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寿綾乃という女 第2部  作者: トモサン


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52/99

寿綾乃という女 第2部 52

 結局、その日は、それで、終わりだった…


 諏訪野伸明と、たわいもない話をして、軽い食事をして、別れた…


 思えば、これも、付き合っているといえば、付き合っているのだろう…


 諏訪野伸明と、たまに会い、食事をして、おしゃべりをする…


 これもまた、付き合っていることなのだろう…


 だが、これでは、付き合っているといえないという意見の人間もまたいるに違いない…


 なぜなら、まだ、一度も男女の関係になってないからだ…


 ならば、付き合うということは、一体、どういうことなのか?


 疑問がある…


 ホテルに入り、セックスをすることが、付き合うことなのか?


 根本的な疑問だ(笑)…


 セックスをすれば、わかりあえるのか?


 そんな疑問がある…


 私は、自分自身を振り返り、ナオキとは、わかりあえたが、他にカラダの関係を持った男で、わかりあえたと思う男は、皆無…


 ひとりもいなかった…


 これが、現実だろう…


 セックスをすれば、互いに、わかりあえる関係になるはずがない…


 そもそも、わかりあえるかどうかは、普段の言動を見て、決めるものだ…


 普段の行動を見て、


 …このひととなら、うまくやれそう…


 あるいは、


 …このひと、ムリ!…


 と、決める=判断するものだ…


 カラダを重ねれば、わかるものではない(笑)…


 また、誰もが、このひとなら、OKと思って、ホテルで、関係を持っても、その後、その関係が、続くかどうかは、わからない…


 男女ともに、遊びだった可能性もあるし、その一夜で、コリゴリした可能性もある(笑)…


 先日、あるテレビタレントの女性が、


 「…私は、男のひとと、いたしてから、付き合う…」


 と、テレビで、発言したが、ネットでは、順序が逆だろうという意見が、大半だった…


 セックスはあくまで、おまけ…


 通常は、生活だ…


 いっしょに、生活をして、合うか否か…


 それが、すべてだろう…


 その発言をしたテレビタレントは、わざとウケ狙いをした可能性もあり、本音は、わからない…


 だが、普通は、そうだろう…


 生活が合うか否か…いっしょに、暮らしていけるか、否かだろう…


 言葉は悪いが、セックスは、あくまで、生活の一部…


 セックスが一番ではない…

 

 なにより、二十代の若い男女でも、最初は、セックスに溺れるかもしれないが、数年も経たずに、お互いに、なにもしなくなるものだ(笑)…


 だから、それを、交際の条件の一番上に持ってくるのは、そもそもおかしい…


 私は、考える…


 私は、そんなことを、思いながら、帰途についた…


 家では、当然のことながら、ひとりぼっち…


 誰もいなかった…


 考えてみれば、この誰もいないというのは、高校生のとき以来…


 実家を出て、矢代綾子から、寿綾乃と名前を変えて以来だった…


 そして、まもなく、藤原ナオキと出会って、男女の関係になった…


 ナオキは、当時、ユリコと結婚していた…


 が、


 結局は、私との関係が、決定打になり、ナオキと離婚した…


 ユリコの恨みを買う原因が、できた原点でもあった…


 私がナオキと、男女の関係になった原因は、私とナオキが、互いに、惹かれたこともあるが、ナオキが、将来、成功するに違いない逸材だと、私が、直観したこともある…


 以前にも、何度も言ったが、私、矢代綾子が、寿綾乃と、名乗った際に、亡くなった母が、


 「…寿綾乃は、お金持ちの血を引く娘…だから、莫大な財産が、手に入れられる…でも、そのために、周囲に敵ができる…その敵を倒すためにも、強い男を見つけなさい…強い男とは、腕力ではなく、財力…自分を守ってくれる男を探しなさい…」


 と、告げた…


 文字通りの遺言だった…


 従妹の寿綾乃は、お金持ちの血を引く娘…


 その従妹が死んだが、その死は隠し、その従妹になりすまして、生きろ!


