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9.聖女として登録

国王陛下が言いたいことだけを言って、ものの数分で去っていった扉を唖然と見つめていると、国王陛下と入れ代わりに宰相と黒いマントを着けた背の高い男性が入って来た。


「聖女様、こちらは魔法省の最高長官クリフォード・ライル長官です。本日は聖女様の魔力を確認してもらうために来てもらいました」


クリフォード・ライル長官。なんてお呼びしたらいいのかな?

「初めまして───」

「早速ですけど聖女様、少し手を貸して頂けますか」


とても背が高く私の目線はライルさんの胸辺り、髪も目も黒いため親近感が湧くが、表情は凍りついてる。


人見知りだといいな。ここに来て初めて話すはずなのにいきなり怒ってて嫌われてばかりだし。


なんかもう今朝のメイド1号さんから始まって、小声悪口二人組に国王陛下、ここまできたら誰にも好かれ無いのではと怖い予感がする。


挨拶したかったけど遮られちゃったし、もれなくこの人もなのかな?当たりかな?当たりだね。私と目も合わせないし、私の手を汚物のように掴んでるし。あんまりだわ。


私なんか存在しないかのように、宰相とライルさんが話している。


「どうですか、ライル長官」


ライルさんは宰相には穏やかな顔で話しているので、嫌われ確定だな。


「……はい、魔力は有りますね、それもかなり多い。石板が割れたことも頷けます、大聖女様で間違いないかと」


「そうですか、それならば登録してもよろしいですね」


そう言うと、ライルさんの隣にいたライルさんと同じ黒いマントを着けた人がテーブルに一枚の紙を置いた。真っ白でA3くらいの大きさで、上の方に読めない文字が書いてあり、その下は全部余白。


「さあ大聖女様、この文字の下の部分に両手を当ててください。ぴったりと押し当ててください」


どうやら手形を取るようね。色紙じゃなくて良かった。私が色紙に手形だとまさにお相撲さんのサイン色紙になっちゃう。想像してて悲しい。


両手を揃えてその紙に押し当てる。

すると書いてある文字がフワッと光り、読めなかった文字が読めるようになった。


「この者、女神クリスティーナの叡智により召喚された聖女である。ユストル王国における聖女として、治癒、浄化、保護、回復の力を国のために役立てることを誓う」


凄いこと書いてあったね。さっきライルさんが魔力があるって言ってたってことは、私使えるのか?魔法。


「もういいですよ」

冷たく低い声をかけられ、慌てて手を紙から離す。すると手を離した瞬間、先程の文字よりもさらにパーッと手形が輝いた。見ると、私の両手の指紋や手相まではっきりとわかるくらい、綺麗に手形が取れている。凄い。


ライルさんが用紙を手にし、私の手形をじっくり確認すると、


「良いでしょう、これで終了です」


そう言うと、宰相とにこやかに部屋から出ていってしまった。


清々しいほどに私の存在は無いものとするのね。あなたたちに呼ばれたから来たのにね?

 まあいいや、もうお腹空いたし喉は乾いたし、もう部屋に帰りたい。


そうそう帰る前に、厳つい顔の騎士さんに謝らないと。


「あの騎士さん、騎士さんの制止を間違えて許可だと思い、王様のクッキーを完食してしまい申し訳ありませんでした」

と頭を下げた。


「大聖女様、頭を上げてください。私が正しく伝えていれば良かったのです、申し訳ありません。こちらの世界のルールやマナーはこれから学んで頂ければ良いのです」


厳つい顔の騎士さんは何の感情も表さない表情で、私を蔑むでもなく、呆れるでもなく見つめている。


「わかりました、ありがとうございます。私はもう自分の部屋に帰りたいのですが、許されるのでしょうか?」


騎士さんはわずかに微笑むと、

「聖女様のお部屋まで私がお送りさせて頂きます」と言ってくれた。



私にあてがわれた部屋にたどり着くと、すでに部屋は暗くなりつつあった。


もう夕方なんだ。朝寝坊したから朝も昼も食べ損ねて夜ご飯は食べれるのかなー。お腹空いたなぁ、お母さんのご飯が食べたい。


夜になるのはこの世界でも同じ。

私の今いる部屋も絶賛真っ暗…。

どこで電気付けるの!?どうやったら明るくなるの!?部屋が暗くて怖い!

こっそりドアを開けて部屋の外を覗いたけど、誰もいないし暗い!


この広いお城のような建物のなかを、歩いて人を探しに行く気にもなれないほど暗い。懐中電灯が無いと歩けないよー!

とにかく怖いから鍵をかけた。


「どうしたらいいの?私もしかして見捨てられてるの?みんな私のこと無視してたもんね… あっ、あのいかつい顔の騎士さん以外は。けど辛い…」


どうしよう、食べ物が無いのも辛いけど、水分を摂らないと脱水症で倒れちゃうよ。干からびちゃう!

来たくて来た訳じゃないのに、食べることも出来なくて、水すら飲めない。このまま見捨てられて死んじゃうなんて…酷いよ、酷すぎる……


 「はぁ、美味しいお水が飲みたい…」


呟いた瞬間右手に違和感を感じた。

何かを持っている。


暗いけど窓からの月明かりで目を凝らして見るが、確認しなくてもわかる。

 私はコップを持っている。


「…っ!…なんで?怖い!怖い!」


放り投げそうになるのをなんとか耐えきる。暗くてよくわからないけど、たぶんお水?が入ってる?

今の私に恐らく一番必要なもの。

飲めるなら飲みたい!


窓に近寄りコップの中を覗き込んだ。






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