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28.各々の罪 メイド二人と護衛騎士

○ねえ、ヤバくない?私らのせいで大聖女様が居なくなったんだって!


●えー?それ本気で言ってるわけー?私らのせいって、私ら何した?何もしてないじゃん。したのはコルセットのヒモを引っ張っただけだよー?

あの怖い人に言われてー。


○ねえ!あの人マジで怖かったよねー、クスクス 目がさぁもうイッちゃってたよねぇ?


●そうそう!マジでイッてたねアレは。クスクス

だってさー、アンタたち!もっと引っ張りなさいよっ!!って言われてもー、掴むヒモが短くなってて。アレは厳しいよねぇ。


○あんた、あの怖い人のマネ似てる!あんただったの?


●マジで?似てる?

アンタたち!もっと引っ張りなさいよっ!って、似てる?


○クスクスクス いやごめん、2回目は似てないわ!なんで調子乗ったのさ!アノ怖い人に似てたいわけ?


●いやあの怖い人に似るなら、あんたのお爺さんに似た方がいいわ。


○うっそー!うちのお爺さんリスペクト?

ここ来る日の朝はねー、ジョウロを叱りつけてたよー。早く晩ごはんを持ってこい!って。

私その横を通る時、かしこまりました!って、ジョウロに成り済ましてあげた。


●あんた神だね、あんたの半分は優しさで出来てるよ!


○そしたらさ、お爺さんそのジョウロを持って急に花に水やりだしたんだよねー。さっきまで叱りつけてたのにさ。何か病気かなー心配だわ。


●あんたのお爺さんに正しいジョウロの使い方されるとビビるねぇ。

ねえ、お爺さんの逸話ってまだある?


○なにイツワって?あんた難しい言葉知ってるね、イツワマウント?


●違うよ逸話だって!イ、ツ、ワ。

お爺さんのレジェンド級の戦いを知りたいってこと。


○マジで?本気で言ってる!?

聞いたらたぶん眠れなくなって、トイレばっかり行くことになって、そしたらのど乾いて、水飲みに行ったら帰る部屋がわからなくなって、朝に隣の家からあんたのとこの爺さんがウチで朝ごはん作って食べてるよ!って怒鳴り込んでくるよ!

アレ?なんの話しだっけ?


●あんたのお爺さんが隣の家の子になった話し?

でもさぁ自分で朝ごはん作るってお爺さん自立してるね!


○だよね!その時も大聖女様とお揃いの寝巻き着てたよ!


●ねぇ、ここだけの話し、お爺さんと大聖女様って付き合ってるの?オソロの寝巻きってヤバくない?


○ちょっと待ってそれどこ情報?ヤバくないそれバレたら?私ら超重要機密事項を知っちゃったよ?ねえ処刑されるのやだ私。


●やだ!私だってやだ!処刑よりも貴族牢がいい。貴族牢の方が朝ごはん豪華なんだって。


○私もキゾクロウがいい。

ねえ、キゾクロウってなに?あんたまたキゾクロウマウント?



一般牢に入っている罪人の証言を記録する記録書記官がノイローゼになりかけているといい、最終的に宰相の私まで助けを求めるような依頼がきた。


「おい、お前たち最近で一番ウケたことはなんだ?」


●あれ?イケオジ登場?


○あんた枯れ専だったの?


●だから、あんたのお爺さんリスペクトだって!


○それさー、匂わせ?もしかして───


「おいっ!おい!待て待て!俺が今聞いてるのは、ウケたことだ!最近で、あるだろ!?」


●……ねえ見た?イケオジの必死な様子、かわえぇ~(指ハート)

最近ウケたのは、公爵令嬢が大聖女様を…なんだっけ?


○あんた忘れたの?あんなにお金もらったのにぃ?

いい?こう言ったのよ。

大聖女を城から追い出すのよ!苛めたりなんでもいいから、出ていくように仕向けるの!


●あんた、公爵令嬢にそっくり!もしかしてあんた公爵令嬢?


○マジで?似てる?

んんっ、大聖女を城から追い出…んんっ! 無理、声高くて2回目は出ない。


●あー、大丈夫誰も求めてないから。私もマネしていいか──


「あーっ!!もういいもういいっ!記録官、今の証言で調書を作れ!」


○やだー、あんたのイケオジご乱心だよ。引くわー。


●そんなところが推せるんだって!ねー、そんなことより私の公爵令嬢のマネ見て──



宰相は記録書記官に何かしらの手当て多めに支給する陳情書を、何よりも優先して作成しようと思った。

そして、このメイド2名の処遇に頭を悩ませることになるが、近い将来上手い使い道があることをまだ知らない。



 =====


クリフ・ハース護衛騎士は、

当時のことを鮮明に覚えていた。何度同じことを聞かれても、何度でも同じように答えることが出来る。


「私は第一王子殿下に、聖女様の護衛に任命されました。まさかお二人召喚されるとは思いませんでしたが、聖女様の護衛という指示でしたので、聖女判定後は大聖女様を離れのお部屋までご案内しました」


巨大な身体を一人掛けソファーに窮屈にはめ込み、いかつい顔を更に険しくしている。


「大聖女様とご一緒させて頂いた時間は短かったのですが、私はそのお人柄を悪いとは思っておりませんでした」


身体も大きく顔も怖いため、聞き取り調査の記録官の額の汗が止まらない。


「何かを要求されたということは?金銭的な物やそういった指示とか」


クリフ護衛騎士は険しくしていた顔を少し悲しげにすると、


「ありません。陛下の謁見のため指定された応接室で待っている時、大聖女様は空腹だったのか、その、腹が、鳴って…、ずっと腹が鳴っていて…。私の方を見て、テーブルの上の菓子を食べて良いかと目で懇願していました。

私は、毒味の確認もしていなかったため、食べないよう合図したつもりが、大聖女様は逆の意味に受け取ってしまい、驚く早さで完食してしまいました。

謁見後の陛下からも、躾ておくようにと言われたのですが、大聖女様は菓子を食べてしまわれたことを私に謝罪していました。とても誠実な方だと私は思っています。

私は聖女判定後より指示がなかったため、大聖女様の護衛を外されたと思っておりました。陛下の菓子を頬張るお姿を見てしまったので、大聖女様が私を外したのかもとも思っていました」


クリフ護衛騎士が大聖女様の護衛の指示を確認してくれていれば、離れを一度でも訪れてくれていれば──

今さらそんなことを思っても過去は変えることは出来ない。


ただ、あの時大聖女様が唯一まともに話すことの出来た者がクリフ護衛騎士だっただけに、悔やまれてならない。


クリフを処罰する理由は無い。話しを聞き終え、また指示去れた持ち場に戻るよう伝えた。




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