寿綾乃という女 第2部 36
…なぜ、急ぐ?…
あの昭子は、そうまでして、五井本家の力を強めようとする…
五井東家が、本家を牛耳る…
その謎があるはずだ…
これには、伸明のみならず、他の五井の分家も反発するに違いない…
「…五井は、十三家…」
突然、佐藤ナナが、言った…
「…でも、団結力に乏しく、危機感がない…」
「…」
「…それをいいことに、五井を分裂させて、五井の会社のいくつかを乗っ取ろうとする動きがある…」
…たしか、以前も、そんな話を聞いた…
私は、思った…
たしか、藤原ナオキが、そんなことを言っていた…
「…だから、早急に、身内を固めて、それに対処しようとしています…」
佐藤ナナが言った…
そういうことか?
私は、思った…
昭子には、昭子の…
伸明には、伸明の、それぞれの思惑があるということか…
私は、考える…
「…今の五井は、まるで、お公家集団…とても、戦いに勝てない…生き残れない…」
「…」
「…そう…昭子さんは、考えてます…」
ハッキリと、この佐藤ナナが、昭子の名前を出した…
「…だから、とりあえず、自分の出身母体、五井東家を中心に、一族を編成し直したいと、考えてます…」
「…」
「…そうしなければ、米倉平造に勝てない…」
…米倉平造?…
たしか、その名前は、以前、藤原ナオキから、聞いた…
戦前からの財閥だが、戦後、米倉平造の代になって、飛躍的に、会社が、大きくなったらしい…
私は、それを思い出した…
「…米倉平造は、やり手です…ここ数十年で、飛躍的に、会社を成長させました…米倉平造が、率いる大日グループは、巨大です…無視できません…」
「…無視できない?…」
「…きっかけは、菊池重方さんが、自分の派閥を持ちたいと、言いだしたことです…」
「…」
「…当たり前ですが、誰もが、国会議員であれば、自分の派閥を持つことを、夢見ます…いつか、自分の派閥を持って、首相を目指す…与党、自民党の国会議員ならば、叶わぬ夢とはいえ、内心、夢見ています…」
「…」
「…でも、それは夢…見果てぬ夢に過ぎません…ですが、重方さんは、違った…」
「…どう、違うの?…」
「…重方さんは、五井家の人間…重方さんには、五井家の財力が背後にある…」
「…」
「…そして、それを目当てに、米倉平造は、重方さんに、近付いた…」
「…」
「…大場派から、独立するに当たって、資金提供をすると、申し出た…要するに、重方さんが、菊池派を立ち上げるに当たって、スポンサーを申し出たんです…」
「…スポンサー?…」
「…資金提供です…ですが、当たり前だけど、米倉平造には、狙いがある…」
「…どんな狙い?…」
「…重方さんが、会長を務める、五井の関連会社…それと、米倉平造の大日グループの企業と、提携したり、あるいは、合同で、会社を立ち上げようと、持ち掛けたんです…」
「…」
「…が、平造の狙いに、昭子さんが、真っ先に、気付いた…」
「…」
「…軒を貸して、母屋を取られるという、ことわざが、あります…」
「…」
「…米倉平造は、それを狙ったんです…」
「…どういうこと?…」
「…最初は、菊池重方さんの影響下にある、五井の関連会社と、提携して、五井の関連会社に食い込む…そして、いずれ、株をすべて、米倉のものにする…」
「…」
「…五井の関連会社を自分のものにしたら、その次には、五井本体へと、向かう…昭子さんは、それに気付いたんです…」
「…どうして、そう思うの?…」
「…米倉は、そうして、大きくなったんです…」
「…どういうこと?…」
「…最初は、提携して、相手を油断させ、いずれは、その会社を乗っ取る…自分が、一から会社を立ち上げて、事業を興すことに比べれば、遥かに効果的です…短時間で、会社を大きくできる…今、ある大企業も、そんな形で大きくなった企業が、多いです…」
