寿綾乃という女 第2部 15
「…まあ…五井も、変な一族よ…」
私が、思っていたことを、諏訪野マミが、言った…
「…同じ一族で、苗字が違うなんて、普通、ありえない…」
「…」
「…でも、ご先祖様は、あえて、そうした…男は、養子、女は、養女に、出した…あるいは、女は、実質、五井一族でありながら、決して、婿を迎えるのではなく、嫁に出した…それは、すべて、苗字を変えるため…」
「…」
「…ほら、忍者で、草って、あるでしょ?…」
「…草ですか? それは、どういう…」
「…どこそこの土地に、住みつくけど、本来は、伊賀の忍者…そして、それは、その一家というか、その一族の長しか、知らない…代々、その土地に根付いているんだけど、なにか、あったら、伊賀の掟に従って、行動してもらう…つまりは、スパイになって、動いてもらう…」
「…」
「…それと、同じようなことを、ご先祖様は、考えていたみたい…」
私は、その発想に、唖然とした…
たしかに、そう考えれば、そういうこともあるかもしれない…
つまり、敵地に、十年、二十年どころか、何十年も、住み続ける…
それでいて、本当は、伊賀のスパイだから、なにか、あったら、伊賀の命令で動け! というのだろう…
たしかに、話としては、わかるが、些か、非現実めいている…
物語としては、ありえるが、本当に、そんなことができるのだろうか?
疑問がある…
「…でも、それって、本当にあることなんですか?…」
私は、疑問を提起した…
「…だって、自分のおじい様や、その父親が、伊賀の忍者だからって、いざってときは、その土地で、伊賀の掟に従って、動いてくれなんて、本当に、そんなことがあったのでしょうか?…」
「…それは、わからない…」
諏訪野マミが、即答する…
「…たしかに、寿さんが、疑問を持つのは、わかる…それに、もし、そうなら、たぶん…」
「…たぶん…なんですか?…」
「…定期的に、伊賀の人間が、その一族に接触したと思う…」
「…接触?…」
「…ほら、遠い親戚のものとか、なんとか言って、定期的に、その一族の人間と会う…もし、そうでなければ、最初の人間は、伊賀の一族だから、知ってるけど、そのひとの息子や孫は、どんな人間か、わからないでしょ? だから、定期的に、本部のものを、派遣して、会わないと、ダメ…たとえ、おじい様が、息子に、実は、オレは、伊賀のスパイで、オマエもオレの跡を継いで、この地で、スパイ活動をしろって、言っても、戸惑うだけでしょ…」
…たしかに、諏訪野マミの言うことは、わかる…
だが、
だとしたら、どうだ?
それは、今、諏訪野マミは、伊賀者に例えているが、実は、それは、五井一族…
五井一族のことを言っているのだろうか?
私は、思った…
忍者の草ではないが、さまざまな土地に、自分の配下の者を、派遣して、その土地に根付かせる…
そして、その土地の情報を集めさせる…
その土地を、現代では会社、江戸時代なら、他家の商家とすれば、どうだ?
とにかく、あらゆるところに、五井一族の人間がいるということだ…
そして、本家は、その情報のネットワークを、掴んでるということだ…
私は、そう思った…
そして、それが、五井一族の強さの源泉なのだろうと、推測した…
しかし、それが、本当なら、五井一族の発祥というか、元は、商人ではないのかもしれない…
ふと、思った…
三井は、三井越後屋が、起源…
商人が、起源だ…
しかし、今、諏訪野マミが、五井一族について、語った発想は、まるで、忍者…
とても、商人のものではない…
そんな発想は、商人はしない…
それは、武家でもない…
公家でもない…
忍者…
情報収集をなりわいとする、忍者だ…
おそらく、その忍者が、五井家の起源では?
