驚いた。

「なぜだ?」

「ここから先は、サマルウェアに着くまで、大人しく馬車で過ごしてもらいたいのです。退屈しのぎはもう十分でございましょう?」

「なんだと――」

 イルグレンの顔色が変わった。

 さすがに、アウレシアとソイエライア、アルライカも表情を険しくした。

 退屈しのぎに、皇子が剣の稽古をしていたのではないことを、三人は十分に知っていたからだ。

 だが、エギルディウスはさらに言を継ぐ。

「お命がかかっているのです。渡り戦士達も無用な危険を被りました。馬車の中にいてくだされば、無用な危険もございません。貴方様をお守りすることに専念できます」

「――」

 正論だった。

 エギルディウスはいつも、その状況に合わせて最善を選ぶ。

 今日は、運がよかっただけだ。

 もし、敵が今日の二倍だったら、自分は勿論、ソイエライアもアウレシアも死んでいたかもしれないのだ。

 渡り戦士達と合流する前の退屈な旅に戻れば、少なくとも命の危険は格段に低くなる。

「――」

 イルグレンは、アウレシアを見た。

 もの言いたげな眼差しが自分を見ている。

 以前の自分なら、引き下がっただろう。

 だが、今回は引き下がれない。

 また、籠の中の鳥のように閉じ込められるのはたくさんだった。


「ならば、私から提案がある」


 強い言葉が、皇子の口から出た。



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