深夜の禁断ASMR──真帆、妄想の果てに
それは、魔が差した夜だった。
真帆はこっそり買った90分のカセットテープをセットし、テレビの前で小さなテープレコーダーの録音ボタンを押す。
カチリ──
小さく、息をのんだ。
『筑紫哲也ASMR』──制作・監督・脚本・真帆。
「こんばんは、筑紫哲也です」
画面越しのその声が、そっと録音テープに染みていく。
真帆の脳内では「白布の光オープニング映像」が、きらきらとループ再生されている。
録音終了。テープを裏返し、B面にセット。
──次は、NHKラジオ第2『堺正幸(脳内CV)・妄想気象通報 ASMR』。
「アリューシャン海峡の東70キロに……」
落ち着いた低音がテープに刻まれていく。
耳元で囁かれる地名が、真帆の妄想を無慈悲に刺激する。
完成。
夜も更けて、真帆はそっとベッドに横になり、イヤホンを耳に差し込んだ。
『こんばんは、筑紫哲也です──』
その瞬間、真帆の身体に小さな電流が走った。
(やばっ……筑紫さんの吐息、近っ……)
ゆっくりと、体温が上がっていく。
そしてB面。
『ウラジオストク、曇り、10度……ルドナヤプリスタニ……テチューヘ……父島』
脳髄が震えた。堺正幸ボイスが鼓膜をくすぐるたび、妄想回路がスパークし始める。
『チチハル──』
その一言で限界を超えた。
「ぶっ──」
鼻の奥に生暖かい感覚。次の瞬間、鮮血が枕を染める。
「ちょ、鼻血……止まらなっ……」
真帆は混乱し、身体を起こそうとする。だが脳内を駆け巡る筑紫×堺の囁きコンボに耐えられず、身体の力が抜けていく。
「筑紫さん、堺さん……私……ダメ、です……」
そのままベッドの上に崩れ落ち、意識がブラックアウト。
真帆、十四歳。
『筑紫哲也・堺正幸ASMRカセットテープ』という禁断の妄想コンテンツに挑んだ結果、尊死。
──翌朝、カセットを見つけた母が心配するのは、また別のお話。
■ チチハル(Qiqihar・チチハール)とは?
中国・黒竜江省にある都市。
漢字表記は「齊齊哈爾」または「斉斉哈爾」
読みは「チチハル」または「チチハール」
■ 発音と語感の破壊力
まずなんといっても……
チ チ ハ ル。
この “母音と子音のリズム”、
“2音+2音”の反復の美学”、
そこにある 「ちち」+「はる」 という、
真帆のような感受性少女にとっては妄想のツボ直撃な響き……!
「ちち」というワードに一瞬で反応してしまうお年頃
「はる」が含む柔らかさ、あたたかさ、芽吹き、そして春……
しかも中国語読みだと「チーチーハーアール(Qíqíhā’ěr)」であり、さらに語感がエロティック・ファンタジック・アジアンチックに暴走可能
■ 実際のチチハル
ロシア国境に近い中国北部の大都市(黒竜江省第2の都市)
長い歴史を持つ古都であり、かつては満洲国の拠点の一つでもあった
気候は厳しい寒冷地帯。極寒の冬に、北風が吹きすさぶ
名前の由来はダフール語で「辺境の村」や「天然の牧場」を意味するとされている
■ 真帆的視点での妄想要素
「夜の気象通報でいきなり現れるチチハル」に対して真帆は即座に脳内妄想変換を起こす
「寒さに震える少年と、春を信じて待つ少女」
「チチハル発・堺正幸の声に乗せたラブレター」
あるいは筑紫哲也の口から発せられた瞬間に、光が差す妄想空間爆誕
■ まとめ
チチハルは、ただの地名ではない。
真帆にとって、それは感性を撃ち抜く魔法の言葉。
一度聞いたら最後、思春期の脳が勝手に想像してしまう、
“地名系トリガーワード”の最上級ランクです。
そしてそれを理解できるあなたは、もう完全に真帆の同士。




