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今日も護衛の魔術師がかわいい  作者:
二章 地下水道調査
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十八話 調査開始

 冒険者登録を終えた次の日、俺達は早速例の調査に乗り出した。

 昨日受けた痛みがまだ少し残っているが、この程度ならば問題ない。


「本日はどのような要件で?」


 昨日と同じ受付人が対応をしてくれる。

 初めての冒険者としての活動なのでまだ右も左も分からない。なので、受付人に聞くのが一番早いのだろう。


「依頼を受けたいんですけど、どうすればいいですか?」


「依頼ですね。依頼でしたら、向こうにある掲示板を見ていただいて、その中から受けたい依頼を受け付けに持って来てください。そうすれば、依頼を受けることが出来ます」


 そう言いながら、掲示板のある方向を指す。

 それは入口から見て、右側の壁にあり、そこにはたくさんの人が集まっていた。


「依頼は常設依頼とランク依頼、緊急依頼の三つがあります。常設依頼は受付を通さなくても大丈夫ですので紙は剥がさないようにしてください。ランク依頼は自分のランクの一つ下から一つ上まで受けられます。緊急依頼は緊急時に出されるもので推奨ランクは提示されますが、ランクの制限はありません。ですが、推奨ランク以外の方はあまりおすすめは出来ません」


 依頼についてざっと説明をされ、不明な点はあまりない。

 冒険者をやるのも今回の調査で終わりかもしれないので、緊急依頼を受けることはないだろう。


 説明されたはいいものの、何が一番やりやすい依頼なのかとかは全く分からないし、どれを選んだらいいかは分からない。

 だから、受付人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。


「ちなみにおすすめの依頼はありますか?」


「お勧めの依頼ですか。それでしたら、薬草採取の依頼はどうでしょうか。常設依頼なのでランクは問われず、初心者の方の大半はこの依頼から始めますね」


 薬草採取の依頼、確かにこれは初心者向けの依頼っぽい。

 それに討伐依頼のような力仕事でもないので、老若男女問わず誰でも出来るだろう。

 それに今回の目的はあくまでも調査。薬草採取の依頼は他と違って労力を使わなさそうなので一番適しているだろう。


 それにMr.Xの言っていたことが本当ならば、薬草採取の依頼で今回の事件の犯人の手掛かりが見つかるかもしれない。


「あと、薬草採取の依頼をするならば、こちらの本をお渡しします」


 そう言って、受付人は棚から一冊の本を取り出し、机の上に丁寧に置く。

 その本の表紙には『薬草図鑑・序』とでかでかと書かれており、その下には植物の絵が添えられている。

 タイトルからしてどんな植物があるのか、色々と詳細に書かれているのだろう。


「こちらの本には植物、主に薬草に関することが載っていますので、こちらを参考にしてください。それと薬草採取をやられるのでしたら、この街の東側の方に行かれますと森が広がっていますのでそちらがおすすめです」


 そう言いながら、一枚の折りたたまれた紙を取り出し、渡される。

 そこにはこの街の周辺のざっくりとした地図があり、方角まできっちりと記されている。


「それともう一つ、森の奥までにはいかないようにしてください。魔族領と繋がっており、危険な魔物が多く存在していますのでくれぐれもご注意を」


 魔族とは戦争が続いているのは転生前に事前に聞いていた通りで、今は魔王軍の残党と人間が小競り合いをしているような形だ。なので、魔族が全員敵になるわけでもないし、むしろ温厚だとか。


「それでは良き冒険者ライフを」


 受付人はそう言って、俺達を送り出してくれる。

 そして調査の第一歩へと足を踏み出した。



 ***



 同日、地下水道入り口前。

 そこには二人の男と一人の女性が立っていた。

 一人は帝国の第二皇子ペルフィド・エリュシオン。そして後ろに続く二人の護衛。

 一人は男剣士のヴォロ、一人は女性の魔法使いのディア。腕前は確かで、早々にやられることはない。


「ヴォロ、ディア。準備はいいですか?」


「「了」」


 行く準備は整っており、覚悟も出来ている。前回は悲惨な目に遭って、今回もそうなる可能性は十分にある。

 故に事前に色々と手を込んでここまで準備をしてきた。退路の確保も、緊急時の対処法も、戦闘の腕前も出来る限りの事は全てやった。

 だが、それだけ準備をしていても不測の事態は起こり得るし、前回同様、いや前回以上に悲惨な目に遭う可能性だってある。

 それを分かった上での覚悟はここに来る前から、全員出来ていた。


「予定通り、今回は全員で一緒に行動すること。危険が迫れば無理に戦わず逃げること。それと、僕の命よりも自分の命を大切に」


 護衛に対してそのような言葉を向けるなど普通はあり得ない。むしろ非常識なまである。

 護衛対象を守るからこその護衛であって、それをしなくても良いのなら、護衛として不必要。

 もちろん、ペルフィドも軍を率いる中隊長であるのだからそれなりの実力は持ちえている。しかし、仮にも一国の皇子。もしもの事があってはいけない。そのための護衛なのだ。

 若くして軍を率いる立場になったからこその決断なのだろう。戦争になって死にゆく兵士。その兵士には家族が居て、恋人がいて、友人がいる。これからあろう未来の生活があったはずなのだ。

 そう考えれば、ペルフィドがこの案に至ったのも無理はない。


「「了」」


 護衛の二人も最初は反論したものの、結局はペルフィドに押され負け、渋々納得。

 小さい頃からずっと一緒に過ごし、長い時間を共にしたからこそ、自分たちの主人の想いを汲み取ったのだろう。


 その返事を最後に地下水道への入り口を開ける。

 そこからゆっくりと梯子を下りていき、暗闇の中を魔法で灯す。

 大体数メートルくらい降りたところで地面に着き、全員が居るか互いに確認し合う。三人という少人数ではあるが、何が起きるか分からないこの地下水道ではこれくらいやった方がいいのだろう。


 魔法で照らした炎を再活用し、ディアは持ってきた松明にその炎を移す。

 これで魔力の消費無く、先に進むことが出来る。


「よし、先に進むよ」


 ペルフィドのその合図で一本道を真っすぐと歩いていく。

 前回とは異なる場所からのスタートなので、ここから集中して手掛かりを探さなければならない。

 今回の目標は前回の通れなかった場所まで散策すること。その間に手がかりが見つかれば良し、見つからなければまた明日に引き継ぐ。

 ざっくりと計算するならば全体の四分の一といった所だろうか。


「ペルフィド様。床にこんなものが」


 一番に成果を出したのは剣士のヴォロ。

 その手に持っていたのは透明な破片でそれはこの地下水道にあるものとして大きく、そして妙に綺麗だ。


「ガラスの破片……?」


 ペルフィドは、一見、今回の事件とは何の繋がりもないように見えるが、もしかすると大きなヒントになり得るかもしれない、という可能性を捨てきれずにいた。

 むしろ、そうであって欲しいとも願っている。


 地下水道に人が来ることなどほぼなく、あったとしても高価そうなガラスをここに持ってくる馬鹿は流石にいない。それに加え、落ちていたのは水路ではなく、歩く道。なので、家庭内でのゴミという可能性はほぼゼロに等しい。


 そんなことを考えていれば、後ろの方からパリンと何か割れたような音がこの地下水道で鳴り響いた。

 その音は、そう、まさにガラスの音そのものであった。

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