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ル・グラン・Kと俺の聖剣エクスカリバー

「今日は“単位”についてだ。重さ、長さ、温度――すべてには“基準”がある。かつて“1キログラム”は――」


 堀内熊先生の穏やかでドスの利いた声が、理科室に響く。


「“国際キログラム原器(ル・グラン・K)”。

 それはフランスのセーヴルに保管された、世界で最も正確な1kgだった」


 真帆はうなずきながらメモを取る。


 一方、教室の後方で涼しい顔の男子が手を挙げた。


「俺の13.6も、原器にしてくんないかな」


「……13.6?」 「センチ。俺の聖剣エクスカリバー。朝イチで測った」


 ザワッ……


 男子たちがざわめき始める。


「13.6って……」 「でかくね?」 「俺、測ったことねぇ……」


 女子は無言。だが――ただ一人。


「では、定義しましょう」


 真帆が静かに立ち、黒板へ向かう。


『1りょう=13.6cm』

 ※滝川凌の自称・聖剣エクスカリバーに基づく

 ※選ばれし者にしか引き抜けない(?)


 教室が凍る。


 それでも真帆は止まらない。


「形状は円柱?いや、聖剣だからエフェクトを……」


 色チョークでサラサラと図を描きはじめた、その瞬間――


「やめんかァァァァアア!!」


 バァン!


 澪が剣道部の全力で黒板をバールで叩き割る。


「その一線は超えちゃいかん!!」 「で、でも理科だよ!?視覚化は大事なのっ!」 「お前の“視覚化”が一番ヤバいんだよ!!」


 その騒動を、ぽかんと見ていた早矢がぽつり。


「……でも、“引き抜けない”って、摩擦係数が高いってことよね」


 真帆(内心)

 《摩擦係数が高い……鞘に対して密着してて……抜けない……?》


 真帆(顔が真っ赤)

 《スッと抜けない……密着……圧力……物理と生物が……ッ!!》


「は、はわわわっ!なんでこんな融合が起きるの!?やばいやばいやばいってぇ!!」


 早矢「湯気出てるぞ……?」  凌 「真帆、大丈夫か?」


「だ、大丈夫なわけないでしょっ!!抜いてぇぇ!!この妄想を止めてぇぇ!!」


そこで澪がトドメをさす。

「鞘から『抜く』のも『入れる』のも、きつくて大変そうだな」


(ドカーン!)

 ※理科準備室の試薬棚が一部吹き飛びました。


 しばし沈黙。


 その中で澪が、静かに言い放つ。


「摩擦係数が高いときには……熱を持って消耗する。だから潤滑油が必要だ(意味深)」


 男子たち「「「それな!!」」」


「潤滑油って言うなぁぁああ!!」


 真帆、再び爆発。


【数日後】


 黒板の片隅には、今もこう記されている。


『1凌=13.6cm』

 ※国際凌原器(準備中)


 誰かが消しても、また誰かが書く。


 この春、2年B組に生まれた“青春の単位”は、今日もどこかで笑いを生んでいる。



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