と、私は、思った…
と、同時に、
…面白い!…
と、思った…
不謹慎ながら、面白いと、思った…
そんな発想をするものは、これまで、私の身近にいなかったし、そもそも、そんな話は聞いたこともない…
不謹慎ながら、だから、面白いと思った…
それが、表情に表れたのだろう…
「…寿さん…なんだか、楽しそう…」
「…楽しそう?…」
「…目がイキイキしている…きっと、寿さんは、生来、戦いが好きなのね?…」
意外なことを、言った…
思ってもいないことを、言った…
「…そんな…私、なにも…」
「…なにも、言ってないって、言ってるんでしょ? …」
「…でも、隠しても、ダメ…」
「…どういうことですか?…」
「…寿さんの心は、目に表れてる…目は、心の窓というけど、寿さんの目がキラキラしている…」
「…」
「…輝いている…」
「…」
「…寿さんは、生来の戦士ね…生粋の戦士…だから、ベッドに横になっていても、バトルに心躍らせる…」
諏訪野マミが、断言した…
「…戦士?…」
その言葉に、文字通り、絶句した…
「…寿さんが、これまで、生きてくるのに、苦労したのは、わかる…だから、寿さんは、否定するけど、きっと、戦いが、習い性になっているんだと思う…」
「…」
「…自分では、気付かないでしょうけど、きっと、戦士が、血を見ただけで、心躍らせるのと、同じ…自分では、もう、ゴタゴタは、たくさんと、思っているかもしれないけど、血を見ると、防衛本能というか、闘争本能というか、とにかく、そんな血が目覚めるんだと思う…」
諏訪野マミが、私の心の動きを、そう分析した…
私は、その指摘に、ぐうの音も出なかった…
彼女の指摘を、否定できなかった…
彼女の指摘は、イチイチ、もっともだった…
納得のできるものだった…
矢代綾子が、寿綾乃を名乗り、生きる…
生活する…
金はなく、身分は詐称している…
そんな自分だから、つい周囲の人間の動きに敏感になる…
敏感にならざるを得ない…
だから、つい、周囲の人間を、敵か味方か、判断する…
味方ならいいが、敵と判断したのなら、対策を講じなければ、ならないからだ…
戦うか、味方に引き入れるか、考えなければ、ならない…
そして、味方に引き入れることができなければ、戦うのみ…
それしか、選択肢はない…
むろん、部外者、あるいは、第三者に徹してもらえば、この限りではない…
善悪二元論ではないが、敵か味方かで、すべて、周囲の者を判断する…
それが、寿綾乃の生き方だった…
あくまで、結果論だが、そういう生き方しか、選択肢がなかった…
だから、それが、習い性になっている…
諏訪野マミが、指摘したように、
「…自分では、もう争いは、ゴメン…うんざりする…」
と、言っているにも、かかわらず、争いを、目の当たりにすると、自分でも、血が騒ぐというか…
そんな気質になっている…
環境が、性格を作るというが、つくづく、それが当てはまる…
寿綾乃を名乗る前の自分は、そんな人間では、なかった…
矢代綾子は、そんな人間では、なかった…
つくづく、自分自身を振り返る…
寿綾乃として生きるうちに、戦いが、習い性になった…
それが、真実だろう…
そして、それが、わかっているから、今、諏訪野マミが、この病室にやって来た…
これもまた真実…
私、寿綾乃が、諏訪野伸明のために、動いてくれると思ったに違いない…
私自身は、私を戦士でも、勝負師とも、なんとも思っていない…
ただ、それは、私の評価…
自分が、自分にする評価…
自己評価に他ならない…
評価というものは、本来、他人がするもの…
他人が評価するものだ…
だから、私としては、不本意だが、諏訪野マミの評価を受け入れるしか、なかった…
寿綾乃=戦士説を受け入れるしかなかった(笑)…
我ながら、その評価に苦笑する…
苦笑するが、否定することはできない…
自分自身、的を得ていると思うからだ…
当たらずとも言えども、遠からずとでも言おうか…
つまりは、外れていない…
的を得ている…
自分自身、実に残念な評価だった(苦笑)…
「…寿さんに、ベッドは似合わない…」
そんな私の内面を見透かすように、諏訪野マミが、言った…
「…早く、ケガを直して、前線に復帰すべき…」
「…前線?…」
「…つまり、騒動の矢面に立てと、言っているの…」
「…そんな…私は?…」
「…私は、癌で、しかも、クルマに撥ねられて、二か月間、意識がなかったと言いたいのでしょ?…」
「…」
「…でも、頭は動いている…違う?…」
「…」
「…つまり、カラダが動かないだけ…」
「…」
「…そして、そのカラダも徐々に回復する…」
「…それは?…」
「…でしょ?…」
「…伸明さんが、冬馬に聞いたところ、まもなく、寿さんは、少しずつだけど、歩けるように、なると言っていた…」
「…私が、ですか?…」
驚いた…