「…でも、それなら、重方さんも、米倉の狙いに気付いたんじゃ…」
「…それは、気付いたと思います…」
「…じゃ、どうして?…」
「…甘く見たのだと、思います…」
「…甘く見た?…」
「…米倉と、提携して、会社を立ち上げたとしても、たいしたことがない…あるいは、儲かるから、いいだろうと、思ったのだと、思います…」
「…」
「…でも、昭子さんは、そうは、見なかった…ダムにヒビが入るのと同じく、いずれは、米倉は、五井本体を狙ってくると、見た…」
「…」
「…だから、慌てた…とりあえず、自分の出身母体である、五井東家と、五井本家を固めようとした…五井本家と、五井東家の管轄下にある、五井の企業をまとめて、米倉に対抗しようとした…」
「…」
「…でも、それは、結果的に、五井本家を、五井東家が、乗っ取る形になった…それに、伸明さんは、反発した…」
「…」
「…それが、五井の内紛の真相です…」
佐藤ナナが、説明した…
…なるほど…
…そういうことか?…
ようやく、わかった…
要するに、敵が現れたわけだ…
米倉平造という敵が現れたわけだ…
五井は、十三家…
今、米倉という敵が、間近に現れても、団結がすぐにできないに違いない…
数が大きければ、団結ができない…
あるいは、
団結ができても、団結するまでに、時間がかかる…
そういうことだ…
おそらくは、米倉平造は、それを見越して、五井に、提携を仕掛けてきたに違いない…
団結心に欠ける五井は、弱い…
だから、戦争ではないが、本拠地を攻略することは、無理でも、周辺の地域を攻略することは、容易いと、判断したに違いない…
具体的には、五井の関連企業のいくつかは、容易く手に入れられるに違いないと、思ったのだろう…
一方、五井は、危機感が薄かった…
重方が、米倉平造の口車に乗せられたのが、その典型だ…
実際に、五井の関連会社と、米倉の大日グループが、提携したか否かは、関係なく、重方が、菊池派の立ち上げを、明言したのが、問題だった…
まだ、提携は、していないかもしれないが、すでに、米倉平造のバックアップを当てにしていることを、天下に晒したに等しい…
重方の出身母体である、五井家と、米倉平造率いる大日グループが、重方が、立ち上げる菊池派の資金をバックアップする…
そういうことだ…
そして、それを知った、昭子が激怒した…
米倉平造の狙いが、わかったからだ…
重方も、米倉平造の狙いは、読めたが、利用できるうちは、利用すればいいと、考えたに違いない…
それが、重方の甘さだった…
人間的な甘さだった…
その甘さゆえに、昭子は、重方が、国会議員になることに、反対した…
重方が、利用されると思ったのだ…
それを危惧したのだ…
そして、それは、息子の冬馬もまた同じだった…
冬馬自身、己の甘さに、気付いていた…
それゆえ、孤高を貫いていた…
孤高を気取っていた…
自分が、父のように、ひとに利用されるのを、恐れていたのだ…
あの父子は、表裏一体と言うか…
似た者同士…
中身が似ている…
以前、この佐藤ナナが、言ったように、冬馬は、孤高を気取っているが、案外弱いに違いない…
その弱さを自覚しているから、他人と交わらない…
父のように他人に利用されるのを、恐れるのだ…
そして、そんな二人の性格を、昭子は、見抜いていたに違いない…
だから、嫌った…
蟻の一穴というか…
どんな巨大な組織でも、小さなことから、破綻するというか…
菊池重方、冬馬、父子に、それを見たのだろう…
重方、冬馬、父子の持つ、甘さが、五井を危険に晒すかもしれないと、直観的に思ったのかもしれない…
が、
結果的に、冬馬は、菊池リンと、結婚するかもしれないことで、五井に復帰する目がありそうだ…
これは、一体、どういうことだ?
