走れ変態犬2 inspired by 太宰治
滝川凌は、走った。
理由はない。命令されたからである。
「購買であんぱん買ってこい」
「理科準備室からビーカー持ってこい」
「体育館裏の蛙をどうにかして」
すべては、彼女たちの“命令”であった。
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彼女たち――
・鋼鉄乙女・早矢(怒るとスパイクが飛ぶ)
・音の魔女・真帆(怒ると耳元でトランペット+仁丹)
・修羅・澪(怒るとバールと安全靴が飛ぶ)
その3人に囲まれ、凌は今日も四脚で走り続けている。
呼吸などとうに忘れた。嗅覚だけが研ぎ澄まされている。
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そして今、使命をすべて果たし終えた凌は――
帰ってきた。鼻の頭にあんぱんの粉をつけたまま、満身創痍で。
「……すべての任務、完了しましたッ……!」
膝などとっくに擦りむけ、制服の肘は破れている。
女子3人は、なぜかしゃがみこんだ。
「よくやったじゃん、変態犬」
「珍しく頑張ったから、撫でてあげる」
「……一応、感謝はしてやる」
そして、**凌の頭を3人同時に撫で始めた――**そのときである。
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しゃがみ込んだ彼女たちのポジションが、偶然にも…
いや、運命的にも、凌の顔の高さ=ちょうど股間の位置だった。
(くん…)
(すん…)
凌の嗅覚が反応した。
(あっ…澪先輩って今日…)
「……レモンの香りっぽ――」
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ドガッッッ!!!
真帆の仁丹瓶が炸裂。
早矢のスパイクが側頭部を直撃。
澪の安全靴が回転しながら喉元をかすめる。
三位一体の制裁が、彼を地に伏せさせた。
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「……あんた、ほんっとに、変態だよね」
真帆が、ため息をつきながら、容赦なくもうひと瓶追撃。
「撫でられただけで“におい判別”って、もはや才能の無駄遣い」
早矢が冷たい視線でスパイクを回収。
「お前は次、嗅覚ごと潰す」
澪が無言でバールを構えた。
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凌は、倒れたまま笑った。
「……嗅いだだけ……だよ……」
「俺はただ……“命の香り”に……誠実なだけなんだ……」
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そして彼は、また走る。
誤解されても、殴られても、
においを信じて。
走れ、変態犬。お前の嗅覚の向かう先に、青春がある(かもしれない)――。
smell you later.
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