意識は、回復したが、カラダのことまでは、わからなかった…
「…センセイ…いつになったら、歩けるように、なるのでしょう?…」
と、長谷川センセイに、聞くことは、簡単だったが、それは、できなかった…
やはり、怖かったからだ…
「…センセイ…いつになったら、歩けるように、なるのでしょう?…」
と、長谷川センセイに聞いて、答えないか、それとも、笑ってごまかされでもしたら、不安になる…
自分では、カラダが動かずとも、頭は動いているし、長谷川センセイの言葉から、徐々に、良くなるに違いないと、思っていた…
それは、確信に近いものだったが、やはり、それは、自分が、勝手に、思っているだけ…
誰かに、教えてもらったわけではないからだ…
そして、そこまで、考えたとき、今日、諏訪野マミが、この病室にやって来た、本当の目的が、わかった…
事前に、諏訪野伸明を通じて、菊池冬馬から、私の病状を聞いた…
そして、それは、遠からず、私のカラダが回復して、この病院を退院する日が、やって来ることを、知ったに違いない…
完全回復は、不可能だが、とりあえず、この病院は、退院して、自宅療養か、なにかの形になると、知ったに違いない…
私は、そう、確信した…
「…私は…」
思わず、口に出した…
「…私は、退院できるのですか?…」
私の問いかけに、
「…今は無理…」
と、諏訪野マミが、即答した…
「…でも、あと半年も経たないうちに、退院できる…」
「…あと…半年?」
その言葉を聞いて、落胆した…
半年という期間は、長いのだか、短いのだか、よくわからなかった…
それが、理由…
自分は、癌で、しかも、クルマに撥ねられて、入院した…
しかも、最近まで、意識不明で、二か月間、眠ったままだった…
そんな状況から、奇跡的に回復した…
だから、それを思えば、半年が、長いのだか、短いのだか、よくわからなかった…
長いと言えば、長いし、短いと言えば、短かった…
取り方は、ひとそれぞれ…
千差万別だろう…
だが、冷静に考えれば、半年は、やはり、短いのかもしれない…
この状況から、半年で、この病院を退院できて、社会復帰できる…
いや、
社会復帰は、無理かもしれない…
でも、とりあえず、この五井記念病院を出て、自宅で、療養する…
それは、できるということだろう…
そして、それは、菊池冬馬に、長谷川センセイが告げたことでも、あるのだろう…
私は、思った…
菊池冬馬は、この病室にやって来た、諏訪野伸明の母であり、冬馬の叔母である、昭子さんに、
「…昭子叔母様…ボクは、伸明さんに、頼まれたから、これでも、人一倍、寿さんに、気を使っています…腕のいい医者も担当につけましたし…」
と、反論した…
昭子さんが、菊池冬馬が、やんちゃで、子供っぽいと、見抜いたからだ…
その反論として、いかに、自分が、諏訪野伸明の意を汲んで、動いたのか、力説した…
つまりは、理事長の菊池冬馬は、腕のいい医者=長谷川センセイを、私の担当につけた…
そして、その腕のいい医者である、長谷川センセイが、私は、あと半年以内で、この病院を退院できると、冬馬に告げたということだ…
私は、それを頭の中で、整理した…
整理しなければ、混乱した…
やはり、私は、まだ普通の状態には、ほど遠い…
そんな簡単なことも、頭の中で、整理しなければ、ならないほど、頭が動かなかったということかもしれない…
「…どうしたの? 寿さん?…」
「…どうって?…」
「…半年は、長い? それとも、短い?…」
「…わかりません…」
私は、即答した…
「…わからない? どうして、わからないの? …」
「…私は、癌で、しかも、クルマに撥ねられて、入院しました…それでいて、最近まで、二か月間も、意識不明で、眠ったままだった…それを考えれば、今、こうして、諏訪野マミさんと、話しているのは、奇跡…奇跡以外の何物でもありません…」
「…」
「…だから、それを考えれば、やはり、半年というのは、短いのかもしれません…半年経てば、とりあえず、退院できる…半年で、退院できるのは、やはり、短いのかもしれません…」
私の言葉に、諏訪野マミは、
「…」
と、なにも、言わなかった…
その通りだからだろう…
少しの沈黙があった…
「…寿さんの気持ちはわかる…」
ゆっくりと、言った…
口に出した…
「…私が、寿さんでも、同じ気持ち…」
諏訪野マミが、実感を込めて、言った…
「…いえ、私だけじゃない…たぶん、誰でも、寿さんの立場なら、同じ…」
「…同じ?…」
「…こう言っては、寿さんには、失礼だけど、癌に悩まされ、挙句に、自動車事故に遭った…癌と事故…つまり、どっちも、それだけで、死んじゃうでしょ?…」
「…」
「…でも、寿さんは、それを乗り越えた…」
「…」
「…これは、神様のご褒美…あるいは、試練…」
「…ご褒美?…試練?…」
どういう意味だろう?