 それが、母の遺言だった…


 莫大な財産を手に入れられるかも、しれないからだ…


 そして、地方から上京して、誰も知らない地に足を踏んだ…


 都会にいれば、誰も私が、矢代綾子であることを知らない…


 それが、上京した理由だった…


 そして、まもなく、藤原ナオキと知り合った…


 私の成功の原点だった…


 後に大成功する、藤原ナオキと知り合い、いつのまにか、同棲した…


 が、


 ナオキと二人きりではなかった…


 ナオキの子、ジュン君がいたからだ…


 ジュン君の母、ユリコは、ジュン君をおいて、失踪した…


 その結果、私は、ジュン君の面倒を見るはめになった…


 いわゆる、ジュン君の母親代わりになった…


 が、


 後に明らかになったが、本当は、ジュン君は、ナオキの子供ではなかった…


 ナオキとジュン君は、血が繋がってなかった…


 ジュン君は、ユリコが、ナオキではない、別の男との間にできた子供だった…


 だから、今、思えば、疑似家族…


 私とナオキ、ジュン君の三人が、血が繋がってない…


 本物の疑似家族だった…


 疑似家族だったが、居心地は良かった…


 決して、裕福ではないが、居心地が良かった…


 決して、裕福ではないといったのは、まだ、ナオキが成功する前だったからだ…


 ナオキは、階段を駆け上がるように、成功の階段を、瞬く間に、駆け上がった…


 が、


 その過程で、失うものも多かった…


 本来、女好きなナオキは、あっちの女、こっちの女と、女の間を渡り歩き、そのたびに、女に食い物にされた…


 そして、女遊びに忙しいナオキは、家に寄り付かず、別の家を借りた…


 だから、家では、私とジュン君だけになった…


 私とジュン君、二人だけの生活…


 だから、正確にいえば、私とジュン君、ナオキの三人で、暮らした時間は、決して長くはない…


 幸せな疑似家族でいられた時間は、決して、長くはない…


 しかし、今、思えば、それは、幸福な時間だった…


 紛れもない、幸福な時間だった…


 私は、振り返る…


 だから、今、私が、五井記念病院を退院して、ナオキと暮らすのは、十年ぶりぐらいか?


 そして、今度は、ジュン君がいない…


 ジュン君は、クルマで、私を轢き殺そうとして、今は、拘置所の中…


 だから、純粋に、ナオキと二人だけの時間は、初めてかもしれない…


 私は、思った…


 そして、これは、幸運?


 自分自身に問うた…


 私とナオキが、二人だけで、暮らすのは、幸運か否か…


 答えは、幸運だった…


 幸運以外のなにものでもなかった…


 神様に感謝するしかない幸運…


 にもかかわらず、今、私は、諏訪野伸明との結婚を夢見ている…


 これは、一体どういうことだ?


 自分でも、意味不明…


 わけがわからない…


 同時に、自分は、こんなにも、欲深かったのか、と思う…


 自分は、今、十分に幸運だと、自分でも、わかっている…


 理解しているにも、かかわらず、もっと上を狙う…


 諏訪野伸明と結婚すれば、藤原ナオキ以上のお金持ちと結婚できるからだ…


 藤原ナオキは、IT長者…


 孫や三木谷に比べれば、はるかに、小さいが、成功者だった…


 従業員千人の会社の創業社長…


 誰が見ても、十分に成功者だ…


 その成功者の事実上の妻というか、パートナーの位置にいる私が、別の男と結婚したいと、願ってる…


 これは、傍から見れば、明らかに、高望みと言うか…


 自分自身をわかってないというべきか…


 もういいだろう…


 これ以上は、いいだろう…


 と、言う声が、今にも、周囲から聞こえてきそうだ(苦笑)…


 にもかかわらず、諏訪野伸明との結婚を夢見ている…


 諏訪野伸明との結婚を、諦めない私は、やはり、異常なのだろうか?


