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暁に消え逝く星  作者: ラサ
第三章

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淋しい夜明け


 不意に、イルグレンが空を見上げた。

「レシア、星が消えていく」

「え?」

 空を見ると、東のほうがうっすらと白み始めていた。

「ああ、夜明けが近いんだ」

 明けていく夜明けの紫が、星々のかすかな光に溶け込み、徐々にその姿を消していく。

 それは、アウレシアにとってはすでに見慣れたなんでもない光景だった。

 アウレシアがイルグレンに視線を戻すと、彼はまだ、東の空を見上げていた。

 横顔は、憂いに満ちていた。。

「グレン?」

「――私は、夜明けが来るのは喜ばしいことだと思っていた」

 独り言のように、呟く言葉。

 まるで、誰にも聞いてもらえぬかのように、小さく、静かに響く声だった。

「だが、暗闇の中ひたすらに瞬く星が、夜明けとともに、こんなに静かに淋しく消えていかねばならないのは、哀しいことだと思う」

 もう一度、アウレシアは明けていく夜空を見上げる。

 イルグレンの言葉を聞いてから見る夜明けの空は、彼の言葉通りの世界に思えた。


 太陽が昇るまでのこの僅かなひと時が、群青の夜空に小さくひたむきに瞬く星の光を消していくことが、こんなにも切ないものだとは――


「――」

 言葉をなくし、アウレシアはイルグレンとともに、しばし夜明けの空を眺めていた。

 火のはぜる音が、時折聞こえるだけの、静かに哀しいひと時。


「夜明けというものは、淋しいものなのだな」


 そう言うイルグレンこそ、淋しそうに見えた。

「グレン――」

 視線を感じたのか、イルグレンはアウレシアを見つめ、静かに微笑った。

「お前が起きてきてくれてよかった。

 淋しい夜明けも、一緒にいてくれるものがいれば、淋しくなくなる。

 誰かと一緒にいるのは、とても、大切なことだ。

 私は、今この時、ここに――私の隣に、お前がいるのがとても嬉しい」

「――」

 アウレシアは思わず手を伸ばし、指先で目元に触れる。

 間近で見る皇子の顔は、一人前の男の顔をしていた。

 端正なのに、どこか憂いを帯びた、若い男の顔。

 眼差しは、美しく滲むような薄紫だった。


「あんたのその瞳――夜明けの紫だ」


 イルグレンも手を伸ばし、アウレシアの頬にそっと触れる。


「お前の瞳は、星のような琥珀だな」


 互いの瞳を覗き込むように近づく。


「とても、美しい色をしている――」


 互いの瞳を見つめながら、どちらも瞳を閉じなかった。

 互いが、頬に触れた相手の手に、自分の手を重ねた。

 そっと近づく二つの影が、静かに重なる。

 くちづけは、優しく触れ合って離れた。

「――」

 それから、もう一度。

 今度は互いに瞳を閉じた。

 深く長く、感触を探るように触れ合って、何度も何度も繰り返された。


 星が消えていくのも忘れるように。




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