ふたつは、真逆の意味だ…
「…つまり、私が言いたいのは、寿さんが、癌になったり、交通事故に遭ったのは、試練かもしれないけど、それでも、今、こうして、私と話しているのは、神様のご褒美かもしれないって、言いたいわけ…」
諏訪野マミは、発言の真意を解説する…
「…だって、普通なら、死んじゃってるかも、しれないでしょ?…」
「…」
「…とりあえず、寿さんは、生き残った…これは、神様に生かされたとも言える…」
「…神様に生かされた?…」
「…そう、生かされた…そして、神様に生かされた人間は、なにか、生かされた使命があると、考えればいい…」
「…使命…ですか?…」
随分、大げさなことを言う…
私は、思った…
「…以前、なにかの本で読んだことがある…ひとは、ミッション=使命を持って、生まれた人間と、ミッションを持たずに生まれた人間の二種類の人間がいると…」
「…」
「…それを思えば、伸明さんは、明らかに使命を持って生まれたと思う…」
「…どうしてですか?…」
「…だって、使命を持って生まれなきゃ、五井家の当主には、なれないでしょ?…」
諏訪野マミが、笑った…
「…それは、父の建造も同じ…五井家の先代当主だった…だから、生まれながらに、ミッションを持って生まれた…」
「…」
「…でも、私は、違う…ミッションを持って生まれてないと思う…でも、寿さんは、ミッションを持って生まれたと思う…」
「…どうして、ですか?…」
「…今回の件で、死ななかったこと…」
「…死ななかったこと?…」
「…それが、おそらくミッションを持って生まれた証拠…」
「…」
「…癌で、しかも、交通事故にも遭った…でも、失礼だけど、死んでない…なにか、生きている間になすべきミッションを果たしてないと、考えれば、いいのかも…」
「…ミッション…それは一体、どんな…」
「…それは、私にもわからない…でも、寿さんが、存在することで、役に立つというか…人と人の間をうまく繋げることができるというか…」
諏訪野マミが、言いづらそうに、言う…
「…例えば、藤原ナオキさんと、伸明さん…」
「…二人がなにか?…」
「…寿さんを介して知り合った…そして、それが、二人というか、どちらかと言えば、藤原さんに、有利になる…」
「…それは、どうして?…」
「…寿さんを介して、五井家当主と、親密になれる…新興企業の社長にとって、またとないチャンス…会社をより大きくする機会が得られた…」
「…」
「…そして、それこそが、寿さんが、持って生まれたミッション…藤原さんと、伸明さんを結び付けた…」
「…」
「…そして、今、生き延びることができたのは、まだ果たしていないミッションが、寿さんには、残ってると思えばいい…」
「…それは、一体?…」
「…それは、私には、わからない…例えば、今の置かれた状況としては、菊池重方から、伸明さんを守ることかもしれない…」
「…伸明さんを守る?…」
「…直近で、考えられるのは、それ…」
「…」
「…そして、もし、重方に、ミッションがあれば、伸明さんは、重方に、負けて、五井家を追い出されるかもしれない…」
「…」
「…重方に、ミッションがあれば、五井家当主にもなれるし、派閥の長にもなれると思う…」
諏訪野マミが断言した…
「…それが、ミッション=使命だと思う…」
「…」
「…要するに、使命を持って生まれたのなら、生きている間に、なにか、ことを成すだろうし、使命がなければ、なにも、できない…そう、考えれば、納得する…」
「…」
「…だから、秀樹も、義春も、使命がなかった…使命=ミッションがなかった…だから、五井家の当主になれなかった…そう、思えば、いい…」
「…」
「…私は、寿さんは、ミッションを持って、生まれたと思う…」
「…」
「…何度も、繰り返すけど、そう、思う…」
諏訪野マミが、真顔で、告げた…
私は、そう言われても、とても、そのミッションを信じることができなかった…