考える…
「…じゃ、どうして、冬馬さんは、許されたの?…」
私は、佐藤ナナに聞いた…
「…許されたんじゃ、ありません…」
佐藤ナナが、即答した…
「…アレは、伸明さんを懐柔するためです…」
「…懐柔?…」
「…伸明さんは、冬馬さんを、可愛がってます…だから、五井家を追放することに、渋々納得したけれども、本音では、救ってやりたかった…だから、もし、伸明さんが、菊池リンさんと、結婚しないならば、彼女と結婚することで、冬馬さんだけ、五井に戻らせようとした…」
「…」
「…伸明さんは、五井が一つになることは、納得しているものの、やはり、五井東家が、五井本家を事実上、支配するのは、納得できない…他の一族から、不満が出るのを、恐れたんです…でも、昭子さんから、すれば、手っ取り早いというか…米倉平造に対抗する時間がないと思った…」
「…」
「…これは、時間との勝負です…」
佐藤ナナが、断言した…
私は、考え込んだ…
佐藤ナナの言うことは、わかる…
真実だろう…
しかし、一体、そんなヤクザの抗争ではないが、戦いの中で、私になにができるのだろう?
ふと、思った…
いや、
そもそも、そんな争いの中で、伸明の母、昭子は、一体、私になにを期待しているのだろう?
疑問だった…
昭子ほどの女傑が、目的もなにもなく、私を、伸明の嫁として、認めるはずがない…
当然、目的がある…
しかしながら、その目的は、おそらく、昭子しか、わからないであろう…
いや、
ひとり、いるかもしれない…
昭子の妹、和子なら、わかるかもしれない…
昭子の一卵性双生児の妹、和子ならば、その目的は、読めるかもしれない…
菊池リンの祖母、和子ならば、姉の昭子の狙いが、読めるかもしれない…
だが、
仮に、読めたとしても、私に、その目的を教えることは、ありえないだろう…
おそらく、昭子は、なんらかの目的が、あって、私と、伸明の交際を支持しているに違いないからだ…
と、同時に、菊池重方の動静が、気になった…
一体、重方は、今、なにをしているのだろう…
いや、
それをいえば、どうして、あんなにも、呆気なく、菊池派の立ち上げを断念したのだろう?
気になった…
やはり、それには、昭子が、絡んでいるのだろうか?
「…佐藤さん…聞いていい?…」
「…なんですか?…」
「…冬馬さんの、お父様の重方さんは、どうして、あんなにも、呆気なく、菊池派の立ち上げを断念したの?…」
私の質問に、佐藤ナナが、考え込んだ…
それから、しばらく、悩んだ後、
「…詳しいことは、知りません…ただ…」
「…ただ、なに?…」
「…重方さんは、大場さんの力を見誤っていたんだと思います…」
「…見誤った?…」
「…ハイ…そうです…大場さんは、大場小太郎は、自民党の総裁候補、長らく、次の首相候補に挙げられてる、政界のプリンスです…」
「…それは、知っている…」
私も、佐藤ナナの言葉に、同意した…
私も当然、面識はないが、大場小太郎のことは、知っている…
メガネをかけた、細身で、長身のエリート臭い男だ…
一目見て、生まれも育ちも、一流…
一流のセレブに違いないが、セレブ特有というか、温室育ちのお坊ちゃまの印象がある…
エリートにありがちな、弱さというか…
暴力とか、抗争に苦手なイメージがある…
現実に、抗争というと、大げさだが、長らく、自民党のプリンスと呼ばれているにも、かかわらず、自民党の党内抗争を勝ち抜くことが、できないから、首相になれない…
だから、抗争=競争に弱いという印象は、事実だろう…
しかしながら、別の見方をすれば、決して、抗争=競争に弱くはない…
なぜなら、大場小太郎は、派閥の領袖…
自民党の大場派の会長だ…
本当に、抗争=競争に弱いのならば、派閥の領袖になど、なれるはずがないからだ…
私は、考える…
私が、そんなことを、考えてると、
「…重方さんが、菊池派の立ち上げを宣言した途端、まるで、潮が引くように、重方さんから、ひとが、離れてゆきました…」
佐藤ナナが、言った…
「…あれこそ、大場小太郎の凄さです…」
「…凄さ?…」
「…大場小太郎は、今か今かと、重方さんが、反乱するのを、狙っていたんです…」
「…どういうこと?…」
「…重方さんが、独立志向というか、いずれは、自分の派閥を立ち上げたいと思ってることは、知っていたんです…なにしろ、重方さんは、五井一族…お金がある…」
「…」
「…だから、いつも、情報を張り巡らしていた…いつ、重方さんが、自分の派閥を立ち上げると、言いだすか、狙っていたんです…」
「…」
「…そして、そのときを、待った…」
「…」
「…今回、重方さんが、派閥の立ち上げを宣言したと同時に、大場氏から、昭子さんに、五井から、重方氏に、資金提供をしないように、求めたと、聞きました…」
