吹奏体験~そっと、そよ風に吹かれて~ 完全版
登場人物:
そっとそよ風ASMR山内(25歳)
吹奏楽部顧問。柔らかい囁き声が特徴のASMR系女子教師。
あまりに“そっと”した指導で思春期の少年たちに羞恥に拍車をかける。
鉄の譜面台を生徒に投げつけてパワハラでクビになった堀内熊の後任。
1991年吹奏楽コンクール課題曲「そよ風のマーチ」とともに登場。
滝川凌(中3男子)
一日体験入部として金管パートへ。
やさしすぎる山内先生の指導により、魂がいろんな意味で吹き飛ぶ。
【第一リハーサル・トロンボーンブース】
「ふふっ、いらっしゃい、滝川くん。今日一日だけの体験入部だけど……たっぷり“吹いて”もらうわよ?」
山内先生の声は、まるで耳の奥にそよ風が吹き込むようだった。
「えっ……ト、トロンボーン……これ、俺が……?」
「うん。触れてみて?この長くて、真っ直ぐで、重たい子……」
(なんでそんなに愛おしそうに言うの!?)
「このスライド、曲によってはとても激しくピストン運動させるの。
往復する動きが続くと疲れるけど……しっかり“握って”いないと外れちゃうから、気をつけてね?あと、それぞれのポジションできちんと止めないと、音がキマらないのよ」
凌の手が、スライドに触れる。ぷるぷる震えてる。
「それとね……手入れのとき、スライドを抜いたら――」
(抜いたら……!?)
「ちゃんと、また奥まで“嵌めて”、ね?
嵌まってないと……ほら、音が変になっちゃうのよ?」
(ちょ、ちょちょちょっと待って!?!?この先生、なんなの!?)
「スライドはむき出しにすると乾いちゃうから、グリスを塗って、適量の水を吹きかけて濡らしておくのよ。
そうすることで、滑りが良くなるの。」
凌「……………はい(白目)」
【第二レッスン・出番待機時間】
「演奏中、しばらく出番がないときは……このマウスピースに、そっと息を吹き込んであたためてあげて」
先生が手本を見せる。唇が、金属に触れる。小さく“フッ”と息を通す。
「……でも、出ちゃだめよ?うっかり“音が出たら”、お仕置き」
(な、なにそのルール!?プレッシャーで余計に出そうなんだけどッ!!)
「音ってね……遠くまで届くと、気持ちいいでしょ?
ちゃんと“出して”いいときは、思いっきり吹いて……でも、今はガマン、よ?」
(凌、顔面真っ赤。息を吹き込むふりをして完全に呼吸が止まる)
【第三レッスン・腹式呼吸指導】
「ねぇ、滝川くん。さっきから肩で息してるけど……正しい呼吸は、お腹から、なの。
じゃあ……ちょっと、触れるわね?」
(えっ!?どこに!?)
山内先生の手が、そっと凌のお腹に触れた。
「ふーっ……って吸うとき、お腹が……こう、ふくらむの。
わかる?ほら……ここを、やさしく膨らませるように……
吐くときは、ふぅ〜〜って、長く……ね?」
凌「ぁ、あの……はいぃ……(息が全部持っていかれてる)」
「そう、すごく上手よ。今、ちゃんと君の中の音が、準備されてるの」
【最終レッスン・マウスピースの唇講座】
「ねぇ、滝川くん……」
「唇、マウスピースの赤い跡がついてるわよ?そんなに強く押し当てちゃ、ダメよ」
(ぼ、僕、そんなに力入れてたの……!?)
「そっかあ、はじめて、だもんね。ウフフ。
“音を出すポイント”は、唇の使い方。こするんじゃなくて、響かせるの。
だから、優しく触れて、振動させるように……ね?」
「……や、やまのうちせんせいぃ……」
(凌、もう心拍数でチューバ鳴らせそう)
【エピローグ】
「じゃあ今日はこれでおしまい。たくさん出せたかな?
お皿はここよ。ちゃんと“受け皿”に出しておいてね?管の中に、唾を残しちゃダメ」
凌は椅子から立ち上がれなかった。
魂が……羞恥が……いろいろ“出て”しまった。
山内先生は、にっこり笑って言った。
「あなたのトロンボーン、とっても素直でしたよ。
また、吹きたくなったら……
いつでも“そっと”誘いにきてね。」