ミッション=使命を信じることができなかった…
なぜなら、私は、平凡…
平凡な女だからだ…
お金持ちの家に生まれたわけでもないし、ルックスは、正直、自信があるが、それとて、絶世の美人といわれるほど、美人でもない(苦笑)…
はっきり言って、私程度の美人は、ごまんといる(苦笑)…
歳も32歳…
すでに、とうがたっている…
若さは、徐々に、失われつつある…
要するに、以前ほど、若くはない…
私は、なにより、それを自覚しているつもりだ…
現に、菊池リンや、あの看護師の佐藤ナナを見て、正直、自分が勝てるとは、思えない…
先日、佐藤ナナに、
「…長谷川センセイに、私と佐藤さんの、どっちを選べと、聞けば、間違いなく、長谷川センセイは、佐藤さんを選ぶ…」
と、言ったのは、ウソや偽りでも、なんでもない…
誰でも、若い方がいいからだ…
これは、当人が、若いうちは、わからない…
というか、あまり実感しない…
今の私のように、徐々に若さが、なくなるのを実感しているからこそ、相手に若さを求めるのだ…
言葉は、悪いが、オジサンが、若い女のコに、援助交際を申し込むようなもの…
若さを失ったオジサンが、若い女のコを欲するのは、ある意味、自然なこと…
理屈に合っている…
自分にないものを、相手に求めているに、過ぎないからだ…
これは、AVでも、同じ…
AVに出演する女は、基本、若い…
これは、男は、皆、若い女を好むということを、知ってるから…
仮に、もし、男は、基本、年齢を問わず、美人でさえ、あればよいとでも、すれば、年齢に構わず、美人の女だけ、出演させるだろう…
40代、50代の女性も、20代の女性と同じ数のAVの女性がいるはずだ…
だが、そうはならないのは、需要がないから…
基本、男は、若い女を好むと、知ってるからだ…
そして、それを、女もまた理解している…
理解しているからこそ、自分が、歳を取れば、若い女に嫉妬する…
例え、自分が、好きな男が、なにも、言わずとも、好きな男の周囲に、若い女の姿を見ると、本能的に、怯える…
警戒する…
男にその気がなくても、もしや、自分の好きな男が、その若い女に盗られるのでは?
と、本能的に、知っているからだ…
気付いているからだ…
これは、おそらくDNAレベルで、人間の遺伝子に最初から、刻まれてることなのかもしれない…
若さというのが、得難い価値であることを、本能的に、刻まれているのだろう…
私は、考える…
だから、それを失うことを、恐れる…
そういうことだろう…
そして、それは、お金も同じ…
裕福な家庭の出身者に、お金の価値を説いても、わからない…
もし、わかるとすれば、それは、そのお金持ちが、没落したとき…
お金持ちが、お金持ちで、なくなったときに、他ならない…
お金がなくなったことで、お金のありがたみを知る…
思えば、若さもまた、それと同じなのかもしれない…
私は、考える…
そして、ミッション…
ミッションの有無…
生まれつき、ミッションを持って、生まれたのならば、この世で、なにか、成すのだろう…
現に、諏訪野伸明は、ミッションを持って生まれたと思う…
そうでなければ、五井家の当主には、なれない…
そして、菊池重方…
その五井家の当主の座を狙う重方に、もしミッションがあれば、伸明から、当主の座を奪うかもしれない…
国会で、大場派の領袖の座を、大場小太郎から奪うか、あるいは、自分で、菊池派を立ち上げるに違いない…
そして、それこそがミッション…
ミッション=使命を持って、この世に生まれたに、他ならないからだ…
私は、思う…
そして、この寿綾乃に、もし、ミッション…
ミッション=使命があるのならば、それは、おそらく、伸明を、菊池重方から、守ること…
伸明を五井家当初の座から、引きずり降ろさせないようにすることに違いない…
私は、自分自身のミッションを、そう解釈した…
そして、それこそが、今回、寿綾乃が、生かされた使命だと、思った…