「…」
「…元々、昭子さんは、大場小太郎と、面識があります…だから、兵糧攻めというか、重方氏に、今後、五井として、資金提供を断念させた…昭子さんは、重方氏が、これ以上、政治家として、大きくなるのは、構わないが、その結果、五井が、政治に巻き込まれ、資金提供が、拡大することに、危惧を抱いていた…だから、大場小太郎と、昭子さんの、考えは、一致した…その結果、菊池派の立ち上げは、難しくなった…」
そういえば、以前、諏訪野伸明も、大場小太郎と、面識があると、言っていた…
これは、ある意味、当たり前かもしれない…
五井家の人間が、大物政治家と、面識があっても、なんら、おかしくはない…
お金持ちと、大物政治家…
共に、雲上人だ…
一般人ではない…
さらにいえば、菊池重方は、大場派の重鎮、幹部だ…
五井家の昭子や、伸明が、面識があるのは、ある意味、当然だ…
「…さらには、米倉平造…」
「…米倉平造?…」
「…米倉に対しても、大場小太郎は、同じように、重方氏に、資金提供をするのは、止めるように、求めたということです…」
「…で、どうなったの?…」
「…昭子さんが、重方氏を、支援しないと、大場さんに、断言したと、伝え聞いた、米倉平造も、また、人を介して、重方さんへの支援はなかったことにしたいと、申し出たそうです…」
…つまり、重方氏は、五井、米倉、双方から、はしごを外されたわけだ…
…これでは、菊池派の立ち上げを断念するしかない状況に追い込まれたに違いない…
が、
不思議なことがある…
それでは、どうして、昭子は、米倉との抗争を覚悟したのだろうか?
疑問がある…
だから、
「…だったら、どうして、昭子さんは、米倉を、脅威に感じているの?…だって、重方さんを追放した時点で、一件落着になったんじゃないの…」
「…そこです…」
「…そこって?…」
「…米倉は、バカじゃありませんよ…五井を研究し尽くしています…重方さんが、会長を務める、五井の関連会社との提携話だって、まだ、諦めてませんよ…」
「…」
「…それどころか、他の五井の分家が、保有する、五井の関連会社を狙ってます…業務提携とかの形で、入り込もうとしている…だから、昭子さんは、一刻も早く、五井を一つにしたいんです…そうしないと、米倉に食われかねないと…」
そういうことか?
私は、ようやく、事態を飲み込めた…
「…それで、とりあえず、五井東家で、五井本家を乗っ取る形でも、五井の守りを固めたいと思っているんです…ですが、伸明さんが、反対して…」
「…」
「…伸明さんも事情は、よく分かっているんでしょうが、どうしても、五井東家で、五井本家を、乗っ取る形になることは、避けねばならないと考えてます…他の分家の反発が大きいからです…」
佐藤ナナが、説明する…
話を聞けば聞くほど、昭子は、昭子の…
伸明は、伸明の考えがわかった…
どちらが、正しいか、正しくないか、ではない…
お互い、間違ってはいない…
本当ならば、時間をかけてでも、五井一族が、団結すれば、よいと考えるのが、正しいいが、現実は、そううまくいかない…
団結すれば、よいとわかっていても、できない…
要は、一枚岩ではないからだ…
人間関係が錯綜しているに決まっている(笑)…
それが、わかっているからこそ、米倉平造は、五井に狙いを定めたと言える…
五井が、まとまるには、時間がかかる…
それまでに、五井の会社のいくつかを、米倉のものにしようと、手筈を整えているに違いない…
「…それで、米倉はどうするつもりなの?…」
「…それは、まだ、わかりません…」
「…ただ…」
「…ただ、なに?…」
「…米倉平造は、一筋縄では、いかない男です…」
「…」
「…なにを、仕掛けてくるか、わかりません…」
「…」
「…単純な人間は、いいんです…次に、なにを仕掛けてくるか、容易に、想像がつく…でも、複雑な人間というか…なにを、考えているか、わからない人間は、次に、どういう動きをするのか、読めない…」
「…」
「…だから、怖いんです…」
佐藤ナナが、言った…
もっともな、言い分だった…
誰でも、同じだが、なにを仕掛けてくるか、簡単にわかる相手に、苦労はしない…
最初から、やろうとすることが、わかるからだ…
見えるからだ…
だから、そのための対策を立てれば、いい…
が、
なにをやり出すか、わからない人間は、怖い…
なぜなら、対策を立てようが、ないからだ…
ヤクザの抗争ではないが、どこかの組織と対立したから、組事務所の守りを固めるように、との通達が、上から出たとする…
それゆえ、末端の事務所も、抗争に備える…
これは、どんな人間もわかる…
が、
たとえば、そうではなく、いわゆる、経済ヤクザが本業の人間が、持ち株が、急激に値崩れしたら、どうだろう?