 とんでもなく、欲望が、強いのだろうか?


 わからない…


 自分でも、わからない…


 私は、自分自身は、正常と思う…


 普通と考えるが、どうだろう?


 違うのだろうか?


 私は、悩んだ…


 誰もいない、自宅で、ひとりぼっち…


 何度もいうが、病院に入院中は、除き、こんなひとりぼっちの時間は、過ごしたことがない…


 ひとりでいるから、考える…


 考える、時間がたくさんあるからだ…

 私は、ダイニングで、コーヒーを沸かすことにした…


 コーヒーは好き…


 以前もいったが、コーヒーは、好きだ…


 あらかじめ、パックに豆を挽いたコーヒーがスーパーで、売られているので、それを、買って、家に置いてあったのだ…


 それを、取り出し、お湯を沸かして、飲むことにした…


 ゆっくりと、コーヒーを飲みながら、ボンヤリと、考え事をしたかった…


 また、コーヒーの味もそうだが、私は、コーヒーの香りもまた、好きだった…


 お湯を注ぐと、まるで、コーヒー豆の香りが花開くように、香る…


 それが、好きだった…


 私にとって、至福の瞬間だった…


 私は、やることがなにもないので、テレビをつけた…


 テレビの関係者には、申し訳ないが、ただダラダラと、見るのは、テレビが一番だった…


 ネットは、検索するには、意志が必要…


 なにか、目的があって、検索しなければ、ならない…


 その点、テレビは、ダラダラと、見ることができる…


 自分が、画面を見ても、見なくても、テレビは、勝手に、映像を流しているというか…


 だから、私は、コーヒーを注ぎながら、テレビを流し続けた…


 正直、テレビをつける必要はなかったが、退屈だったからだ…


 やはり、ひとり暮らしは、退屈だった…


 そのせいだ…


 と、コーヒーにお湯を注いでいると、テレビから、


 「…が、自殺…」


 と、いう声が聞こえてきた…


 …自殺?…


 嫌な言葉だ…


 私は、思った…


 と、同時に、気付いた…


 誰が、自殺したのだろう? と、いうことだ…


 誰か、有名人でなければ、普通は、自殺をしても、名前は、言わない…


 例えば、電車の飛び込みは、言葉は、悪いが、ありふれている…


 だから、誰が飛び込んだか、仮にわかっても、その名前を放送するか、どうかは、わからない…


 それを、考えれば、有名人…


 芸能人か、政治家など、世間に知られた有名人かもしれないと、思った…


 そして、テレビを振り返った…


 そのときだった…


 偶然…


 まさに、偶然…


 冬馬…


 菊池冬馬の顔が、目に飛び込んだ…


 あの五井記念病院の理事長だった、菊池冬馬の顔が、目に飛び込んで来た…


 私は、唖然とした…


 驚きで、うっかり、コーヒーにお湯を注ぐ作業が、おろそかになった…


 具体的には、コーヒーのパックから、はずれて、お湯を注いだ…


 テーブルに、お湯を注いで、しまった…


 …菊池冬馬が、自殺?…


 …あの菊池冬馬が自殺?…


 正直、意味がわからなかった…


 あの目に険があり、一癖、いや、二癖も、三癖もある、菊池冬馬が、自殺って?…


 自殺とは、もっとも、縁遠い人物だと思っていた…


 その冬馬が、自殺なんて?


