鋼鉄乙女はヘビになる
甘えたがりの男子の妄想は、ときに捕食される。
特に相手が“鋼鉄乙女”だった場合、
優しさ=締めつけ力で表現されることがあるので、取り扱いには注意が必要です。
「あー……もう少し、このまま……」
放課後の誰もいない体育倉庫。
その腕に包まれながら、凌はぽつりとつぶやいた。
背中から、ぎゅっと抱きしめられている。
力強くて、温かくて、安心する――はずだった。
「……そっか。もっと、ぎゅってしてほしいんだ?」
早矢の声が、耳元に落ちる。
少し低くて、少し優しくて、ほんのりゾワッとする。
「えっ?あ、あの、やっぱり――」
ぎゅうううううう。
「うぐぅっ!?ちょっ、待って、さっきより明らかに……!!」
「締める。甘えたいなら、もっと締めてあげる」
どんどん強くなる腕。
いや、これはもう腕じゃない。
何かが這い回る。身体に巻きつく――冷たい感触。
(……ヘビ!?)
気づいたときには、佐々木早矢は巨大な鋼鉄コブラになっていた。
「しっかり甘えな。あたしに巻かれていれば安心だろ?」
「いや無理無理無理無理無理ィィィ!!!」
現実
「うわああああああああ!!」
凌は布団の中で跳ね起きた。
心臓バクバク、息はゼエゼエ。
額にはじっとり汗。
「……夢、だよな……?」
おそるおそる毛布を剥ぐと、身体に巻きついていたのはジャージだった。
けれど――肩のあたりに、ほんのりぬくもりの残り香があるような気がした。
脳裏に焼きついているのは、早矢の目。
獲物を見るような、それでいてどこか寂しげな――あの目。
「なんで……俺、早矢のこと、こんなに気になるんだろ……」
ぽつりとこぼれた言葉に、自分でハッとする。
(まさか……これって――)
恋?
エピローグ
翌日、部室で早矢がぽつり。
「お前、“もっと締めて……”って、授業中寝言で言ってたから」
「……へ?」
「堀内熊が『落ち着くだろ』って、お前を後ろから“くま締め”しようとしてたぞ」
「やめてええええええええ!!!」