抗争を考えて、アレコレ、対処していたら、肝心の自分のシノギが、急速にできなくなった…
これは、困る…
そもそも、そんな対策は、立ててこなかった、ということになる…
それと、同じで、予想外のことに、ひとは、対処できない…
そして、そんな相手とは、戦わないに、限る…
なにをやり出すか、わからない人間とは、戦わないに限る…
そして、おそらく、米倉平造が、そんな人間なのだろう…
正攻法もそうだが、奇策も持ちうる…
そんな人間は、怖い…
本来、相手にしては、ならない人間だ…
と、ここまで、考えて、気付いた…
私もまた、そんな人間を知っていることに、気付いた…
藤原ナオキのかつての、妻…ユリコだ…
私、寿綾乃の前に立ち、さんざ邪魔をした女…
おそらくは、互いに、相手が目障りで、仕方がなかった関係だった(笑)…
互いの存在自体が、気に入らなかった(笑)…
不俱戴天の仇とでも、いえば、いいのだろうか?
とにかく、相手にするのが、嫌だった…
それは、ユリコにとっても、同じだったろう…
私、寿綾乃という存在が、目障りで、仕方がなかったに違いない…
いや、
違いないではない…
目障りに決まっている(笑)…
が、
ユリコは、二度と、私に手を出さないと、誓った…
なぜなら、ユリコの息子、ジュン君は、クルマで、私を、轢き殺そうとした…
それゆえ、今、拘置所に、収容されている…
裁判で、ユリコは、弁護士に、
「…ジュン君を許す…」
と、一言、いってもらいたいと、私に頼んだ…
そうすれば、少しでも、ジュン君の刑が減刑されるからだ…
そして、私は、ユリコの提案を、受け入れた…
なにより、ジュン君とは、長年、いっしょに暮した…
数は少ないが、男女の関係になったこともある…
それゆえ、ユリコの頼みを受け入れた…
だから、今後、ユリコが、私の前に立ち塞がることは、二度とない…
それを思った…
しかし、米倉とは?
ユリコよりも、はるかに、強敵だ…
ユリコは、投資ファンドの代表だったが、大企業を率いるほどではない…
が、
米倉は違う…
大企業…
巨大なコングロマリット(複合企業)だ…
それが、五井に狙いを定め、仕掛けてきた…
果たして、これから、どうなる?
そう考えると、怖いと、思う反面、ワクワクしてきた…
身体中の血が騒いだというか…
不謹慎ながら、興奮した…
カラダの中をアドレナリンが、駆け巡った…
まさに、血に飢えた獣というか…
戦いが、始まることに、興奮した…
血沸き肉躍るというか…
それを考えると、いても立っても、いられなくなった…
こんなところに、いつまでも、グズグズしていられないと思った…
五井と米倉の争いが、私の病気を治らせるということはないが、やってやろうという気持ちになった…
これでは、まるで、ヤクザではないが、喧嘩師…
我ながら、喧嘩師だった(笑)…