 驚いた…


 まさに、驚愕した…


 私は、テレビ画面に釘付けになった…


 まるで、名画かなにかを鑑賞するように、ジッと、まばたきひとつしないで、テレビ画面を凝視した…


 すると、菊池冬馬が、自殺したのは、わかったが、死んだとは、まだ、言っていないことに気付いた…


 死んだとは、まだ言っていない…


 遺体うんぬんの話は、まだ出てなかった…


 だから、たぶん、死んでいない…


 私は、思った…


 それから、少し悩んだが、さっき別れたばかりの、諏訪野伸明に、電話した…


 なにか、知っているに違いないからだ…


 私が、慌てて、電話をすると、


 「…もしもし、諏訪野です…」


 と、すぐに、伸明が電話に出た…


 「…寿です…さきほどは、どうも…」


 私は、言った…


 「…寿さん?…」


 意外な感じだった…


 「…いえ、今、冬馬…菊池冬馬さんが、自殺したと、テレビの報道で、見たので…」


 私の言葉に、伸明は、絶句した…


 しばし、間を置いて、


 「…エッ? 今、なんと言いました?…」


 と、私に聞き返した…


 「…菊池冬馬さんが、自殺したと、テレビで、言ってます…」


 伸明が、


 「…」


 と、黙った…


 なんといっていいか、わからなかったのかもしれない…


 「…そんな…なにかの間違いでしょ?…」


 「…いえ、間違いでは、ありません…今、テレビに、冬馬さんの顔写真と、名前が出てます…」


 「…ウソ?…」


 絶句した…


 「…間違いでは、ありません…」


 私は、繰り返した…


 「…わかりました…今、家や会社に電話して、確かめます…後で、折り返し、お電話します…」


 伸明は、言って、電話を切った…


 至極、慌てた様子だった…


 当たり前だ…


 菊池冬馬は、五井一族…


 そして、五井家当主の、諏訪野伸明は、冬馬を子供の頃から知っている…


 その冬馬が自殺したのだ…


 驚くなというほうが、無理に違いない…


 私は、そんなことを、考えながら、テーブルにこぼれた、お湯を、ふきんで、拭き取った…


 それから、また、ゆっくりと、コーヒーのパックに、お湯を注ぐ続きをした…


 我ながら、手が震えた…


 思わず、手が震えていた…


 一体、自分が、こんなふうに、手が震えるのは、いつ以来だろうか?


 漠然と、思った…


 記憶がない…


 覚えていない…


 こんなふうに、手が震えた記憶がない…


 だから、もしかしたら、初めての経験かもしれない…


 漠然と思った…


 そして、それは、私が、死を意識しているからかも?


 そう、気付いた…


 以前にも、何度か、自殺の報に、接したことがある…


 伸明の叔父で、あり、前の五井家当主、建造の実弟、義春や、伸明の実弟、秀樹…


 二人とも、自殺した…


 だから、それを思えば、五井家の人間の自殺に、驚くことはない…


 もう三人目だ…


 にも、かかわらず、私が、以前にもまして、こんなにも、動揺しているのは、死が身近になったから…


 自分の死が身近になったからに、他ならない…


 以前に、義春と秀樹の自殺の報を聞いた時も、今と同様、癌に我が身が侵されていたことは、知っていた…


 だが、


 今の方が、切実だ…


 それは、もっと生きれるかもしれないことを知ったからに他ならない…


 あのときの方が、ヤケクソというか…


 死が、見えていた…


 それが、五井記念病院に、入院して、思ったよりも、長く生きれるかもしれないことが、わかった…


 それゆえ、死を恐れるようになった…


 最初から、余命いくばくもないと、考えていれば、希望は、抱かない…


 最初から、諦めているからだ…


 だけど、もしかしたら?


