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放課後、部室の片隅で “命の哲学”が湯気をたてる

 

「できたよ〜! 今日はバターチキンと玄米、あとサラダにはカッテージチーズとナッツでミネラル強化!」




 真帆が笑顔でタッパーを並べる。


 部室中に、スパイスとバターの香ばしい匂いが立ち込めた。




「え、また作ったの!? すげぇな真帆……」


 凌は目を丸くする。




 その横で、早矢が当然のようにしゃがみこみ、カレーにスプーンを突っ込んだ。


 一口、二口――迷いがない。どんどん食う。




「……はや、お前マジでよく食うよな。そんなにガツガツ行ったら、太るぞ?」




 その言葉に、早矢の手が止まる。


 そして、ゆっくりと顔を上げて、まっすぐ凌を見た。




「……太るって何? 蓄えることだよ? 私にとっては、大事な“燃料”だよ」




「いや、まあ……でもさ……」




 早矢は、カレーの湯気を見つめながら、ふっと笑った。




「命削って走るの、嫌なんだ。私は――生きるために走ってる。だから、ちゃんと食べる」




 凌は言葉を失った。




「よりよく生きるために走る。よりよく走るために生きる。


 そういう走り方が、私は好き。……それじゃ、ダメ?」




 バターとスパイスの香りが、言葉の隙間を満たしていた。




「……あ、いや。うん。ダメとかじゃないけど……」




「それに――」


 早矢はスプーンを口に運び、真帆をちらりと見る。




「真帆の料理、美味しいから。食わなきゃ、失礼だろ?」




「でしょー? ちゃんと味付け、鼻で確認してるからね」


 真帆がどや顔で胸を張る。


 その瞬間、バターとチーズの匂いがまたふわりと立ち上がった。




 凌は、鼻先をくすぐるその香りに少し目を細めた。




(……匂いが生きてる。味が、命になってる)




 それはただの部活飯じゃなかった。


 命の燃料であり、誰かの哲学を支える“証”だった。

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