 と、思うことで、希望を抱くことになった…


 それゆえ、死を恐れるようになった…


 そういうことだ…


 私は、コーヒーカップにお湯を注ぎ終えると、ソファに座り、ゆっくりと、コーヒーを飲んだ…


 おいしくなかった…


 こんなことは、初めてだった…


 味がないのではない…


 冬馬の自殺の報に動揺して、味が、わからなくなっていた…


 それほど、動揺したということだ…


 ほどなく、スマホが鳴った…


 見ると、伸明からだった…


 「…もしもし…」


 私が電話に出ると、


 「…諏訪野です…寿さん?…」


 「…そうです…」


 「…さっき、寿さんから、聞いた、冬馬のことです…」


 と、慌てた様子で、口早に告げた…


 それから、一呼吸置いて、


 「…まだ、死んでません…」


 と、大きな声で言った…


 「…死んでない?…」


 不謹慎ながら、そんなことを、言ってしまった(苦笑)…


 「…睡眠薬を大量に飲んで、自殺を図ったようですが、リンちゃんに発見されたようです…」


 「…菊池さんに?…」


 「…それで、急いで、冬馬が、理事長を務めていた五井記念病院に運び込まれたんですが、冬馬は、あの通り、敵が多い…五井記念病院の関係者の誰かが、マスコミにわざと漏らしたようです…」


 …そんなことが?…


 …内心、絶句した…


 たしかに、冬馬は、敵が多い…


 その冬馬が、自殺未遂を起こして、運ばれたのが、冬馬が、最近まで、理事長をしていた五井記念病院…


 五井家の系列の病院だから、冬馬を運ぶのは、当たり前だが、やはり、選択が、まずかったというか…


 冬馬が、五井記念病院で、嫌われ過ぎたということだろう…


 菊池リンが、冬馬を、五井記念病院に運べと指示したのが、誤りだということだった…


 いや、


 この場合、菊池リンは、責められない…


 とっさに、自殺未遂を起こした冬馬を発見したから、五井家の系列の病院に入院するよう、手配したに過ぎないからだ…


 私は、考える…


 「…まさか…冬馬が…あの冬馬が、自殺するなんて…」


 スマホの向こう側から、諏訪野伸明の戸惑う声が聞こえてきた…


 「…信じられない…」


 伸明が、嘆く…


 私は、どう言っていいか、わからなかった…


 なんて、言葉をかけていいか、わからなかった…


 だから、黙った…


 こんなときには、無用の言葉をかけては、ならない…


 伸明の反感を買う可能性がある…


 誰でも、そうだが、落ち込んだときは、言葉は厳禁…


 慎まなければ、ならない…


 うっかり、言葉をかけることで、相手が怒り出すことがある…


 要するに、相手が、落ち込むことで、本音が出る可能性もある…


 普段は、決して、思っていても、言わないことが、相手が、落ち込んで、冷静でいられなくなる…


 その結果、相手に対する気遣いが、できなくなり、ポロリと、普段、思っていても、決して、口にしないことを、漏らすことがある…


 そういうことだ(苦笑)…


 私は、それを、恐れた…


 実は、私も、そんな経験をしたことが、何度かある…


 そして、そのときは、驚いたが、そんなことを言われたことで、おおげさに、いえば、その人間の本音というか、本性を見たことで、色々考えさせられた…


 ありていに言えば、男女が別れ話になって、


 …実は、オマエのこんなところが、嫌いだった…


 なんて、例は、ごまんとある…


 それまでは、ジッと黙っていても、いざ、別れるとなると、本音が出る…


 どうせ、別れると決まったから、相手に遠慮する必要がないからだ…


 私の場合は、男女関係ではないが、いわゆる、仕事関係で、会社を辞めた同僚が、後日、偶然、街で、出会って、当時の同僚の悪口を言って、唖然とした経験がある…


 その悪口を言った人間は、会社にいたときは、決して、そんな悪口を言わなかったからだ…


 と、同時に、ひとは、本当にわからないと、実感した…


 会社にいた当時、その元の同僚は、決して、そんなことは、口にしなかったし、態度にも出さなかった…


 だから、私も気付かなかった…


 そして、そんな例は、世の中に、ごまんとあるだろう…


 あるふれているだろう…


 そう思った…


 そのときだった…


 「…冬馬…バカなヤツ…本当は、オマエは、ボクの弟なのに…」


 という伸明の声が、スマホから、漏れた…



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